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oldreavesさんの西暦2236年の秘書の長文感想

ユーザー
oldreaves
ゲーム
西暦2236年の秘書
ブランド
Chloro
得点
72
参照数
63

一言コメント

『西暦2236年』の前日譚/プロローグということで作品の方向性も真価もまだ計りかねますが、とりあえず女の子のキャラ絵は魅力的でした

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プレイ時間:70分(本編50分, エクストラ20分)



マスコさんもヒメ先輩もかわいい。アマチュアレベルではあるがキャラ絵が魅力的
マスコさんの「ひーん」がすき。なんかこういうアンドロイドお姉さんキャラ既視感あると思ったら『ヨコハマ買い出し紀行』のアルファさんだった。
ストーリーとしては、『西暦2236年』の前日譚ということで、特に何か大きなものが描かれたわけではない。とりあえず、この作品群の23世紀の未来SF設定がなんとなく掴めた程度。HT語という別次元空間(ゲート)を介したテレパシー的なものでコミュニケーションするのが日常的になっており、口で声に出して喋る「音声言語」は滅多に使われない、という設定はなかなか面白い。個人的にはやはり、ややメタに読んで、それがノベルゲームのテキスト上で表現されることの意義・効果みたいなものに注目したい。テレパシーでも音声言語でも同様に「 」に括られた通常の会話文のようにテキスト上では表示されるので、登場人物らがどっちで会話しているのかがプレイヤーには判別できないことにも狙いがあるのだろうか。ボイス無しのビジュアルノベルにおける発話は音声を介在しない点でそもそもゲート会話と似ているとも思う。「ログと会話」も、虚構のキャラとのやり取りに耽溺する我々ノベルゲームプレイヤーとの相似性を示唆したものとして受け止めてしまった。マスコさんがいうように、ヒトが同じ映画を何度も観るのとそう大した違いはない気がするし……

男子主人公のヨツバくんが、AIのマスコさんと数年間いっしょに過ごすことで秘書・パートナーとしての親近感を得ていたが、ある年始のハッキング事件をきっかけとして、自分と彼女、人間とAIの根本的な差異を痛感する・・・のが大まかなプロットではあるが、最終段で、他者や外部の情報をデータをしてしか認識していないのはAIのマスコさんだけでなく、もしかしたら自分も……という発想も垣間見せている。人間もAI(機械)と本質的には変わらない、という方向の主張は個人的には好ましいが、今作としてはこの発言があることで、結局この物語はどういう形で着地させたかったのかがどっちつかずになってしまっていると感じる。
マスコさんのデータを手に入れようと違法AIウイルスを作ってヨシナガさん(のダミー)を送り込んできて自首したという犯人のAさんって卒業したヒメ先輩なのかと思ったけど、そうではないのか。あれがダミーじゃなくて本物のヨシナガさんだったら、かつての友達を無慈悲にデリートしたマスコさんの行為が際立って良いとは思うのだけど。
ともかく、『西暦2236年』本編のほうはどんな話が繰り広げられるのか、「エクストラ」でゲートを閉じたきりの少女が顔見せされたくらいで、まださっぱりわからないのでワクワク楽しみである。