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oku_bswaさんのRe:birth colony -Lost azurite-の長文感想

ユーザー
oku_bswa
ゲーム
Re:birth colony -Lost azurite-
ブランド
あっぷりけ
得点
80
参照数
2147

一言コメント

閉鎖型都市という設定上、シナリオ構成にある意味避けられない制約を抱えているが、その中でもなんとか幅を持たせようという頑張りは十分に伝わってくる。演出・システム面でも高い水準でまとまっており、全体としては間違いなく良作と断言できるが、それでももう一歩突き抜けて欲しかったように思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

瑠璃→セルリア→ノイエ→BAD→アズライトの順で攻略。
恐らくアズライトは最後固定。
前作にあたる「フェイクアズール・アーコロジー」はプレイしていないが特に問題なく楽しめた。ただプレイしていればニヤリと出来る部分は多々あったように思われる。ノイエは前作メインヒロインの妹みたいだし前作のキャラもちょこっと出てきた。(音声・テキストのみだが)
アンリミテッドが流れるシーンは前作プレイ者からすると感慨深いだろうなぁ…。あそこはプレイしていない自分でも鳥肌が立ちました。
とりあえず急いでフェイクアズールもやろうと思います。

シナリオ面での不満点は
・個別√に比べて共通√の割合が多くなっており、全体として似たり寄ったりの展開になってしまっていること。
・一部で最後ご都合主義に走ってしまったこと。

前者は非常に難しいところだと自分は思う。各個別√でそれぞれの問題を展開するには、「アクアリウス」の世界は狭いし完成されすぎている。かといってヒロインが違っても大筋が同じではユーザーが似たり寄ったりという感想を抱くのは避けられない。

それでも√による差異を生み出すとするならば二重社会が抱える歪みについて深く突き詰めた√があっても良かったと思う。もっとゲンチアナ側からの視点で追う展開も欲しかった。(意訳:藍理攻略したい!)
それか瑠璃、セルリア、ノイエ√での情報を小出しにして謎を残したまま終わらせ、最後のアズライト√で一気に謎を明らかにするとか。だが大筋はわかっていてもアズライト√はグランド√としてふさわしい出来だった。
このあたりのバランスのとり方はアーコロジーを舞台にした作品を作る上で今後も課題になるのでは。

後者は決してハッピーエンドが嫌いなわけではないが瑠璃√はあのまま蒼司と別れたほうが良かったと思う。そのせいで蒼司と瑠璃の決意の重さが軽くなったように感じられた。女王となった瑠璃と蒼司が抱き合って瑠璃が消えるとこで終わっていれば文句なしに最高だった。エンディングの入り方も特に良かっただけにそこがもったいない。
アズライト√の終わりもご都合主義に取れるが、こちらは綺麗に終わってるし十分許容できた。この辺りをどう感じるかは個人の裁量次第ですね。

作品全体としてはどの√もビターエンドで終わらせることができるがそれをなんとかハッピーエンドに転換したという印象を受けた。あくまで個人の推測だがこれはライターがハッピーエンドを好きなせいなのもあるかもしれない。
自分としてはそれぞれの個別にバッド寄りのノーマルエンドとハッピーエンドを設けても面白いと思う。
話の展開の幅に制約を受ける中、ヒロインと辿る結末に幅を生み出すのは決して損にはならないはず。

前作では演出面での弱さを指摘する声を多く聞いたが、それは今作で十分に改善されていると思う。
目パチの演出有り、立ち絵・表情差分も豊富で、また話の中でキャラ同士の立ち絵の距離感を上手く使っている。構造体・アート使用時の演出も動きがあって良い。
また、ARCHIVEではTIPSで独自の用語解説を読み返せるだけでなく、「アズライトの3分間ハッキング」で楽しく見返す事もできる。本編も可愛いがここでのアズライトは特に可愛い。
シナリオジャンプも備わっておりEXTRAではサイドストーリーも閲覧できる。この辺りは本当にユーザーに対しての親切設計となっている。

また、それほど期待していなかったこともあるが今作はエロシーンも十分満足がいくものだった。
特にアズライトに触手があったのはかなり嬉しい誤算。KAI作品とかもそうだけど萌え絵で触手はやっぱり良い。それが不意打ちだとなおさら。
あとキャラの表情がどれもエロいですね。ノイエとかもうたまらないです。
シナリオメインの作品でもエロシーンに力が入ってる作品は好感が持てます。

点数は75点にするかかなり迷いましたが、独自の世界観を構築していることと、上で挙げたシナリオ面での不満点以外は特筆して文句を付ける所もなかったので総合的に見て80点にしました。今後の期待も込めて。
次回作はステルングローブを舞台にした話になるのでしょうか。このライターが設計する世界観は素晴らしいので、それを十二分に活かすシナリオ構成でまとめることが出来るか注目してます。
そういえば「Re:birth colony -蒼影のアズライト」という同ライターが手がける完全オリジナルの小説も出るみたいですね。こちらもどんな話になるのか楽しみです。
今後注目するべきライターが増えたという意味でも今作は自分にとって価値のある良い作品でした。