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okjさんのランス01 光をもとめての長文感想

ユーザー
okj
ゲーム
ランス01 光をもとめて
ブランド
ALICESOFT
得点
75
参照数
802

一言コメント

25年の時を経て、熟成された味わいと澱の苦さ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1秒、1分、1時間、1日、1ヶ月、1年……。積み重なった時は25年。味わいは熟成されて深みを増し、初代ランスと比較するとまろやかに変質している。ものすごく格好つけた言い方をすれば、エロゲーの歴史を感じる味わいかもしれない。昔懐かしいあの味わいは澱となって底に沈んでいる。

時間の経過に伴い技術も飛躍的に進化した。色数の増加などCG技術の進化はすばらしい。シィルが着ているパリス学園の制服はシンプルな白い服から現代風のかわいい制服に変わっている。400ライン16色の初代ランスから考えると、間違いなく劇的に変化している。音楽も同様に進化して初代ランスと同じ曲が、なめらかで美しく感じられる。

ところで必ずしもまろやかな感じが良くて尖っているのは駄目だ、とは思わない。オシャレじゃないかもしれないが、シィルといえばピンク色のモコモコな髪がすぐ思い浮かぶし、心地よく聞こえないかもしれないが、シンプルな音で作られた曲は不思議と記憶に残っている。まろやかさも尖った味も味わいの一つでしかないのだ。

初代ランスはどちらかというとADVパートがメインでRPG要素はおまけみたいな感じであった。ランス01の公式ジャンルはADV+RPGとなっているが、ゲーム開始してすぐにカードのダンジョンとバトルのチュートリアルがあること、クリア後の武器・防具・アイテム、モンスターのコレクションがあることなどから考えると、RPGパートがADVパートと互角、いやRPGメインといっても問題ない気もする。

そこに待ったをかけたのがコマンド選択方式だ。ADVパートにコマンド選択方式を採用したため、ADVパートでの探索によってプレイ時間は増えたはずだ。昔懐かしさを出すためにコマンド選択方式は必須だったのだろう。古い時代のエロゲーをプレイしたことのないユーザーには新鮮さを、知っているユーザーには懐かしいという印象を与えたが、イベントを進行させるためにコマンドを総当たりすることが面倒に感じたユーザーも多かったかもしれない。だが初代ランスはもっとツンツンして尖った味わいだった。RPGパートのダンジョン内でも、ADVパートの街の中でも、移動する時はコマンド選択方式(東・西・南・北)だったからである。

RPGのシステムはリメイクにあたって一新された。ランス君の攻撃と同時に敵の攻撃も受けるちょっと変わった戦闘方法で、同時ターン制バトルと言ったら分かりやすいだろうか。敵の攻撃に対してノーダメージで敵を倒すには、ターン毎に防具を使用する必要があるのだ。(もちろん敵が攻撃をしないときは防具を使用しなくてもダメージはない)通常RPGでは防具より武器を重視する場合が多いが、ランス01ではダンジョン内で敵と連戦するためには防具がより重要な意味をもつ。装備品と道具をあわせた所持枠に制限があり、一つの回復アイテム(道具)でも貴重な所持枠を一つ消費してしまうので、消費されることのない防具や武器の価値は高い。(ちなみに同じ種類の回復アイテムを2つ所持しても所持枠を2つ消費してしまうのだ!)新しいシステムならではの魅力はいくつかあったのだが戦闘自体がシンプルな構造だったので、2週目をする気にはなれなかった。ちょっと手を加えて、武器・防具にもっと特徴をつけたりすれば、2週目以降も楽しめる気がして残念だった。今回限りのシステムかもしれないが、もっと進化した姿を見てみたい気にさせられた。

さて25年前の【構想2日、製作3カ月】の初代ランスと比較すると、CGや音楽は美しくすばらしくなり、テキストは洗練された。エッチシーンはよりエロく、ボリュームも増え、RPGのシステムもリメイクのためにわざわざ新しく開発された。ではADVのシステムはどうだったのか?

昔よりちょっとだけ熟成されたランス01のコマンド選択方式だが、他の要素(CG、音楽、テキスト、RPGのシステムなど)と比較すると、一つだけ大きく取り残されているように感じられ一番残念だった。これが冒頭での述べたエロゲーの歴史を感じた味わいである。ゲーム要素はADVからRPGやSLGに移行し、ADVはシナリオやキャラ特化となった。その影響で演出面が充実し、物語やキャラ萌えをより楽しめるようになったことは素直にうれしい。ただゲーム要素が強いADVが少なくなったこと、ゲーム要素としてADVのシステムがあまり進化していないことに寂しさを感じるのだ。

ワインは熟成すると澱ができ、瓶の底に沈む。25年時を経て、CGや音楽などは現代風に美味しく熟成したといえるだろう。コマンド選択方式は苦い澱でしかないのだろうか?

コマンド総当たりが面倒くさい、手間がかかる。そんな欠点を緩和した現代風のコマンド選択方式はどうだろうか?選択範囲を複数(点から面)へ、コマンド数を半自動化へ、選択回数を自由から制限へ、成長するコマンドへ……。その結果、従来のコマンド選択方式は澱となるかもしれないが、受け継ぐものはあるはずだ。

1989年から続く、ランスの物語。初代ランスから全てプレイしてきた私としては物語の終わりを見たい気持ちが強いのだが、すこし前から物語が終わってほしくないという気持ちが生まれてきた。未来でも自由奔放なランス君がいてほしい。25年後にランスは続いているだろうか?

もし続いているのなら、さらに美味しくなった味わいとともに、たくさんの澱が沈んでいるはずだ。濃い色の澱は、光をも、とめて……。