魔王と踊れ!と言われても踊れない理由がある。そう魔王様と踊るにはもっと素敵な曲が欲しいのです。
(本感想には魔王と踊れ!2のネタバレがあるので御注意願います)
ファンタジーの世界にはハンデがある。ゲームの世界は全て非現実世界といえるかもしれないが、特に異世界モノのファンタジーは現実の一般常識が通用しない場合が多い。世界を構成するモノ(例えば魔法や魔物、天使や悪魔など)や種族(例えば人間、亜人、獣人)、文化・生活様式など様々なものが現実世界と異なる。今でこそゲームをする人にとってエルフと聞けばその姿を頭の中に思い描けますが、20年いや30年前ならかなりの人がエルフを知らなかったはずです。その為ゲームの序盤には世界観の説明が重要になりますが、残念ながら本作品は世界観の説明がかなり不足している。
ユーザーに上手く世界の魅力を伝えることが出来ればファンタジーのハンデはアドバンテージに変わります。他メーカーさんはマニュアルに補足として世界観の説明をしたり、ゲーム本編に用語説明をいれたりして工夫をしている。また前作未プレイ者への為にあるメーカーさんは代表作RPG続編2の発売で購入特典として前作のビジュアルノベル版ストーリーが同梱されていました。本作品では予約キャンペーン特典として魔王と踊れ!1&2がありますが、如何せん1&2をプレイするのには時間がかかり過ぎます。(魔王と踊れ1&2がプレイ出来ることは良い特典だと思います)少なくとも前作から3年以上経過しており、また新規ユーザーに対する配慮としても簡易的な説明は欲しかったですね。と思ったら公式のスペシャルに1&2のネタバレ全開なダイジェストがあることを後で知りました!でもこのダイジェストを製品に入れておけばもっとユーザーに優しかったと思うのですが……。
ストーリー的に!!!だったのが次元転移航行艦オネイロスの登場。あれっ?1&2ってSFファンタジーだっけ?本格ファンタジーRPGって何でもアリのことなのかな(笑)自ら1&2で積み上げてきた世界観を壊してしまったのは残念の一言。物語的には巻き込まれ型で後から次々に事実(サブタイトルにあるアルカナ、影の一族について)が語られますがこれが面白くない。もっと事前に大まかな情報を与えてユーザーに考えさせる(推理させる)展開が欲しかった。大アルカナの数22種類もの影の一族いるのに登場したのはわずか数種類(力、隠者、運命の輪、審判、世界……)なのは寂しいですね。イメージ的にはただひたすら聞かされる授業。学生(ユーザー)としては発表したり実験したりするなどの体験(自ら推理や想像して楽しむこと)もしたいはずなのに、先生(メーカー)は黒板の前で話をするだけなのです、もったいない。
終盤の展開は2と似ている気がします。強大な敵と戦い世界を救うために大陸に暮らすあらゆる種族が団結して立ち向かうというもの。強大な敵が世界か神かというのが前作と本作の違いであり、前作より掘り下げ方が少ない(説明不足)ため、前作未プレイ者は他種族が主人公たちに協力を申し出るのが唐突に感じられます。前作プレイ済みのユーザーはまたこの展開かよ!と思うかもしれない。どちらにせよ敵キャラの魅力(物語的にも戦闘的にも)が足らないので盛り上がりに欠けてしまうのは非常に残念な点です。本作で魔王様の物語は完結らしいのですが、完結しなかった方が良かっ……いやなんでもありません。
さてメインのRPGについて、前作からの変更はいろいろありますがRPGの出来としては微妙な部類です。ゲームバランスは悪い、操作性はイマイチ、戦略性も乏しく、特定のスキルが強い、そして周回プレイは向かない。もちろん良くなった点もあります。武器・防具の装備が選択できるようになり、敵に属性が追加されたり、フォーカスペンダントを強化することでお気に入りキャラの能力アップが出来るようになったりすることなど。個人的に好きだった1&2の要素が無くなってしまったのは残念。2のリンクしている敵を倒すと消えてしまう青い宝箱は好きだったんだけどなあ。シリーズが進んでもゲームシステムはあまり洗練されなかった感じがします。シリーズ毎になくなったり追加されたりする要素があることを考えると、1→2→本作と変わる度にきっとゲームシステム自体が転職していたのかもしれません!で、戦闘で使えないキャラは転職しても使えないのがこのシリーズなので、ゲームシステムが転職してもやっぱり……(涙)
エロゲーのRPGに期待されているのはそこそこ遊べること。しかし肝心のRPGパートはあまり進化しなかったように見えます。キャラクターの能力値の数は1から本作まで変更なし、状態異常の項目が1→2で若干変化しましたが、2→本作は変更なし。パーティの人数は3人→4人→4人+α(主人公の支援魔法)ダンジョン内のしかけは2が一番良かった気がするし、基本的に戦闘方法は7年間でほとんど変わらなかったみたいです。探索画面で敵の視界範囲内に入るとバトル突入するのですが、その視界も2×3マスがほとんどで面白くない。どうせなら正面一直線上すべて視界を見渡せる敵や視界範囲が広い敵、一定の法則でワープする敵などいろんな種類の敵が欲しかったですね。
すべての回想シーンを見ようとすると4周もしないといけないのですが、周回しても強い敵が出現するわけでもなく、またレアアイテムなどの強い装備が入手できるわけでもなくひたすら作業を強いられます。RPGパートが面白ければ不要かもしれませんが、AVGのシーンスキップ機能みたいにダンジョンスキップ機能がないのはユーザーに優しくないなあ。
エロに関して、本作のエロシーンは26シーンありシリーズ最多。ほとんど和姦ですが1シーンだけ触手による凌辱シーン(サブヒロインのオリガ)があります。1シーンの尺が短いため抜きには不向きかも。ヒロインは出会った時から好感度MAXなので(心の)絆を結ぶというよりは身体を紡ぐといった感じです。
総評としてユーザーを楽しませる工夫が少なくユーザーにあまり優しくないRPG、物語的にはSFファンタジーが許容できればOKでしょうか?シリーズ完結編ですが魔王様はおまけです。AVGばかりで飽きたときの息抜きプレイに少しだけなら……というお勧めになります。
優しい調べにうっとりし、楽しい気分なった時、はじめて魔王様と踊れるのです。