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okjさんのこの大空に、翼をひろげての長文感想

ユーザー
okj
ゲーム
この大空に、翼をひろげて
ブランド
PULLTOP
得点
85
参照数
1016

一言コメント

好きだからこそ気になることってありませんか?プレイ後の感想としては、ベタすぎて恥ずかしさを感じるけど青臭い青春っていいよねーとか、鳥がパタパタと飛び立つ清々しい大空にグライダーに乗って一緒に空を飛んでみたいなー、なんて思ったり。物語の雰囲気が良いだけに、所々で物足りないなー、なんて感じたりもしました。魅力的なキャラクターたち、綺麗なCGや演出、清々しさを感じる音楽……欲しかったのは、感覚的な文章表現でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

我々人間は、五感を通して物事を知覚します。五感とは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚です。
簡単にいえば、目で見る、耳で聴く、手や足で触る・皮膚で感じる、舌で味わう、鼻で匂うということになります。

エロゲー(ゲーム)的には、視覚はCGや文章で、聴覚は音楽・効果音やCVで表現できますが触覚、味覚、嗅覚は感覚表現を用いた文章でしか表現できないのが現状です。

大部分のエロゲーがそうかもしれませんが、本作品で気になったのは、地の分は状況説明がほとんどであり感覚表現に乏しい。共通部分が長いと感じる人もいますが、感覚表現が少なく淡々とシナリオが進行するのも原因のひとつかもしれません。

感覚表現の例を挙げると、太陽軒にラーメンを食べに行った時、素朴なしょうゆラーメンが豚骨と魚介のダブルスープになってた、という文があります。

感覚表現を用いた場合、懐かしさを感じる<醤油の匂い>と<ほのかに感じる昆布だしの味わい>が特徴の素朴なラーメンが、匂いと見た目はえらく<濃厚でこってり>として、腹にこたえそうだが、<さわやかな後味>のスープになっていて驚いた、というような感じになるのでしょうか?
※<>内が感覚表現

またFRPの作業手順の説明は、うまくまとめていますが、やはりそこには感覚表現がほとんど見られない。実際にFRPコーティングをした人なら、樹脂(スチレンモノマー)独特の臭いの臭さ、ガラス繊維がチクチクする感じ(痒くなるんだよね!)、マスクやゴーグルをしないと作業出来ないこと、これらを表現することによって、よりリアルに感じられるんじゃないかなと思います。

少なくともエアコンをかけたガレージ内(おそらく窓や扉は締め切った状態でしょう)で作業がしたら、有機溶剤の臭いとガラス繊維を削った粉塵で大変なことになってしまいます。工作場とは窓やシャッター全開で、大型の送風機や換気扇または排気装置が動く環境で、「うるせー、あちぃー」と言いながら作業する所だって、あんちゃんが言っていました(笑)

もちろん感覚表現を多用すればいいとも思いません。ゲームをテンポよく進行させるためには、感覚表現が邪魔になることもあります。ただ要所で用いることによって、より物語の世界に入り込めるのではないでしょうか?

好きだからこそ気になることがあります。だって、もっと身近に感じたいから。
好きになるって、こういうこと。きっと。