『桜』を見に行きませんか?
はじめに、本作品は生きることを探求する生活部が話の中心になっているため、割とのんびりした日常がメインとなります。その為ぶっ通しでプレイするよりは、本当に日々の生活を送るように、少しずつプレイした方が飽きにくくていいかもしれません。
作品のテーマは「生きること」なのですが、印象的だったのは様々な『桜』です。
つばめ、都、美羽、すみれ、奏、瀬利華、さくら……いろんな種類の『桜』があります。
☆さくらは『櫻』?
主人公がさくらとはじめて出会ったシーン。サクラ編02章-終盤のイベントCGに注目です。『桜』の漢字は元々『櫻』という旧字体で書かれています。漢字の成り立ちの一説で左側は文字通り「木」を表し、右側は「貝」がふたつに「女」になります。「貝」はさくらで作った首飾りのことを意味します。首飾りを桜の髪飾り(リボン)としてみれば……一本桜の前に佇むリボンをつけたさくらが『櫻』に見えないでしょうか?
当然さくらの姉すみれも『櫻』なのですが、監視から逃れるために赤く髪を染めた姿は赤い『桜』のように見えます。もちろん赤い『桜』などは存在せず、『桃』の赤い花が『桜』の花に見間違えられることがあります。つまり髪を染めたすみれは『桃』のように見えるので、さくらのサクランボ?と違いすみれの胸にはたわわに実った桃がふたつ……なんてね(笑)
一番のお気に入りの『桜』は、さくら編06章-別れの春のイベントCGです。
学園内の『桜』、川沿いの『桜』、神社の『桜』……どの『桜』も凄く綺麗なのだけど、一本桜の前に背中合わせに佇むふたり、終わりを見つめるさくらと始まりを見つめるすみれ、物悲しさを感じる、この『櫻』が一番好きです。
彼女たちが幸せを感じたとき、彼女たち自身の『桜』が咲く。すぐ咲く『桜』もあれば、咲くのに数十年かかる『桜』もあります。後者はさくらでしょう。詩乃との出会いがなければ、さくらの『櫻』は咲かなかったはずです。
トコシエは老化では死なないけど自殺や他殺や事故では死んでしまう。つまりトコシエは不老有死なので、普通の人間と比較するとかなり死を感じにくいということでしょうか?現実の私たちが外を歩いているとき、死を意識する人はほとんどいません。でも実際に死ぬ確率はゼロではないのです。
エリクスは完全な不老不死……ではないと思います。脳みそだけ無事なら再生可能という言葉が本当なら脳をつぶせば再生不可能……つまりは死が訪れるはず!生きることと死ぬことは表裏一体。生と死の狭間がエリクスではなく、エリクスは生きているのです。一般的に生物でない機械から生命が生まれないように、エリクスが生きている存在だから、すみれが妊娠して子供が生まれたと思いたいのです。
人間も、トコシエも、エリクスも……生きているから桜が咲き、散ります。でも忘れてはいけないこと、それは桜が咲くまでに多くの日々が必要な事です。
桜の花が散った後、葉がのびてきます。暑くなった夏、新しく伸びた枝に葉がたくさんつきます。気温が下がり涼しくなった秋には、葉の色が黄色や赤に変わります。そして葉はすべて枯れて散ってしまい、冬になると枝の先には小さな芽がふくらむのです。
笑ったり、泣いたり、喜んだり、怒ったり……、一日一日を一生懸命生きようとした結果、『桜』が咲くのでしょう。『断言しよう!今日は地球が生まれてから、一番にぎやかな日なる!』は名セリフだと思います。
個人的に残念だったのは、主人公翼以外の視点で生きることや死ぬことに苦悩する描写がもっと見たかったことでしょうか?そうそう一番印象に残った曲は……美春音頭です!!サウンドモードで出だしから聞くと破壊力満点ですね~(笑)