天空で刻まれた星でできたパターン、アステリズム。本作品は姉さんに一途に恋するADVですが、一途なユーザーほどお勧めしにくい作品となっているかもしれません。
文章の後半に行くほど、致命的なネタバレが含まれています。御注意願います。
この作品の最大の失敗は、純愛ゲーなら一途な恋をつらぬかせてみたいというメーカーのコンセプトとは真逆な作品になってしまったことです。第1章で美々の想いに応えるor応えないという選択肢で、美々の想いに応えるを選び処女を奪っておきながら、美々を裏切って姉さんのもとに行く主人公でもバッドエンドにならずに物語は進んでいきます。
『はあ?どこが純愛??どこが一途なの???……ふざけるな!!』って思ったのは私だけではないはず。美々の想いに応えないという選択肢でこのイベントは回避可能ですが、明らかにシナリオがおかしいと思うのです。普通に美々の想いに応える→美々エンド、想いに応えない→姉ルートで良かったのではないでしょうか。
公式の開発日誌でヒロイン1名でも3形態あれば戦えると言いながらも、主人公とサブヒロインのHシーンを数回入れるあたり、言行不一致ですね。真に純愛ゲー(ヒロイン1名)を貫いて作品を作るのは、売上的に凄く勇気がいることだから仕方のないことかもしれませんが残念でした。
ヒロイン1名3形態アイデアは非常に良かったと思います。現代の姉さん、1999年の中名月、1996年の小名月、それぞれの魅力は十分に表現出来ていたと思います。ただこのアイデアをシリアスな物語の純愛ゲーと組み合わせた為、物語としてはこじつけた感じが強く、特に1996年で小名月と出会ってわずか数日でエッチしてしまうのは、展開が早すぎます。しかもタイムパラドックスを考えてお尻にGO!って。
物語とエロを両立させようとした結果、中途半端な結果になってしまった。でもキスまでしかしないことにすると、せっかくの3形態のアイデア(エロ)が生かされない。結論としては、素材も調理方法も良かったけど味付けを間違えたような気がするのです。シリアスよりはコメディにした方が良かったのかな?でも味付けひとつで全然ちがう作品になってしまうけどね!
他に気になる点としては、主人公が残り少ない命を自覚し、博士に恩を返す為、博士の奥さんを助ける(キリッ)と言って1996年にタイムトラベルおきながら、ブルマー姿の若い姉さんを目撃して萌えている姿に違和感を覚えました。残り数日の命のことを考えると能天気すぎるような気がします。やっぱりシリアスとコメディのバランスがイマイチだったのかな?
物語の展開がある程度読めてしまうので、終盤の盛り上がりに欠けたようにも感じられました。博士の予定通りに物語が進行しているので、いい意味では安心感がありますが少しの意外性は欲しかったですね。個人的には土壇場で博士の予定通りに事が進まず大ピンチに!→キーパーソンの活躍でエピローグへという感じが良かったな~。私だったらキーパーソンは九厘(名月)にして名月をタイムトラベル→主人公と同じく名月を統合させてエピローグでしょうか?
一途なユーザーほど現代の白雲に感情移入してしまうので、統合という結果は受け入れにくいのかもしれません。しかしこの作品はアステリズム……星群です。姉さんの心の中では織姫が自分で、彦星がお兄ちゃん、ずっと星空に想いを馳せてきた・・・。でも時が経ち白雲の成長とともに存在感が大きくなり、白雲が白鳥座のデネブとなって恋の大三角形【アステリズム】が出来上がったわけです。
姉さんを救うために統合しなければいけなかった、主人公つくも。白雲も九十九もお兄ちゃんも違うつくもです。統合して全てが混じりあったのではなく、つくもの中に白雲、九十九、お兄ちゃんがいると考えたいのです。ひとつひとつのつくも(星)が集まってつくもというアステリズムを形成しているのです。
だからこそ、なつきも統合させて欲しかった。姉さんと中名月と小名月が統合して、なつきというアステリズムを形成する。どちらか一方が頑張るのではなく、ふたりとも頑張った対等な関係がいい。エピローグの星空には、つくものすぐ横になつきのアステリズムが見られ……数年後、ふたりの結婚と同時にふたつのアステリズムが一つの星座に昇格する、2人は永遠にひとつとなったのです。
なんて妄想はいかかでしょうか?
そこっ、恥ずかしいって言わないように。十分自覚してますので(泣)