ErogameScape -エロゲー批評空間-

ogrefantomeさんのシンフォニック=レインの長文感想

ユーザー
ogrefantome
ゲーム
シンフォニック=レイン
ブランド
工画堂スタジオ
得点
90
参照数
235

一言コメント

童話の皮を被ったドロドロ三角関係物語 大体高水準だけれど最大瞬間風速が乏しい点が難点か プレイ前にイタリア語で意味を調べてはいけない 

長文感想

エロゲ全盛期に嫌というほど流行った鬱ゲーム系統の最終形態(多分)
革新的な手法や爆発的な感動シーンは無いもののそれを補って余りある作品です
18禁じゃないからなのか余り語られない


良い点
・絵と世界観が非常にマッチしている
・各キャラに対する心理描写が非常に細やか
・円盤少女ワルキューレのagapeで知られている岡崎律子が手掛けた歌がどれも秀逸


悪い点
・ミュージックパートが面白い人ならばいいのだが興味無い人にとってはただの苦行
・フォルテールの説明放棄
・終始シリアス
・主人公クリスの声だけは入れてほしくなかった…
・爆発的なシーンが無い
・最後だけ謎のご都合展開


番外
・可愛らしい絵からは想像できないほど「重い」テーマを持った作品
・曲自体がネタバレを含んでいるのもある、キャラクターの名前や名称はイタリア語から流用されているものがあって重大なネタバレになる可能性有。歌詞はなるべく聞き流すべきなのだけどミュージックパートのせいで…
・フォーニルート、トルタルート(別欄)



総じて昼ドラ展開が嫌いな人でなければお勧めできます
歌、シナリオ、歌に合わせたシナリオやキャラクター描写、声優、BGM、心理描写、複数視点によるキャラクター描写、世界観、物語の布石、伏線の張り方、叙述トリック、設定、テーマ性等ほぼ全て高水準です。(叙述トリックについてはある程度慣れてる方なら核心に迫る前に気が付くと思います。正直当時の時点でいくつか思い当たる手法なので。この点のみで物語全体のオチが読めたといった評価をするのはおかしいのではと思います)完成度が高い作品の癖に展開は読みづらいのも良い点

唯一の欠点は序盤の共通~リセルシアルート。キャラクターに愛着も湧いてない上にユーザーにとってよくわからない展開が続くので人によってはこの部分で減点する人が多いと思います。その都合上二周目をやると確実に評価が上がります


シナリオ
一年中雨が降る街ピオーヴァ。フォルテニストになるべく音楽学校に通うクリスは、卒業まで数ヶ月なのに卒業演奏のパートナーが決まっていなかった為パートナーを探すオーソドックスなギャルゲーム展開
共通は「特筆するところのない平坦物語」と感じると思います。自身もそう思いました。実際、最後まで平坦な物語ですが諦めずに読めば序盤にも意味があってどんどん面白くなっていくと思います


キャラ
クリス・ヴェルティン
フォルテールの才能が非常に高い為ピオーヴァ音楽学院でフォルテールを学んでいる主人公。トルタとアーシノ以外の友人を敢えて作らない孤高系ボッチ。マイペースなのか鈍感なのかイライラさせられる描写も散見する

フォーニ
自称音の妖精でクリスの部屋に居ついているマスコット。歌が大好きだけれどクリス以外の人間には見ることも聞くことも出来ないためずっとクリスとアンサンブルを楽しんでいる

アリエッタ・フィーネ
通称アル。トルタの双子の姉。音楽の才能は無いらしく実家でパン作りの修行に励む為クリスとは長距離恋愛中

トルティニタ・フィーネ
通称トルタ。アルの双子の妹。料理の才能は無いらしく歌の才能があった為クリスと共に音楽学院で歌の修行をしている

リセルシア・チェザリーニ
通称リセ。音楽学院の後輩1年。非常に寡黙で、周りから避けられることが多いコミュ障。普段は人のいない旧校舎にいることが多い。体格も小さくクリスからは小動物のようだと評される

ファルシータ・フォーセット
通称ファル。元生徒会長。おしとやかで誰にでも優しい優等生と書いてあるけれど(エロゲヒロインにはあるあるだけど)クリスに対しては超積極的

アーシノ・アルティエーレ
クリスの唯一の友人。結構行動が謎の人。一番イタリア人っぽい

コーデル・ベルドナーシェ
音楽学院のフォルテール科の教師。意外と生徒を観察しているしクリスの才能も買っていて空気も読める大人

グラーヴェ・チェザリーニ
リセの父親で典型的貴族。まあこんな親父じゃリセもいじめ一歩手前までいくだろうな…