物語の大半が鬱展開な点を除いたら優秀で非常に考え込まれて作られた重厚なノベルシナリオゲーム
同人作品で製作期間4年というサスペンスホラー純愛
シンフォニックレイン同様全年齢対象に疑問を抱く鬱作品
1~3章はオムニバス形式をとっていて4章以降にも綿密に絡み合っていきます
白昼夢の青写真と似たような形ですがオムニバス形式を活かしたシナリオ構成、活用はこちらのが数段上手です
良い点
・商業作品と比べても遜色ない美麗なグラフィック、BGM
・当時の社会風刺、貴族階級、中世の風習や悪しき慣習といった描写も細かい
・オムニバス形式を最大限活かした物語展開、後半への布石、叙述トリック
悪い点
・序盤は感情移入できず退屈に感じる
・同人作品なのか女性向けのように感じる、恋愛描写がくどい
・最終章の陽気キャラとのやり取り以外全部鬱、むしろ最終章に違和感を感じる
・想像で書いてるから仕方ない事だけど過去の時代における言動とか行動が現代風になっていておかしい点がある
総じて同人作品ながらビジュアルノベルの利点を最大限活かした作品だと思います。声は不要
鬱展開が続くのに問題無いならば一度手に取って損は無いと思います
シナリオ
ぶっちゃけネタバレ無しで語れることがほぼ無い
あえて一言でいうなら「面白かった」
唐突に呪われた館で目が覚める記憶をなくした「傍観者」たる「あなた」が館で起きた過去の陰惨な事件を館の女中と共に目撃するオムニバス形式で全8章(プレイ前は別々の鬱話を淡々と展開していく作品かと思ってました)
少し読めばすぐ判明するけど「あなた」は叙述トリックでもなんでもなく普通の他人
1章は1603年中世ヨーロッパ「薔薇の館」における貴族兄妹、ネルとネリーを中心に成長していくにつれて貴族社会のしがらみによる妹の婚約や白い髪の少女にネルが心奪われ兄が奔走していくうちに悲劇的結末を辿る物語
2章は少し先?の時代で1707年新たな館「慟哭の館」と白い髪のメイドの主人となった「獣」のご主人様と恋人「べステア」を探しているボーリーンの悲劇的物語。現地にいた獣によって全てを奪われた少年と出会う事ですべて狂っていく
3章は更に先の時代で1863年「銑鉄の館」領主の後を継いだヤコポと白い髪のメイドとの社会のしがらみを苦慮しながらの純愛。メイドのマリーアを踏まえてのすれ違いからの悲恋の物語
美麗なイラスト、この作品に合ったBGMといい雰囲気といい全体としての話も面白いのですが正直言って1~3章は人物もよくわからない絡みが面白い訳でもないのでその章の鬱展開に突入するまでは退屈です。3章に至っては三角関係シリアスコントでもしてんのか?と疑問に思ってしまった位。ただ鬱突入してからは引き込まれるシナリオですので少し我慢しましょう
4章からはあなたと女中が館を探索したりなぜ記憶が無くなっているのか、なぜ呪われているのかを模索していく話です。なぜか時代が遡り1099年「雲海の館」(5章の前座)5章「呪われた館」で6章以降は時代不明になります。3章までの登場人物も後半になるにつれて重要度も増していき複数視点を描きながら最終的にはハッピーエンドに進んでいきます
特に選択肢に苦慮するところは無いのですが時間制限付きだったり諦めないことを印象付けるための工夫等芸が細かいです。物語の核心へと向かうにつれて複雑になっていきますのでご注意を
アフターエピソードもあるのですが正直言って本編だけでほぼ完結していて余計な蛇足にしかならなかったかなあと個人的には思いますが3章(てかヤコポ)のキャラに思い入れが強い方にはお勧めです。