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ogrefantomeさんのルートダブル -Before Crime * After Days-の長文感想

ユーザー
ogrefantome
ゲーム
ルートダブル -Before Crime * After Days-
ブランド
イエティ
得点
90
参照数
53

一言コメント

不満足な部分は多いけど面白かった √Aならばever17やシュタゲを超えていた 冗長な点を除けば完成度の高い作品 あとサリュ可愛い

長文感想

infinityシリーズを踏襲したイエティの作品
2030年、事件の起こった核研究所での脱出劇クライムストーリーの√Afterと偶然に知ったテロ?陰謀論?を追う学園SFの√Beforeを合わせ結末へ続ける作品。地味に七夕が主題
I/Oと同じく地味な感じが残念


良い点
・ほぼ齟齬がなく人間賛歌やサスペンスとして完成された物語。ケチをつける部分があるのはトゥルーでの数人の扱い程度
・すべての主要人物に感情移入しやすいようなエピソードが挿入されているためクリア後は非常に感慨深い
・√Aと√Bで主要人物へ抱く感情が激変するため見てて飽きない
・Senses Sympathy System(センシズ・シンパシィ・システム)というエニアグラムをなぞらえた共感値操作システムと√Aとの相性が抜群でバッドエンドにも様々な意匠を施してある
・余計なエピソードがほぼないため没入感が高くすらすら読める
・BC(beyond communication)、要は超能力が科学的に解明されたSF世界の設定が非常に細やか
・この作品にふさわしいエンドが各々用意されているのは良かった
・なんやかんや言われてるけど(マイナス面は大抵仕方がなかったし)主要人物ほぼ全員良かったと思う


悪い点
・説明がくどい、TIPSがあるくせに文中でいちいち説明、RAMで同じ部分を2度見せられる等
・回想を差し挟みすぎてややこしい、しかも微妙に重要
・人物描写が多すぎて冗長になっている。これこそエクストラのRAMにしとけって部分も散見する
・√B以降の時計が割れる時にかかる特殊SEがとんでもなく重い+遅延要素になっている。毎回認証を求められるのも面倒
・√Aを先にプレイした場合感のいい人は√Bの展開をある程度察してしまう。逆に√Bを先にプレイすると重大なネタバレを食らうとどちらでもデメリットが存在する
・見方によっては学生側はかなりやばい奴ら。ナチュラルクリミナルマインド
・作中の内容に閑話休題的な話は皆無でほぼ全クリア後のエピソードとカラオケ位しかない
・SSSシステムが各キャラ9人8段階あるのだが多くて3段階で良かったし重要度が低いところはほぼ意味が無いのでシステム自体を活用できてない
・SSSシステムを(物語に落とし込む分には)十二分に活かせた√Aに対して√Bが上手く活用できていないくせに膨大
・ダブル主人公のわりに比重が偏っている
・√Aのミステリー要素を後半~結末に期待した人にとっては期待値を下回ると思う。説得力があるように上手く魅せているけど実態はひぐらしよりかはマシかな程度。あくまでクライムサスペンスとしてみるべき
・高校生サイドの主人公天川夏彦君が後半だいぶひどい。年上になめた口調とかは事情があるのでともかく使い捨ての駒感覚になるのはいただけないし結果によっては最低なクズ野郎
・社会人サイドの主人公笠鷺渡瀬も結末は結構波紋を呼ぶ。より良いエンドが存在するPS3かvita版がいいかも



総じて不満足な点は多いけど全体としては構成力が高い作品です
当然の如く比較されるけどever17と√Aは状況が似ている作品ですね(レミューと原子力研究所、記憶喪失の主人公と少年、時間制限有の脱出劇、説明が冗長等々)
infinityシリーズや科学advシリーズが好きな人ならば十分好きだと思います(ただ√Aの布石に対してのオチがこちらのが苦手って人は多いと思う)



シナリオ
上に書いたように事件発生の前と後で主人公視点を変えての物語
ADV史上最悪の舞台と謳っているだけはあり√Aはほぼ全て命がけの救出劇と謎の事件の連続でクライムサスペンス
逆に√Bは事件発生前の鹿鳴学園での不穏な人々とBCについての説明、過去の回想とミステリーやアクション要素が大きいです
地味にキャラ格差があり一方的に出番が多かったり少なかったりが難点
各々違うスリリングな感覚を味わえる作品になってます
どちらを先に選ぶかは好みですね…サイトに従うと物語を楽しみたい人なら√A推奨


キャラ
笠鷺渡瀬
√Aにおける主人公で特別高度救助隊SIRIUS(シリウス)のAチーム隊長。物語開始時には記憶喪失だしやたらと身体能力高いし謎の声が聞こえるしと色々属性持ち。エニアグラムはtype5「観察者」

天川夏彦
√Bにおける主人公で鹿鳴市の鹿鳴学園に通っているコミュニケーター(BC使い)。良くも悪くも学生らしく思考や言動が子供っぽくヘイトを貯めやすいが見せ場もある。typeは7「情熱家」だけど結構頭脳担当で冷めてた気が…

琴乃 悠里
√Aと√Bで完全に立ち位置が違う子。基本的には運動音痴で不器用、一応編み物は得意な模様。多分ニート。とりあえず公式サイトの彼女の辛辣評価を見よう。type9「調停者」

橘 風見
√Aにおけるシリウス副隊長兼渡瀬の相棒。主人公が記憶喪失なため代理で隊長を務める。type6「忠実家」

守部 旬
√Aにおけるシリウスの隊員。よくも悪くも純粋で裏表のない子。type8「挑戦者」

鳥羽 ましろ
√Bにおける幼馴染枠。彼女のいけない行動によって物語は動き出すのである意味最重要人。type2「援助者」

三宮・ルイーズ・優衣
√Bにおける転校生枠。通称「サリュ」。物語を進めれば可愛くなっていく不思議。type4「芸術家」

椿山 恵那
鹿鳴学園の新人担当教師。なぜか原子力生物学研究機構第6研究所で事件に巻き込まれる。type3「遂行者」

宇喜多 佳司
研究所における一般研究員。彼も逃げてるはずなのになぜか幽閉されている。頭脳以外は一般人だから仕方ないのだが地味にせこい。type1「批評家」

天川美代子
研究所における上級研究員で夏彦の母親。旦那を亡くした後は研究に没頭するため息子とは確執が生まれている状態で普通に苦労人