設定と世界観はよかったのかもしれない。が、シナリオとテキストが全てを台無しにした。
設定
主人公悠馬の魂はレン。
藍の魂はレンの母親、ハクの悲しい記憶を取り除いたもの。
藍の彼氏である鹿野上悠馬の魂は、レンの父親でハクの夫、兼アンドロイド。
青空はハクの取り除いた悲しい記憶が人間性を得た姿。
あらすじ
レンは言葉に愛されて人間には愛されない。
レンの書いた物語は好かれても、レンは嫌われ続ける。
そこへ、レンに嫌悪を抱かない旅する少女、二階堂真紅の魂の人が現れてレンは心引かれるようになる。
旅する少女のために物語を紡ごうと決めたレンだが、
脳に直接伝わるダイレクトネットからウィルスに感染してしまい、記憶が失われてしまう。
思うように物語を書けなくなっていたレンは、生活の補助を担当するアンドロイドからハクが書いた物語を渡された。
今までもレンはハクの物語に助けられていた。今度の物語にはこう記されたいた。
「レンが物語を書いたらお母さんは続きを書きます」
物語の続きを知りたいレンは苦しい時も頑張って物語を書いた。
だがどんなに頑張っても頭のウィルスには勝てなかった。
そんなレンにアンドロイドは最後の物語を渡す。レンはその物語に多いに期待する。
ハクに「大好き」と言ってもらえれば自分はまだ頑張れる、と。
しかしそこに書かれていたのは「大嫌い」という最悪の言葉だった。
唯一愛してくれていると思っていたハクに「大嫌い」だと言われてしまい、
以降レンに呪いの言葉として付きまとうようになる。
誰からも愛してもらえない。
レンは望まない生を終え最果ての古書店に本ではない状態で到達する。
そこでレンは古書店を管理していた前任者に管理者の役を受け継いだ。
管理者となってから悠久の時を経て、いつしかレンはレンだった頃の記憶をなくしていた。
しかし言葉の呪いは魂に深く絡みついたまま。今も大好きだと、愛して欲しいと願っている。
ある時、一人の少女を見つけた。名前は二階堂藍。レンの母親、ハクの生まれ変わりだった。
レンは藍がハクの生まれ変わりだとは知らないが、どこか引かれるものがあった。
「あの子なら恋を教えてもらえるかもしれない」
そう思ったレンは藍の恋人である鹿野上悠馬を古書店に呼び、藍がどんな人物かを聴こうとする。
だが鹿野上悠馬はハクを睨むだけで何も話そうとはしなかった。
気まずくなったレンは鹿野上悠馬を本に戻し世界へ旅立たせた。後にレンは鹿野上悠馬から反感を買うことになる。
その後レンは藍も古書店に呼び、藍と恋仲になろうとする。愛して欲しい、その呪いとも言える渇望から。
しかしレンは藍から恋人にはなれないと言われる。かわりに藍は大好きなお姉ちゃんのことをレンに話した。
藍からずっと聴かされるお姉ちゃん――二階堂真紅――のことをいつしかレンは興味を持ち始めるようになる。
「真紅に逢いたい」
レンはそう決意し、藍を本に戻し世界に旅立たせてから自分も古書店から出ようと考えた。
しかし一人では最果ての古書店からは出られない。レンは協力者を探した。
最果ての古書店のことをよく知っている人はいないか。
そこでレンは夏目鈴という少女を見つける。最果てに愛する人を奪われ古書店のことを熱心に調べる少女を。
レンは夏目鈴とコンタクトを取る。自分を外へ出せば愛する人を返そうと。
果たして契約は成立し、見事レンは古書店からの脱出を決めた。
管理者不在の最果ての古書店を残し、レンという名前から鹿野上悠馬という器に乗り換えて。
批評
主人公の生い立ちから愛するや愛されたい、大好きと言ってもらいたいというのが主軸。
だがこれらの設定が明かされるのは真紅ルートと真紅アフタールートであり、物語の最後のほうだ。
それ以前の共有や個別では明かさない、もしくは明かしてはいけないことになっている。謎ルール。
上記の設定を一切明かさないで主人公の第一人称を行ったらどうなるか。
その場限りの思考と感情で動く、ライターにとって都合のいいキャラクターでしかない。
行動に意味がない。当たり前だ、過去がないから現在の説得力なんてあるわけがない。
一貫性のない薄っぺらい主人公、もはやライターのオナニーでしかない。
こんな主人公に付き合って進めなきゃいけないんだからもうなんの試練だよと思った。
あと色のない主人公だから受動的でなきゃ話が進まない。
昔会ったことがあって押し掛けるしか脳のないメイド。何故か嫌われてるという幼馴染み。お兄ちゃんを連呼する引きこもり。おっぱいの神様とかいうのも受動的な主人公を動かすための設定でしかない。
そして色無し主人公の宿命とも言える圧倒的なまでの心情描写の少なさ。
そりゃ少ないだろうな、だって何も考えていないんだから。
当然地の文も少ない、それを補うように会話で心情を語ろうとするきらいがこのライターにはある。
だから会話が説明口調で文語っぽく感じる。声優も相当大変な仕事だっただろうと容易に推測できる。
ベテランなのに下手に聞こえしまう。いや、こんなひどいセリフだからベテランに依頼したのか、はは笑える。
真紅ルートとアフターもお世辞にも良いとはいえない。
上記の設定を共有及び個別で一切明かさなかったから真紅ルートで一気に説明しないといけない。
フラグの貼りと回収を同時に行う感じ、感動できるわけがない。
あとこれまでの行いを否定する発言が多い、今までの話は何だったのかと徒労に終わる気持ちになる。
個別の努力を無駄にする、まさに賽の河原。
最後に一言。
『とにかく』を使いすぎ、300回は軽く越えていると思われる。
ライターが話を理解していないから、ライターが思考を整理するために「とにかく」を多用したものと分析。