全体的にフラグの設置と回収が丁寧でシナリオは良かった。だが終盤の失速はあまりにも痛い。
この作品を語る上で外せないのは、やはり終盤のシナリオだろう。
シナリオの終わり方はあれでいい。ティアは人間ではなく天使の子であり、人間視点で考えるのは少し違う。
テキストも悪くない。目立った欠点は見当たらなかった。
シナリオの流れも問題ない。
生きる意味、選択に悩む主人公と、選択し終えたサブキャラクターとの対比。それによる主人公の成長。
こう見れば問題はなく良い感じに見えるが、実際多くの人が終盤の失速を実感した。
何故か。
テキストは悪くない。しかし良いとも言えない。力量不足、これが失速の原因だ。
主人公の成長に役立つ色々な選択をしたサブキャラクター達。
牢獄が崩落して死ぬくらいなら、武装発起してでも生きることを選択したジーク。
許されざる蛮行から天使を救うために、再び聖女になることを選択したコレット。
主人公に身請けされた料金を返済し自立の道を選んだエリス。
国防軍として戦うのではなく、自らの判断を大切にしたフィオネ。
我が子らが血を流し合あうような事を阻止するため、降伏することを選択したリシア。
上官との未来より、上官のために死ぬことを選択したシスティナ。
最後の一人になっても正しい選択をすることを決めたルキウス。
しかし彼らの心情描写が不足していたので緊張感が薄く、滑稽な劇場でも観ているような気分になる。
心情描写による感情移入はくどいくらいがちょうどいい。
役者と舞台は整っているのに、それをライターが活かせなかった。力量不足である。
前半みたいな一対一のシナリオは出来ても、一度に大勢のキャラクターを操作出来ない。
悪くないテキストでは書けないシナリオだった。
良いテキストじゃなきゃあの展開を書ききれなかったのが原因だと思う。