ErogameScape -エロゲー批評空間-

oBtさんのハロー・レディ!の長文感想

ユーザー
oBt
ゲーム
ハロー・レディ!
ブランド
暁WORKS
得点
82
参照数
1192

一言コメント

ハローと呼ばれる、いわゆる超能力を持った若者を集めた天河ノーブル・スクールを舞台に繰り広げられる物語。選択肢の横に目印があるがルート分岐は複雑

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

メーカー推奨攻略順は珠緒→空子→エル→朔。個人的には空子と珠緒はどっちでもいい。朔は必ず最後。グランドルートみたいな位置付けなので
ヒロイン好感度だけでなく復讐者としての心も分岐に関わるので分からなければ素直に攻略サイト見ましょ


キャラ紹介&個別感想

成田真理
主人公であり復讐を誓った哀れな亡霊。その手は血に塗れているが、その思いは気高い。たゆまぬ努力と研鑽が作り上げた巡礼の旅路は誰にも汚すことは出来ない。
成田真理の<ハロー>は声を媒介に相手の意志を誘導するハロー/ハムレットⅩⅡ。あくまで誘導なので「動くな」と言ってもほんの少し動きが鈍る程度。対策は声を聴かない・冷静に思考を辿り直す。尤も、戦闘中にそんな暇はなかろうが。あらゆる武術などを修めているので、素でも十二分に強い


桂木空子√
とある男の復讐の物語。反逆と自由を求める物語が男と女の再生の物語へと変わる。
再生=復讐者から人間へ、元の幼なじみの関係へ戻る
桂木空子の<ハロー>は他人の傷を見るハロー/ロミオ&ジュリエットⅢ。傷とはつまり“死”の遠因であり、その真骨頂は人や獣、物の死─終わり─へと至る導線を視る。物理的な死だけでなく愛しい者の死で出来た傷、犯罪に繋がる行動等といった傷を見ることも出来る。
終わり方はあまり好みじゃなかったけど、空子のハローで成田の復讐心の一部でも死んだ(終わった)と考えると着地の仕方としてはまあいいのかなぁ、と。


赤人珠緒√
とある男の復讐の物語。反逆と自由を求める男の物語が男と女の旅立ちの物語へと変わる。
旅立ち=学園から離れて日向のあたる道から外れる
赤人珠緒の<ハロー>は身体機能を拡張するハロー/テンペストⅣ。五感や肉体の強度を超常へと引き上げるというポピュラーな能力だがその強度がずば抜けている。
『赤人』は「弑し屋」の一族で、これは緋のないなどで出てきた緋修離「かたり屋」、猿丸犬好「おろし屋」などといった時代遅れの骨董品たちと同じである(同一の世界観?)
空子√よりハローについての解説が多かったので色々と合点がいった。後、デレ珠緒がかわいい。ふにゃふにゃしてるのホントかわいい。ねこっかわいがりしたい。


鷹崎エル√
とある男の復讐の物語。反逆と自由を求める男の物語が男と女の誕生の物語へと変わる。
誕生=道具から人間へ、復讐者から人間へ産まれ直した
鷹崎エルの<ハロー>は他者の愛に同化するハロー/夏の夜の夢Ⅷ。つまり、鷹崎エルを愛する対象であると誤認する。派生として精神干渉の力がある……と思われる(細かい事は記述なし)。おおよそ人間である限りこのハローから逃れることは出来ない。
エルの朔への忠義の理由、序盤に出てきた<対象A>がスライダー化したHMIであるなど、ハローの危うい面、可能性などが上手く描かれていた。エルのHシーンすてき。ロリとエロスの融合はビッグバンもかくや。


音無朔√
とある男の復讐の物語。反逆と自由を求める男の物語が男と女の絶望へと至る物語へと変わる。
音無朔の<ハロー>はハローを殺すハロー/リア王Ⅲ。ハローによる干渉を防いでカウンター。そしてHMIからハローを剥奪する。それを使用、また剥奪したハローを元に未だ見ぬハローを創造する。
そもそもハローとは第3の物理であり、黒船の言う通り人類の可能性である。それはつまり、人間の中に眠っている機能とも言える。ハローは精神に影響されて変化する。そしてまた、精神も肉体に影響される。となるとハローを“剥奪”するという事は実質的に不可能になる。それはあくまで結果的にそう見えているだけに過ぎず、無意識に押さえつけられたほんの一部に過ぎない。その真価は人間という小さな世界を作り変える力。HMIからハローという超常を取り除くのではなく、人間として正常に組み立て直していく力。それは正に『王』であり、空に輝く星<エトワール>。
√全体の完成度もさることながら、朔の精神がとても気高く美しかった。他者の自由を侵害してはならないのに人間は生きているだけで他者の自由を多かれ少なかれ侵害することになるというのが世界。そういう世界の矛盾を飲み込みつつも正しくあろうとするその姿はとても美しく、心惹かれるものがある。そんな強さを持っていながらHシーンではとても初心で純情な乙女らしい反応に胸キュン。