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nyalkaさんのQuartett!の長文感想

ユーザー
nyalka
ゲーム
Quartett!
ブランド
Littlewitch
得点
90
参照数
294

一言コメント

たぶんそれは二度と得られない 今日と言う日の奇跡

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

余計なものも足らぬものもない完成された音楽、舞台芸術であると共に「わはは、楽しい、それがいいんじゃない」を描き切ったひとつの集大成なのだと。
焦ることも飽きることもなく作品を堪能できる、最高のステージを味わわせてもらいました。

ふたつ程気になる点があったのでそのことに関して。

ユニ&メイの幼少期、頭を撫でられているCGについて。ユニの回想として出てくる方では頭を撫でられているのは良く出来たメイだってすんなり分かるんですが、ユニルートにおけるメイの回想としての同描写については少しあれ、と悩んだけどちょっと読み返しているうちにしっくりきた。

>ずっと…わたしの憧れだったよ
>昔のわたしって不器用な上にモノ覚えも最悪でね
>練習だってそんなに好きじゃなかったし
>真面目にやれってよく先生に叱られてたよ
>だけれどユニは全然違ったんだ
>どんな難しいフレーズも一発で覚えたし
>その音がすごく綺麗で―――
>あんな風に弾きたいな~
>そう思って無茶苦茶に練習した
>早くユニに追い付くんだって必死だったよ…

メイにしてみれば褒められながらもユニに並ぼうと努力を積んだ結果というものがあれ、素質の面については互いに憧れる部分があったのかなって。褒められてるのがメイとみせかけてユニじゃないかとか変な勘ぐりをしたのが良くなかったかな。とはいえ、両側の視点からのそれぞれの輝きを切り取った光景、その重なりを想像するにつけてまたこみあげてくるものがありますね。勘違いすれちがい深読みから戻ってくるまでの過程も糧たるものということでひとつ。

残った側というのはクラリサ先生の過去とかそういったところなんですが、ここについて語るのも野暮ってものなのでやめておきましょう。もしかするとどこか見逃しているかもしれない。メインに添えられないそれぞれの人物の思惑と過去も、またそれぞれに美しく。ああ、あの素晴らしい日々はあの時たしかにそこにあったのだ、そう心の裡に思い描くことを、その笑顔を、そして彼らによる音楽が奏で続けられていくことを、そっと噛み締めるばかりです。