『でも、同じ空はないもん。一日ごとに違うの。今日の空は、明日には見れないから』
菜穂→その他→もう一周菜穂、とプレイ。メインヒロインのシナリオを読み終えてしまえばある意味後は消化試合。
攻略推奨順、敢えて初め菜穂を持ってきてジレンマを抱え続けてみるのもよいかも。
他ヒロインと結ばれていく時はこんなにも普通に生きていられるのだなと。
生きると一言で表現できるほど容易いものだった訳ではないが。
手紙の言葉はひどく脳裏に焼き付いている。
『今日までの わたしのこと、忘れてください』
日記に綴られた忘却への恐怖。
『神様お願いです。前に言ったこと取り消してください。
全部取り消してください。わたしは忘れたくないです。
もう少しで死ぬのなら、覚えてるまま死なせて下さい。
けーくんのこと、けーくんがわたしを好きだっていうこと、
みんなみんな覚えてるまま死なせてください。
お願いします。お願いします。お願いします。』
忘れてしまった私は、もう私ではないから。
何回忘れても何度でもまた好きになればいいという理屈は、この作品においてはうまく作用しないのだと。
また、結莉ルートにおいて。結莉は一次的に記憶を失うも、何のことはなく取り戻しハッピーエンドを迎える。
圭一が一生懸命にケーキ作りの抱きしめてあげたりの想いが報われた、と言っておけば聞こえはいい結末ですが。
結莉にはああして強引にでも触れることが出来る点、記憶を失った時は結構酷い言動をしてしまう点(ケーキ皿の場面)、対比して菜穂の悲痛さが滲む。
その時の結莉の言葉を。
『(殴るのもいいけど、)どうせなら死なせてくれないかな。
その方が……ずっといい……
だってわたし、生きてる感じがしないんだもの。
さっきから結莉、結莉って呼ばれてもピンとこない。
自分が責められてるって気がしない。
なーんとも思わない。
自分がここにいるって感じがしない。
こんなのだったら……こんなのがずっと続くのなら、いっそのこと……』
直後の菜穂の言葉通り、思い出しさえすれば楽しい食事ができると。これを菜穂に言わせるのがまた辛い。
雰囲気のよい終わり方できゅっと胸に来るものがあった。共通日常のコミカルなシーン、ちょっとした演出なども中々楽しめる。
今もまだ、波の音に感情が攫われるようです。