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nt9passさんの冥契のルペルカリアの長文感想

ユーザー
nt9pass
ゲーム
冥契のルペルカリア
ブランド
ウグイスカグラ
得点
89
参照数
551

一言コメント

作品の完成度高し。やっぱり妹こそ至高の存在なんだなって

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ついに妹が名実ともにメイン!で大変うれしく思います。

ウグイスカグラ4作目となりますが、完成度はこれまでで一番高いのではないでしょうか。
共通、個別ルート、それぞれの出来は損なうものもなく調和し、各エンディングもCG以上になり、システム面も大幅強化。
さらには軽く2周目までプレイしても誤字脱字は見当たりませんでした!(パッチ未適用)これは大変すばらしいことです。前作までは最新パッチをあてていても誤字脱字が残っていますから。


本作のコンセプトは青春譚、恋愛譚、幻想奇譚となっています。紙の上の魔法使いと同じです。

青春譚についてはもちろん劇団ランビリスですね。
フィリア公演に向けて切磋琢磨していくなかでの青春模様が描かれますが、ウグイスカグラお得意?のギスギス感を来々座長がこれでもかと演出してくれます。めぐりのために、めぐりや他の団員に嫌われてでも突き進んでいく来々座長はとてもかっこよいです。めぐり個別ルートを考えると家族愛と捉えられるので、劇団ランビリスがホームと言われるのも納得できます。


恋愛譚については個別分岐前の共通ルートですでにモテモテになっていますが…
奈々菜はもともと主人公からすると妹属性が欲しかっただけで開幕で任意監禁している時点で対象外、めぐりは主人公がめぐりの誘惑に耐えきる紳士()、琥珀は役作りで振ってもらうというTRUE的になさそうな3人に個別ルート、虚構世界が存在します。
理世の虚構世界のみ、個別ルートではなく共通ルートに含まれています。たぶん未来との関係性かな。作中では一番ありそうだし。

理世は未来の構成要素である朧から説得を受け主人公を手放すのですが、この朧からにじみ出る愛情は虚構世界での未来を示してくれていて、未来への理解にとても役立ちました。


幻想奇譚は白髪赤目が導く虚構世界。
なぜそれが起こるかは本筋の話ではないのでそんなに気にはならないものの、紙の上の魔法使いをやってないと幻想奇譚の説明があっさりすぎてよく分からないで終わるような気がしました。
また、ところどころで入る京子の演劇演出がよかったですね。


その他シナリオについて、やっぱり心情描写が素敵ですね。どうしてそんなに上手く伝えられるんだろう。
主人公ですが、主人公の抱く未来への劣等感は表現されすぎているくらいに表現されています。しかし、最終幕で妹との対話時に演劇も、妹も、心の底で切り捨てられていない、妹の死をいつまでも悲しんでいたい、など主人公は言うけども、そういった妹への執着を未来との道を別ったあとの場面を使ってもう少し表現して欲しかったです。シナリオ的に隠していたのは分かるけど、主人公の絶望表現が個人的には足りず、せっかく主人公が救われたシーンでのカタルシスをあまり感じなかったです。

また、琥珀だけ明らかに話が少ないです。才能が入る前の琥珀のモノローグはもっとあると思っていたので残念ではあったものの、朧と琥珀はあくまで舞台装置でしかなく虚構世界での他の人物との繋がりが薄かったため仕方ないかなとも思っています。

一番面白かったのは最終幕の未来のモノローグで空を飛ぶ、~紙が燃えた、のところですね。空を飛ぶ、紙が燃えたって字面から受ける印象が他と違いすぎるだろ(笑)


システム面について、クイックセーブロード&バックログからの任意シーンへのジャンプ実装が実装されており大幅に改善されています。バックログジャンプ機能は最高に嬉しい。もうこれで一つの完成系ではないかと思っているくらいです。
ただ、演出面を強化したためかスキップがかなり遅いのでここは改善して欲しいですね。
あと、セーブ画面でのデータデリートがバグっています。ロード画面では問題ないです。


私がウグイスカグラの作品で期待しているところは妹と、切なさと、質の高い心情描写による没入感です。
本作はすでに死亡している愛した妹との相互理解ということで、前述したように主人公の妹への想いの表現が若干足りない気がしますが、十分に期待に答えてくれました。memoriesが流れる未来の後ろ姿のシーンはどれも感情を揺さぶってきてとても切なく、好きです。
次回作にもとても期待しています。