良質ミステリー
再プレイ。
もうすでに落ちを知ってしまっているからこそ、ミステリーものの再読は面白い。
特に良質のミステリーは。
巧妙な伏線と、それに共鳴するミスリード。
それらを一つ一つ吟味する。
それもミステリーの楽しみ方のひとつである。
非常に巧みだと思った点は、七七の扱いだ。
物語中、見方によっては絶対的な存在、とても有能な存在に描かれている彼女も、一度間違いを起こす。
その効果によって絶対的に見えていた七七の存在が、不完全なものとなり、結果として最後のシーンの深みへとつながる。
七七が狂気の人間ではないということも、あるいは分かる。
ラストシーン。
主人公に謎解きをさせなかったのは絶対的に良い選択であった。
(プレイヤーの視点)=(主人公の視点)という形態をとっているため、プレイヤーをミスリードさせるためには、「主人公は実はすべてを知っていた」というような状況はとり得ないからである。
それをすると、本格推理ではなくなってしまう。
また、それらを真実として信じようとしている主人公に謎解きをさせるというのは、あまりにも人間性に欠けた描写となる。
物語初盤である警察官にいわれたこととも矛盾が生じてしまう。
そこで登場させる七七はこれまで物語に深くかかわってきた、客観的(途中からは主観的)立場の存在であるため極めて適任なのである。
これにより物語性に目には見えない深みが増すということはいうまでもないだろう。
本来、ゲームにおいてのミステリー作品の自由度はかなり低いように思われる。
殊、ADVの形態をとっているものについてはほとんどないといってもいいだろう。
なぜなら、小説特有のトリック(叙述トリックなど)を使うことが至極難しいからだ。
そんな恵まれていない環境化の中でこれだけ良質のミステリーを創作することができたこのゲームは、もっと高評価を得てしかるべきであると思う(それはユーザー側の読解力や理解力が上がらなければむりなはなしではあるが)。
次回作にも多分の期待を寄せながら、筆を置く。