キャラとシナリオが上手く引き立つ面も多く、世界観や設定などをルート上の構成などに当てはめて最後のヒロインに持っていくのがとても良かった作品です。所々に感動の極点があり、キャラゲーとしても暖かく何処か透明な雰囲気作りがとても素晴らしかった。当時TRUE扱いのヒロインが公開されてなかったと知り、またそう言った楽しみ方もあったのも良いな、と思えるような部分もありました。ただ、それを知っていた上でも楽しめたので、純粋にゲームとして面白かったんだな、とも改めて思った作品。
「星空のメモリア」の長文感想
1.個人的に思う、ライター「なかひろ」の魅力
初恋サクラメント、アストラエアの白き永遠、などのなかひろ作品の有名どころをプレイして、
まず思ったのが、「家族」という概念に対しての感動の振り幅を大きく描けている、という点だ。
エロゲーという場において良い意味で在り来たり且つ普遍的に盛り上がる要素として使われる題材なのだが、
氏の作品には、それが使われた場合、世界観として成り立つ根幹に深く交わりつつ、
他では出せないような暖かさを感じさせ、場面・心理描写の丁寧さもありながら、かなりの山場を描写してくれる。
この作品では、大枠に捉えて姉妹愛、それこそヒロインの家族にまで踏み越えていくとして、
それを描ききるライターの力量たるや、と言ったところで、また評価が上がった。
今作では、「家族」というテーマをメインに据えている訳ではないのだが、一つのエッセンスとして、
明日歩ルートや千波ルートなどの各個別に感動の花を添える役割を果たしていたように感じた。
つまり、あくまで成り立ちを形成する一つの大筋に沿う舞台で「家族」というものを絡めさせて、
最後にはハッピーエンドを描ききる、この上手さ、この部分に個人的には改めて魅力を感じた。
2.今作の主人公の立ち位置と関連付けたルート構成上の強み
プレイ時間比として、客観的な立場から見れば、助長の範疇に収まってしまい、
あるいは個別としての「ヒロインと結ばれる恋愛」という個別の意義が失われるかもしれない危うい一面も含める中で、
今作では主人公に「救済」という立場を与えて、前述した双方の条件を軽くいなしていた。
構成的に前5人のルートの主人公がヒロインに対して「救済する」というスタンスと感じたのに対し、
夢ルートでは、ヒロイン・主人公共に「救われていた」という点で、感動の転調として大きかったのも素晴らしい。
しかし、この夢ルート、メアだけが救われた、とは言いづらい、何とも言えない後味の悪さが残る立場となっている。
(FDはまだ未プレイなので、メア消失後→エピローグ間の描写に関しては考えないものとする)
しかし、ここで構成上の良さが発揮されており、最期のルートであるメアをやることにより、メアも「救う」ことが出来る。
ただ、その分、夢・メアルートでは、キャラとして好きだった明日歩が報われないという見方も出来るだろう。
少し話は逸れるが、個人的に個別の意義として、ヒロインが最大限恩恵を受けるという考え方が根っこの部分にあるので、
夢・メアルートでは恋愛として救われない明日歩や他のヒロインが出てくるのは、まだ不憫として扱われていないだけ、
その分上手く演出されていることこそが美味しい、元も子も無い言い方をしてしまえば、寧ろ個別でその魅力を最大限発揮し、
更に他のルートで上手い橋渡しとなったことが、報われないにせよ評価として加味する点となった。
閑話休題
まさに、全ての個別(一部若干怪しいヒロインもいますが)において、根幹にあるのは願いに対する「救済」
そして、報われることによるハッピーエンド。やはり、暖かみのあるテキストとそれに追従するかのような幸せを落とし込むのが、
ルートにある......ある......?(まぁ、メアルートも個人的には断然有りな方向性として考えています)
3.ルートへの大まかな所感
メアルート:夢ルートの派生と言った意味で、若干おまけのような要素として楽しめたかもしれません。
もちろん再三言いますが、FDをやることによって、また見方が変わったりするかもしれません。
ただ個人的な主観としては、ルートが作られることによって恋愛という意味で「救われた」のかもしれませんが、
内容を深めて、厚みを持たせられれば、もう少し素晴らしいものになったのではないか、という意味合いが大きくなったのかも。
掘り下げが足りない=余韻を残すor考察の余地有り(今作品に関しては大前提として世界観の大部分を前部分で解説しているため成立)
となるのか、それとも若干の物足りなさを感じるのか、とユーザーの創意によって賄われるという楽しみ方も分かれると思います。
夢ルート:只々良かった、心底良かった。各ルートでチラチラと見え隠れしてきたこの子を救うことが、
この子に救われることができて本当に良かった。全てを諦観してるように見えて、その実心の奥底では、
まだ救いを求めているヒロイン。「自分は不幸だから......」という思想を抱える中ネガティブに見えて、
自分に酔っているようなヒロインとは違い、テキスト上の「主人公の紆余曲折ありながらも最後にはハッピーエンドを掴む構成」と
「ヒロインが相手のことを考えながらも諦めを感じるが、救済を求めている心情」の演出が上手い、とても良かった。
上記の演出があることにより、ユーザー側に嫌味のような部分を感じさせず、しっかりと苦楽があるようなものとなっていた気がします。
他のメインヒロイン達も、仲間として良い立ち位置にいたし、実質TRUEと言えるようなものと仕上がっていました。
萌え度で言えば、病弱だけどお姉さんぶるヒロインって、それだけで大勝利です。
"CV遠野そよぎ"もそれに拍車を掛けるように上手い演技と声質、とても合っていたと思います。
明日歩ルート:千波ルート同様、世界観の説明に一役買っているという点もありますが、個人的に大きく感じたのは、
やはり、キャラゲーとしてのルートの良さだったりします。
明日歩が長年抱え続けてきた罪悪感のようなものを主人公が明日歩と恋愛することにより、幸せを掴みに行く部分が良かった。
もちろんヒロインの性格的に、その罪悪感が尾を引く展開も中途挟まれていたりもしますが、それが不快になるとか、そう言ったことはなく、
寧ろ、二人の関係を押し進める上で潤滑油のように良い問題となっていたと思います。
後、個人的な部分で言えば、明日歩と父との少しの和解のシーン、家族とかそう言った題材に弱いオタクとしては、ボロボロ泣いてしまいましたね。
父のセリフに気持ちが篭っていたのもあり、かなり雰囲気が乗っていたと思います。
CVふーりんは強いよね、僕も大好きです。膨れた顔もかわいい。
千波ルート:こちらも世界観、というよりかは形成する上で過去に何があったのか、が解明されていました。
根幹にあるものは、家族としての在り方のような心暖まるものがあったと感じました。
一部では、「ウザイ」や「可愛くない」などキャラに関しての不満が上がっているようですが、分からなくもないです。
ただ、個人的にはそこまでウザくは感じず、かと言って刺さる程に可愛いかと聞かれれば微妙な立ち位置にいたので、
やっていてヒロイン自体に愛着が湧いたかと言われれば、それまでだったかな、と言った次第です。
ただ、前項で触れた通り、このルートも家族という題材が上手く活かされていました。
兄妹、そして父と母、それを世界観と上手く照らし合わせてシナリオを進行していくのが本当に上手いな、と思いました。
こさめ&こももルート:一緒くたにまとめてしまっています。ルートの内容は違いますが、
本筋にある設定は片方のルートで明かされてしまうためです。
こさめちゃんかわいいです。こももちゃんルートでほとんどのネタがバレていましたが、
だからこそ、僕は自分自身が主人公でないにせよ、こさめちゃんも救いたいと思いました。
この子も幸せにしてあげなきゃ、そんなの報われないと思いが勝る程にキャラに対しての情の移ろいが激しかったです。
こももちゃんも、若干の設定に関してのまわりくどさを感じましたが、キャラとして最終的に姉妹愛を絡めたものとなっていて、
こももちゃんルートとしては、ハッピーエンド、こさめちゃんというヒロインに関してはベターエンドとなっていました。
だからこその救いを僕は求めたんでしょうかね、こももちゃんルートが終わった後も「こさめちゃんを早く攻略して幸せにしてあげたい」
と逸る気持ちを抑えきれませんでした。
こさめちゃんはちょっぷかわいいです、SD絵で射精出来ます。
こももちゃんはお姫様だっこされた時の反応がかわいいです、戸惑った時の反応で射精出来ます。
衣鈴ルート:序盤→中盤に掛けては「何でこのヒロインを主人公は好きになったんだろう」と
ライターの設定を進める上での意図的なものを感じて上手く楽しめなかったかもしれません。
ちなみに一番最初に攻略したヒロインなので、結果的に見ればそこまでの楽しみを損なう程では無かったのですが、やはり考えるところはありました。
好感度が最初から底辺でも、後には個別ですから、それなりに高くなっているものだと、思いましたが、
個別に入っても上手くテキストからそれが伝わってこないような、ただの面倒くさいヒロインになっていたように感じます。
正直シナリオに関しましては、他の個別全て分かった上で改めて、まぁまぁ良かったな、と感じましたね。
単体で見るには、少しヒロインとしての個別の意義を感じられなかったかなぁ、と残念な気持ちになりました。
4.後語り
良い作品でした。最後になるにつれて、尻上がりに良くなる作品だったと思います。
この作品特有の雰囲気と、設定を上手く明かしていくルート構成が、相乗的に良く働いていたと思います。
自分自身、楽しめたのがヒロインによるところも大きかったのかな、なんてのも感想を書いて思ったり。
とりあえずFDをやって、また幸せな気持ちに浸っていきたいと思います。
そうしたら本編自体の評価も変わったりするのでしょうかね。
とりあえず、なかひろさんのテキストがまた好きになれた良い作品でした、
やっぱり何処か透明で暖かい雰囲気作りはFavoriteさんの上手いところでしたね。
normal_number