法廷バトル作品。3作品とも色々言いたいことはあるけど、この作品のノベル×ゲームという構成がしっくりきたから面白かった。
作品への好感度 S(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 S(S・A〜E)※セール常連
前置き
シリーズ通しての良い点、悪い点について記載してから全体の総評、その後各作品の感想の順になります。
■良いと思った点
・スピード感
全ての会話が超スピードのとんとん拍子で進んでいきます。裁判中もそれは変わらず。裁判が最長でも3日で終わる世界観なので、タルいと思う展開がなくサクサク進んでいくのが良いと思いました。読み進めていくだけ系統の読み物ゲーには出来ない短さとテンポの出し方だと思います。
・主人公の性格
この作品がなんだかんだ楽しいのは、主人公が良かったからだと思います。真面目一辺倒ではなく(実際弁護士としてはかなりの不勉強)、時々本気でふざけ、本気で焦り、適当な推理をぶちかまして場を繋ぎ、気がつけば勝利している様は何度見ていても飽きませんでした。
・キャラクター
大体のキャラが出てきてすぐに記憶できるようなわかりやすい「記号」に溢れています。プレイヤーが子供でも大人でも頭に焼き付くようなタイプが多かったように思えます。
法廷に証人として立つ人物はさらにモーションが多く、意外な一面が垣間見れて良かったです。お気に入りメイン外キャラはテキストの表示の間でキャラの味を出してきた蘇-5話のガント局長、この作品にしては珍しく裏がない世間知らずキャラである2-3話のミリカ。
・オカルト要素を推理ものに持ち込んだ
本格的な推理作品だと敬遠されがちなオカルト要素を作品全体に散りばめられており、3の最後の方はオカルトメインで話が進んでいきます。ヒロイン一家の存在が完全にオカルト側、というのが面白い試みだったと思います。
・音楽、SE
シナリオに沿った劇伴が多く、耳障りだと思うことがなかったです。特に1作目の音楽は秀逸。
SEについては常に何かしらの打撃音が聞こえるのではと思うくらいにバシンバシンと鳴っており、コミカルさの演出に役立っていたと思います。ボイスがなくても寂しさを感じることはなく、常に楽しくなるような演出がされていました。
□悪いと思った点
・バックログがない
読み物メインの作品なのにこれは痛い、と思いました。プレイ期間はなるべく開けないようにしましたが、それでも細かい流れが思い出せないことが多々ありました。例えば、意見の根拠が証拠品の中にあるのか直前の証人の発言との矛盾にあるのかそれとも無いのかみたいな選択肢が突然飛び出してきた時に「直前の発言なんだっけ」となることがありました。移植した時につけてほしかったです。
・作中の倫理観
蘇-2話で綾里法律事務所に盗聴器を仕掛けた女が捕まっているものの、主人公達も続く3話で他人の鞄からカードキーを取り出して不正使用しています。それはおかしくない?となりました。
その他もシリーズ通して探偵パートで不法侵入や窃盗等の犯罪まがいのことは一通り複数回やっていることにより、主人公側の正義を感じづらかったです。
またこの作品には人死にの話しかありませんが、登場する人物がちゃらけている人物ばかりで反応に困ることが多かったです。蘇-3話の犯人をはじめ犯人側の方が人間の死に真摯な場合が多く、ただの証人達が余計ふざけているようにしか見えなかったこともあり展開によっては微妙な気持ちになることがありました。
法曹界自体滅茶苦茶なので、ある意味全てがしっちゃかめっちゃかな方が良いのかもしれませんが…
総評
ノベルとゲーム性の融和が凄まじい作品。シナリオ上に少々問題はあれど、完成度はかなり高いと思われます。世界観さえ許容できれば大人から子供まで楽しめる名作。エロゲやエロそのものが少々食傷気味になっている方の息抜きにオススメ。
評価:3>蘇>2
逆転裁判 蘇る逆転
評価:5話>>4>>>2>>1=3
1〜4話+追加シナリオ5話の構成。
1〜4話については短い1話を経たのちに2話でいきなり師匠であるチヒロが死に、4話でライバル検事のミツルギが犯人扱いされ追い詰められるという一連の流れは一作完結の作品としてよく出来ていると感じました。1話1話が短く説明不足感も否めなかったものの、テンポの良さも相まって楽しめました。
ゲームシステムについてはカガク捜査という新要素のある5話の出来がシナリオ・ゲームシステム共に良く感じ、次回作以降この要素がないことに違和感を持ってしまいました。作品が作られた順序的にこうなることは仕方ないですが、次回作では血を調べたり指紋を調べたりがあまりないため捜査が杜撰になった気分になりました。
逆転裁判2
評価:4話>>>3>1>>>2
3作目の存在ありきの2作目、という感じの作品。ある意味2と3はセットで考えたほうがいいのかもしれません。
1〜3話はおかしいと思う展開や推理が多く、やや期待外れでした。2・3話は実行犯の動機や新システムの「サイコ・ロック」で探りを入れていく展開自体は惹かれるものがあっただけにより微妙な気持ちに。
特に2話については不満も多く、真犯人への追及が中途半端(真犯人は証言もしないし、問い詰められることもなく逮捕される)かつトリックにも矛盾が生じています。また実行犯についてもモノローグ、サイコ・ロック両方で平気で嘘をついているため、ゲームシステムが破綻している気がしてなりません(3-2話の真犯人もサイコ・ロックで嘘をつきますが、こちらは役職が役職なだけにそれができてもおかしくないと思わせる下地がある)。
3話は運任せの冗談みたいな推理が正解だったという流れ自体は別に良かったのですが、証人がトミーやアクロの裁判パートがプレイヤーに理不尽だったり、団員達にこれからは頑張ってほしいと思えるほどの良い感情が既に無かったりとなんとも言えない話でした。
4話は依頼人が今までの人達と真逆で擁護できないクズなため断罪される必要があるにも関わらず、マヨイが拉致されているため検察側が追い詰める事を許す訳にもいかないという絶妙なバランスで成り立っていたと思います。最終的に実行犯はお咎め無しになる等気になる所はありましたが、ナルホドの正義が問われるいい塩梅のシナリオだったと思います。
逆転裁判3
5話>1>4>>3>2
1話から普通にシナリオガッツリやるの!?とびっくりし、続く2・3話も本筋には関わらないシナリオながらも5話の推理の根拠となる構成で、時系列は入り組んでいるにも関わらず作品内の流れが綺麗に纏まっていた印象です。
本作も霊媒関係“以外”で少し無理のある展開運びがあったり諸悪の根源のキミ子が最終的にどうなったかも描かれなかったりと消化不良の面はありましたが、マヨイの成長物語としては良かったです。
ナルホドの成長を描く物語としては前作までで終了していると感じており、本作ではその成長した姿をゴドーに見せるという所が全面的に押し出されていた印象を受けたため本作を「マヨイの成長物語」と評しました。
欲を言えば、もっと過去シナリオのキャラが見たかったです…