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no-attさんのリベリオンズ Secret Game 2nd Stage for Nintendo Switchの長文感想

ユーザー
no-att
ゲーム
リベリオンズ Secret Game 2nd Stage for Nintendo Switch
ブランド
イエティ
得点
99
参照数
141

一言コメント

リメイク前・18禁版未プレイ。人里離れた野山で学生達によって繰り広げられる過酷なデスゲーム作品。前作シークレットゲームよりはデスゲーム作品としてのハラハラ感や感動、虚しさを感じられた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作品への好感度   S(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 A(S・A〜E)※シークレットゲーム -KILLER QUEEN-等シリーズ作品のプレイは必要なし。作中でのカップリング変更とライター変更が平気ならばオススメ


前置き
本感想における「前作」は、「シークレットゲーム CODE:Revise」ではなく、「シークレットゲーム -KILLER QUEEN-」のことを指します。

各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
プレイ順:Ep:A→B→C→D
評価:B>>A>C>D



Ep:A
プロローグ的シナリオ。Ep:Aの1st終了までで全体既読率の25%程度だとは思わず、ちょっとびっくりしました。

シナリオの面白さはまあまあ。致命的な運の悪さで第一犠牲者として琴美が死に、そこから2ndへ。非情な殺人者に堕ちてしまう修平のお話ではあったものの、結局非道に徹しきれなかった修平が人間臭く魅力的でした。

シナリオで特に良かったのは司と玲の関係性。頭は回るが自分以外の人間を見下していた司が、裏表のない、ある意味無垢とも呼べる玲に絆されていくのが良かったです。そんな司の最期はこのEp:Aのベストシーンだと思います。司の願いを聞き届けた玲も、無惨に殺されてしまった時は思わず泣いてしまいました。

ラスボス枠は途中から姿を消したように見えた大祐。自己保身・自己の快楽が最優先の自分一人さえ良ければ良いという刹那主義かつ、バカに見せかけて頭はそこそこ回るというなんともなキャラクター。この見せ物の中で女性を襲うことに手慣れた感じ、正体はリピーターじゃないの?と深読みしてしまいました。

エンディングも、今まで沢山殺してきたはるな・瞳に安易な平和は訪れない(はるなは自分の意思とはいえ家族との幸せな日々は帰ってこなかったし、瞳は結局何も考えずに主人の仇を撃つことを考えている)という、虚しさに満ちた終わり方で良かったと思います。


Ep:B
OPの「KILLER QUEEN」の文字で良い意味でゾワゾワが止まらなくなりました。まさか前作より、キラークイーンという単語から連想できる要素が出てくるとは思ってもいなかったです。

シナリオはかなり面白かったです。もっと早くに修平とはるながお互いに気づけていたら…というifの物語という触れ込みで始まりましたが、修平チーム(修平・はるな・琴美)は話に色を添える程度で殆どメインにはなりませんでした。
前話で印象的だった司・悠奈もあまり目立った出番はなく、前話ラスボスの大祐もあっさり死に、全く違う物語が展開されたのは面白かったです。

今回は初音チーム(初音・充)、玲チーム(玲・黒河)、真島チーム(真島・結衣)がメインの話。メインキャラの数が多いのに、特に話がとっ散らかった印象はなかったです。玲は2話連続で良い役どころを貰っています。

特に良かったのは黒河、初音。
黒河は簡単に2nd開始の原因になりそうなくらい喧嘩っ早く、しかし強そうに見えて戦果は基本ボロボロ、薬の売人になりかけた過去があり、自分以外を奴隷か敵としか認識していない男、という散々な描写ばかりが目立っていました。もちろん、彼独特の価値観など面白い部分もあるのですが。
玲が司とは別方面で彼を絆していったのは、感情面での決着はこうなるだろう、とは思っていても驚きました。まさか帰ったら一緒に何かやろうと黒河側から提案するくらいの間柄になるとは……
基本的には例えifであろうと主人公・ヒロイン間以外のカップリング変更はあまり好きではないタイプの狭量なオタクなのですが、司×玲も、黒河×玲も乙なものです。

初音はEp:A修平と同じく、殺人者の役に最後までなりきれなかったところが好きです。最初の方は運営の思惑にのる形でノリノリで殺していこう、充を利用していこうとしていたのに、充の存在もあってか結局素に戻ってしまっていたのが良かったです。充が麦畑で突貫するシーンだけはよくイラストを見かけていたので、何か感慨深いものがありました。

ラスボス枠は瞳。その時点の生き残り全員生存でゲームを終了することは簡単に達成可能だったにも関わらず、司の遺言を勝手に解釈して暴れ回っていました。Ep:Aのラストと言いこのシナリオと言い、瞳救済までのシナリオの溜めの部分なのはわかるんですが…
シナリオの都合とはいえメイドキャラの主人変更に加え、やることなすことがアレすぎたり、このキャラへのプレイ前時点での評価が高すぎたのもあってか、前話分も含めてこのキャラにはヘイトが溜まりました。

結衣と黒河がゲーム運営と外の世界で戦っているところでエンディング。結衣が強かになっていたのが印象的でした。「圧倒的な、暴力だ」とかなんとか予告で言っていたのにろくに暴力を振るえなかった黒河が、最後の最後に(玲の遺品っぽい)刀を持ちながらこの台詞を喋っていたのもかなり印象的でした。


Ep:C
悠奈と修平が最初から協力していたら?というifの物語。本シナリオで初めて、リピーターに対する新たな追加ルールがありました。元々リピーターには様々な追加ルールがありましたが、それ以上のゲームそのものに対する運営の露骨な介入はこれまでこの作品にはなかったように思えます。その点においては前作を想起させられました。

シナリオは基本的には面白いと感じましたが、先ほど述べた通り前作的な雑な運営の介入で萎えてしまった部分もあったものの、ここまでで大祐以外は彼らの「善」の部分もよく見てしまったがために、2ndでは誰かが死ぬ度に苦痛を覚えました。

このシナリオでのメインキャラは一応悠奈・黒河・瞳だと思いますが、ほぼ参加者全員に、何かしらの目立つ点があったと思います。
悠奈・黒河は比較的良かったものの、ここにきてやはり粕谷瞳という存在の非現実さが如実に出てきてしまいました。他の人と比較することもできないくらい悲惨な過去、己に課した荒唐無稽な戒律(逃避)、露骨な幼児退行、チェーンソーで全ての弾丸を弾き飛ばす事すらできるレベルの身体能力を有することにより、とてつもなく別次元的存在かつ俗っぽいキャラだと思えてしまいました。幼児退行復帰後の彼女は割と好きなのですが…

生き残った修平・琴美・玲が運営に捉えられ、再びゲームに参加させられるところでエンディング。正直、どうなったか不安で仕方ない終わり方でした。


Ep:D
運営の男(ディーラー)が考えを変えたら?というif。全体既読率の10%程度の文量しかない短めのシナリオ。

トゥルーなのにご都合主義的にほぼ全員を生存させなかったことはびっくりしました。そこは良くも悪くも前作とは趣向を変えてきたと感じました。
半分くらいのキャラが凄い勢いで死んでしまったため、プレイ中は口が開きっぱなしになりました。まさか、悠奈が生き残る√が一つも無いなんて…と。いまだにショックがデカいです。

エンディングについては、シークレットゲームに繋げてくるだろうと薄々は感じていたので、オチはそう驚くものではありませんでした。
が、シークレットゲームでも文香が生き残る確率が割と低い(2/4)ということもあってか、さらにエンディングの虚しさを加速させてしまいました。

個人的にEp:C・Dの不満点は、ルール・運営(の男)そのものに集中しています。ルールについては運営側はルールを想像するのもプレイヤーがやらなければいけないことだと言いますが、ここまでたくさんリピーターがいて、島に遺留品が残っていて、ようやく伏せられた部分のおおよそが見えてくるレベルです。2ndに移行しなければゲームが終わらない、などという伏せられたルールにさらに追加で伏せるというのは参加者に対して流石に不誠実だと思います。
運営に関しても、瞳は運営側であるのでまだ様々な口出しをされる立場なのはわかります(それでも、直接の殺害指示はおかしいと思いますが)。
しかしそれを瞳だけに留まらず、ただのリピーターである悠奈やはるな、Ep:Dに至っては全プレイヤーに対して行う展開は、流石に反発する読者も多いかと思います。実際、私自身もここまで運営側が私情に走ってゲームに口出しする展開はデスゲーム作品としてどうかと感じました。しかし、前作と同じくその運営側の取り乱しっぷりも含めて客に対する見せ物だった、というオチにするためにはこうするしかないというのも頭では理解できています。ただ、ライターがやりたかったことを頭で理解できるかと、それを面白いと思う心は全く違うと思います。今回は理解できても感情では面白くないと思いました。



その他
・OP、ムービー
ぐるたみんを起用している作品の存在は知っていましたが、この作品とは知らず聞いてびっくり。
あと毎Epに出来の良い予告ムービーが存在しており、次のシナリオへの期待を煽っていたのが良かったです。


・絵
パース崩れがあるとか、一枚絵と立ち絵を比較すると顔が別人だとか、ブレザーの作画がおかしいとかのツッコミ所はありますが、前作より好きです。
女性陣はまだ全体的に安定していたと思います。男性陣、特に真島と修平は…


・前作と比較して(さらに個人的な意見が含まれます)
改善された点は
・作画
・キャラクター
・声優
・テキストの読みやすさ
・主人公の行動理念に早い段階で納得がいくようになったこと
・知り合い同士が増えたことでよりドラマチックになったこと
・群像劇風になり主人公と複数ヒロインを中心に描く形式ではなくなったため、恋愛要素も含め様々な組み合わせが描かれるようになったこと
です。

悪くなった点は
・“ゲームの存在や他キャラ以上に非現実的すぎる”瞳の設定
・リピーターが多すぎること
・読者に開示されているPDA と、シナリオ上でキャラに開示されているPDAとが全く同じではなく、ルールの穴ではないところが穴に見えてしまうこと(例えば、1stのはるなは「他のプレイヤーに対して3回以上危害を加える」という条件だが、私たち読者から見えるPDAには「この内容を知った者に危害を与えても条件達成にはならない」ということが記載されていない等)
・ルールの穴を突く展開が大体最序盤とクリア手前の時にしか無いこと
・トイレ、風呂、PDAのバッテリーについてはほぼ一切触れられないこと。特に10日程度続いたEp:CのPDAの電池がどうして生きてるのかが全くわからない。
・私たち読者が単なる一読者になったこと(選択肢、bet機能等なしの完全一本道になった)
です。



総評
前作(SG)、リメイク前(SGCR)、今作の全てでシナリオライターの変更があったと聞き、身構えてプレイし始めました。しかしそれも杞憂に終わり、基本的に最初から最後まで先が気になり楽しめた作品でした。前作と今作ではだいぶテイストが異なるため、前作が受け入れられなかった人にこそやってほしい一作です。

前作はデスゲームとしての下地やその巧妙なルールの抜け道を突く展開は良いのに、肝心要な主人公を含めたキャラ描写の薄さと運営側参加者の各種暴挙がダメだと感じました。翻って今作はキャラクターの立たせ方は良いものの、後半Epはゲームとして完璧に破綻している(意図的に破綻させられている)展開なのがダメだと思います。
優先するのがデスゲームの基礎ルールなのか、キャラクターなのかでシリーズは同じでも受け入れられる人種が全く異なってくる作品達でした。

Switch版は初期版移植なために悠奈の過去編が欠けていることを除けば、美少女ゲーム×デスゲームとしてはかなり満足です。