ErogameScape -エロゲー批評空間-

no-attさんのシークレットゲーム KILLER QUEEN for Nintendo Switchの長文感想

ユーザー
no-att
ゲーム
シークレットゲーム KILLER QUEEN for Nintendo Switch
ブランド
イエティ
得点
62
参照数
160

一言コメント

同人・18禁版未プレイ。ルール有能、運営無能なデスゲーム作品。デスゲーム作品に触れたことない方にはオススメ。複雑に入り組んだルールの穴を突く展開には驚かされるものが多かったが、その分運営側の介入の多さと無能さが気になってしまった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作品への好感度   D(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 D(S・A〜E)※全体的にややチープ


各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
プレイ順:Ep1→Ep2→Ep3→Ep4
評価:Ep4>Ep3>Ep2>>Ep1


Ep1
可もなく不可はそれなりという感じの話。
プロローグ的なシナリオで、基本ルールに則って行われる唯一の普通のデスゲーム。

基本ウジウジしている√ヒロインにも、意図的に過去や心情が伏せられているだろう主人公にも魅力を感じなかった上、ほとんどのキャラの割り当てられた数字と運営側参加者(ゲームマスター)がEp1という超序盤でわかってしまうため、ルールを聞いた時のワクワク感は次第に損なわれていってしまいました。

個人的には「運営側の権利を使える」運営側参加者がいるデスゲームは嫌いなので、渚はともかくとして郷田には落胆させられました。他のEpでの彼女も大抵酷いものでしたので、このEpだけの欠点ではないのですが…


Ep2
Ep1で、生きるためとはいえヒロインに許されるかどうかわからない程度には惨たらしい行為・変顔をしていた麗佳がメインということで心配していました。
相変わらず主人公の行為には納得できないものも多かったのですが、人を信じられなくなっていた麗佳が徐々に仲間達に心を開いていく姿が良かったです。しかし麗佳の過去に触れるシーンなどはなく、結局どういう生い立ちで普段はどういう人なのかが分からずじまいで、魅力的なヒロインになったとは言い辛かったです。

個人的に好きなシーンは手塚がルールの穴をついて外から主人公達のいる部屋に手榴弾を投げ込むシーン。安全地帯であるはずの戦闘禁止区域を、そういう解釈で戦場にするのかと驚きました。そのイベントの際の葉月の決死の覚悟も良く、カッコよかったです。

ゲームの内容自体については追加ルール(エクストラゲーム)の存在はまだ許せたものの、今回も郷田が最悪。
主人公達の必死の努力が、郷田に手助けされて助かった感満載になってしまっていたのが引っかかりました。彼女が運営側の権利を使えるのは現地でのゲームのバランス調整係も担っているからなはずなのに、その調整の手腕の雑さに驚きました。

運営側の立場としてはスミスくんが新たに登場しましたが、これなら運営権を使えるのはスミスくんだけで良かったのではと思いました。


Ep3
渚√ +かりんエピソード。
渚に関しては、初回ゲーム以降の描写がもう少しあった方がよりドラマチックになっていたのではないかと思いました。
かりんに関しても、ここまで引っ張ってきた割にはかりんとかれんのエピソードがほぼ端折られていて、肩透かしを食らった気持ちでした。親がいない、金がない、放っておけば妹が死ぬ、などの情報だけ語られてそれ以上の掘り下げもなく、挙句に顛末が語られなかったことは少なからず失望しました。

デスゲーム自体は後半は運営に参加者が牙を剥くタイプのシナリオだったので、そこの部分は面白かったと思います。やはり郷田という存在そのものはムカつくけれど、そのムカつきを糧にシナリオが面白くなったと感じました。


Ep4
とうとうデスゲームの枠から大幅にズレた解決編。このシナリオがやりたいがために今までのシナリオがあったんだろうなと思いました。ヒロインは今まで死体でしか存在を確認できなかった優希とEp1以外に出番が無い咲実。この2人と主人公の関係に突っ込む話はかなり良かったです。特に最後のエクストラゲームをするかしないかの時にぶちキレた咲実のシーンが好きです。

また、各々に割り当てられた数字もきちんとショーが成立するように仕組まれていたことがわかり、Epごとに変更がなかった理由に納得行きました。本来のゲームで展開される予定だった優希と主人公と咲実も見てみたかったです。

最後はやや文香無双が目立ち、かれんや麗佳にあまり出番がなく残念でしたが綺麗にまとまって良かったと思います。長沢にも救いが欲しかったです。


その他
・絵
基本はいわゆる昔の萌え絵であり、パース崩れや癖がある絵柄。
若い女性の絵は比較的良いものの、それ以外の男性や年齢差を感じるようなキャラクター、武器を構えるなどの難しい構図は全体的に不得手なのだろうと感じました。高山と手塚は絵ごとに人相が違いすぎます。


・BETシステム
CS版のみの機能。生き残ると思われるキャラ1人に任意のタイミングでチップを賭けることができるシステム。デスゲームを参加者(主人公)の立場から体験・解決するのではなく、その姿を鑑賞するだけの作品である本作と噛み合った秀逸なシステムだと評価できます。

しかし賭け事をしている私たちプレイヤーがどこの立ち位置なのかがハッキリしないのはモヤモヤしました。BETの説明やBADシナリオを読む限りではプレイヤーはオンラインで賭けに参加している一般客という立場なはずなのですが…
デスゲーム作品や美少女ゲームはどちらかといえば一人称視点で進むことが多い作品形式ですが、本作がやや心情描写が薄く、三人称視点寄りなのはこのシステムがあるからだろうとはずっと思っていました。

しかしこのシステム上でキャラクターが死んだ(Death)と判定されるタイミングが、
・主人公が対象が死ぬ瞬間を目撃した時(Ep4長沢等)
・主人公が対象の死体を発見した時(Ep2・3の咲実等)
・主人公が存在していないか意識を失っている状態で、その他のキャラクター視点で対象が死んだ時(Ep2の高山等)
・対象の死について誰にも触れられない時(Ep3の葉月)
など、とにかく状況がバラバラ。渚のカメラとは別に各所に監視カメラもきちんとあるはずなのですが…
プレイヤーがキャラクターが死んだかどうかをBETシステムで先んじて知ることができたら色々マズイのはわかるのですが、客側という立場とプレイヤーとの立場の差でコンセプトが噛み合っていない感じがしました。

また、一度でもBETするとトゥルーに行くことが不可能になってセーブデータを消してやり直しせざるを得なかったり、トゥルー状態と100%既読状態を両立できなかったりなどの問題も目につき、18禁版で消されたシステムであるというのも納得でした。


・おまけ
声優コメントやNGボイスなど様々。麗佳の声優さんのコメントが謎に豪華で、ぶっちゃけ笑ってしまいました。



総評
デスゲーム作品というより、「デスゲーム風」のショーを主題にした作品。Ep1・2はそれぞれ別の理由でデスゲーム作品として微妙、それを飲み込んだ上で3・4を見れば純然たるデスゲーム作品かどうかは怪しいけどそこそこ溜飲は下がる、といった感じのシナリオでした。

ルール自体がかなり秀逸かつそのルールの穴を突く展開も面白く、その辺りでは満足度が高かったです。しかしどうしても運営側の介入が露骨な点だけは納得がいかず、そこを変えるとシナリオが根本的に変わってしまう、というジレンマが凄まじかったです。

キャラについても、その場その場の関係性や行動は上手に描かれていました。しかし各キャラのバックボーンがほぼ説明程度で掘り下げも浅く、キャラが死んでも悲しさを感じないことの方が多かったです。長沢あたりはもう少しどうにかできたと思います。

色々楽しかった所も多かったけれど、その分同量の不満が溜まっていってしまったので、次作のリベリオンズに期待しようと思います。



蛇足
同人版の題名、および本作の副題は「キラークイーン」で、Ep1〜3のOPでも「Qを殺すかどうか」が大切そうな題材に見えます。
しかし実際にはAである主人公がQを殺すかどうか迷う、殺さずに済む方法を探す、などといった題材が扱われたのがEp1と4くらいというのは……