シリーズの中でも個人的には苦手な作品の後日談系FD。本作の主人公のダル(シュタゲのキャラと同一人物)については不満の方が多い。本作の女キャラにセクハラしたり、前作主人公より活躍してるシーンが長かったりなど作品乗っ取りめいたことになっていた。好きになれそうな展開も多かっただけに、とても残念な気持ちになった。
作品への好感度 E(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 E(S・A〜E)※FDなので
前置き
各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
プレイ順:共通→フラウ→淳和→愛理→昴→綯→あき穂→last
評価:昴>>last>あき穂>>>愛理>フラウ>綯>共通
評価不能なほど良くなかった:淳和
共通
前作ではこちらのやる気を削ぐくらい興味のないことに対してはやる気のなさを披露してくれた主人公・海翔が、今作はやる気がなさそうなダルに対して怒っていたのが印象的でした。その海翔を筆頭に、前作でのイベントや本作までの空白期間を経て変化したキャラクター達の姿が描かれていて良かったです。
昴やフラウは態度が軟化し、淳和や愛理は表情が柔らかになり、大人組もロボ部への当たり方が優しくなりました。あき穂と海翔の距離感の変化の描写も良かったです。
ただ本筋の君島戦は全体的に弛緩した雰囲気なのに、急にフェリーが爆発して暴動が起きるなど緩急のつけ方が雑でしたし、それに加えて敵の君島が人格崩壊しているのでなんとも言い難いです。
ラストのオチ(ダルの妄想投影)はシリーズで1番気持ち悪い展開で最悪でした。似たようなのは別作品にもありましたが…
フラウ
男キャラが腐ネタをしたりヒロインが腐女子だったりする美少女ゲームは多いですが、そんなノリとは若干ズレたBL的シーンがあるので苦手な人は苦手な話だと思います。私もこういうのはあまり得意ではありません。
フラウの話としては前作より面白さが弱く、おふざけシナリオとしてはBLに頼りすぎて笑えない、という感じでした。
淳和
この話で淳和と仲を深める役に海翔でも昴でも他のロボ部でもなく、なぜかぽっと出のダルが居座っている違和感。
外から来た旅人が、そこに住まう人々に影響を与える話は数あれど、同じシリーズとはいえ作品を越境してくる形でそれをやられても困ります。
次第に淳和もダルにだけ見せる表情が増えてゆき、挙句の果てには「……あたしもいつか、橋田さんのような人に巡り合えたらいいな……」などと淳和に言わせるのだから気分が悪い。淳和には是非ともいい旦那を見つけてほしいですが、ダルに対しての恋愛匂わせみたいなノリは本当にやめてほしい。今後も。
昴のプレアデスとしての活躍や淳和の抱える問題の乗り越え方は読み応えがあって良かっただけに、ここまでダルをヨイショする必要はあったのか疑問に思います。
愛理
なんちゃってアイドルもの。こういう全員で壮大に勘違いし続ける(させ続ける)話は元々苦手なので、ダル関係なしに苦手な話でした。
身体だけは実年齢通りになってしまった愛理が将来に思いを馳せたり、海翔に対する淡い恋心に決着をつけたりするという方の話は好きだったんですが。
昴
昴と昴の父親の数年に渡るすれ違いにようやく決着がついた良エピソード。前作でも色々なことがあったのに、それだけでは問題解決にまで至ってないところがリアルで好きです。
驚くような展開や捻った要素はないですが、きちんと父親へ解答を出した昴と不器用な父親、それを見守る海翔とダルの雰囲気が良かったです。
綯
祭からは離れて綯の昔話+海翔の年上コンプレックスに踏み込む話。
ラボメンを綯目線で振り返ったり、どうやってJAXAに入ったのか等の綯の昔話くらいしか面白い所がなく、VSプリースト4は前作で死んだ瑞榎のグラフィックをした別人が歩き回るわ、海翔は足手まといにならないと決意した後すぐに足手まといになるわでガックリ来てしまいました。
ダル無双がなりを潜めただけで、だいぶ読みやすかったことは確かですが。
あき穂
海翔とあき穂が、あき穂とみさ希がそれぞれ未来に踏み出した話。みさ希については描写が少なく、もう少し言及が欲しかったです。
海翔とあき穂はこのシリーズ内で唯一メイン√で彼氏彼女になったことが明言されたカップルなので、素直に祝福したいという気持ちにさせてくれました。
last
「何度だって世界を救うのはオタクだ。」というキャッチコピーがありますが、今回活躍するのはロボオタク…というよりPCオタク(ハッカー)の割合が圧倒的に多かったです。今回の相手はロボットではなくAIだから仕方ないですが。
やはりこの作品の主人公は海翔ではなくダルなんだなあ、とこの√を見て思ってしまいました。そもそも海翔もロボットオタクではないので、そこはもう目を瞑るべき所ではあります。
ED後の映像は次回作か何かに関連するシーンなのでしょうが、こう何度も半年間で計画を失敗している君島コウをまた引っ張り出しても、これ以上面白いものが得られるとは思いませんが…
その他
・分岐
前作の読み心地を損なうレベルに酷い分岐方法が変わって良かったです。
・ダルの主人公化
ダルがいること自体は前作に出てこない、かつ主人公達から年齢が離れている島外のキャラクターの視点が入ることによって話が膨らむのは良いことだ、とプレイ前は思っていました。
しかし、いざプレイしてみるとこのキャラクターは「既婚者子持ち男性」かつ「一般向けゲーの主人公(視点の8割を担当)」としては最悪に近いキャラクターであると実感しました。逆に言えば、学生の立場でサブキャラのままだったらもう少し許容できていたと思います。
ダルの精神性は「二次三次を問わないキモオタ男性」としてシュタゲ無印時点でほぼ完成してしまっていたので、無印・0での出来事がほとんどなかったことになっているだろうSG世界線で性格が変化していないのは当然なのかもしれません。
ですが、嫁も子供もいるのに知り合って間もない見た目子供の子にセクハラ発言をしたり、水着を裸と錯覚させる穴あきコラージュで勝手に遊んだり。極め付けは共通√最後のハーレム妄想シーン。妄想とは言え淳和に服の下触らせてるのが気持ち悪い。
二次元にニヤニヤするならともかく、同じ次元の人にやる行動としては彼のすることなすことが最悪すぎて言葉を失いました。
手を出してないから、そういうネタだから、弁えてセクハラしているから、こういうキャラだから、嫁と子供を愛しているから…などの本人や制作側の言い訳は通用しないと思います。これがmages.の考えているキモオタ・変態紳士像なんですか?わかりません。
それに加えて前作主人公を押し退けて女子キャラと絡んだり、目立ったり、様々なキャラから持て囃されて褒められまくったりするのも、メアリースーみたいでキツかったです。
昴・あき穂ルート、ラストフェーズのような活躍の方向なら全然良かったんですが、他のシーンが基本的に酷いだけに高評価しづらいです。
総評
キャラクターたちのコミニュケーション不和と、作中のメインコンテンツであるロボットに対する主人公の興味の無さから来る、「科学部活青春モノ」としての楽しい面をあまり感じられなかったことと、オチの尻すぼみ感で個人的には低評価となった前作。
その続編(FD)である本作は、本筋の出来の良し悪しに関わらず、プレイ前は期待していたはずの越境キャラであるダルが気持ち悪いという一点で不快な作品という感想になりました。
オカン未完成版発売、カオチャLCCうき√削除、シュタゲのメディア展開の乱発やアノコ延期し放題状態だったことから察するに、シュタゲ要素を無理矢理にでも入れないと売れない所まで来てしまっていたのでしょうが…今後この作品のように、各作品の線引きが下手な作品を作るのはやめて欲しいです。