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no-attさんの悠久のティアブレイド -Fragments of Memory-の長文感想

ユーザー
no-att
ゲーム
悠久のティアブレイド -Fragments of Memory-
ブランド
オトメイト
得点
85
参照数
53

一言コメント

ロボ×乙女ゲーのFD。FDで欲しかったもの全てが、これに詰め込まれていた。世の中のFDはかくあるべしという感じ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作品への好感度   S(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 D(S・A〜E)

各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
プレイ順:シュド→クレイドル→ロウ→ヤジュル→アタルヴァ→真ルート
評価:真ルート>アタルヴァ>ヤジュル>シュド>ロウ>クレイドル


シュドアフター
まさかまさかのティアブレイドの指輪投棄、主人公機自爆、住処まで追われるという展開には開いた口が塞がらなかったです。あの希望に満ちた前作EDからこの話に繋げたことに対しては、褒めるも貶すもなしにただただ驚いてしまいました。甘々な展開はどこへ…


クレイドルアフター
やはりというか、二つに分かれたシナリオでありながら、その二つの流れが基本的に同じで、薄味。好きなキャラクターなので残念です。
また、擬似人類を作る技術で、イヴの脳と脳幹を収められるボディを作る(擬似人類ではなく本当の人間になる)ことはロウもアルカディアも不在の今は不可能なんじゃないか?と思いました。シュドアフターの後のせいで、なんだかご都合主義的なノリを感じてしまいました。


ロウアフター
3000年前の話に完全に決着がつく話。演劇関連のすったもんだは、他の考えさせられるシナリオと比べるとチープさが勝ってしまっていて残念。ギルからイヴへ、イヴからイヴへの流れや必ずいつか忘れてしまう3000年前のあの日々を記録に残そう、という流れ自体は好きです。


ヤジュルアフター
純粋無垢なイヴが、少しだけ世界は綺麗ではないことを知る話。汚いところを見せすぎない配慮をするヤジュルは、本気でイヴのことが好きなんだなあと思わせられました。

チャラい方の騎士ヤジュルも見たかったので、そこは見れずじまいで少し残念でした。


アタルヴァアフター
主人公イヴとアタルヴァの精神耐久試験みたいなお話。前作アタルヴァルートは話の終了時点では一番ひどい状況(ロウ・ヤジュル死亡、クレイドル故障、リグとの約束も果たせぬままend)だったため、こういう展開になるのはある意味当たり前だったんではないかと。ともすれば情けなく映ってしまうような不器用キャラであるアタルヴァが、イヴのためと頑張る姿がよかったです。ロウ(のナノマシン)がアタルヴァの味方をしたシーンでは思わず涙。


真ルート
色々な時代での掌編と、真ルートアフター(エクリプス)。掌編については3000年前の話から前作の幕間、今作の過去編まで色々あり、読んでいてとても楽しかったです。特にエルゼの出番が多かったことがとても嬉しかったです。喧嘩殺法の品のないエルゼちゃん可愛い。

エクリプスそのものについては短い!と感じてしまいました。多分もっとこの世界に浸っていたかったのもあるし、分岐作るくらいなら一本道でもっと重厚な物語が見たかったです。そして終わり方にも結構不満が。問題先延ばしエンドは個人的に苦手なので…
ヤジュルやエリシオンの意見が作中じゃ正しくないことにされてしまったのが割と微妙。

姉イヴと妹イヴの子孫が出会う展開自体はワクワクするのですが、結局元凶を探ると…となりました。そういう意味では、ロウも姉イヴも為政者ではなくただの若人なんだなあ、という方向でキャラの理解は深められたのですが…



総評
文句をつらつらと書いたものの、FDとしては大満足レベル。楽しい日常、語られなかった物語、過去の回想、物語のその後…そのどれもが見たいシナリオの断片だったため読む手が久々に止まりませんでした。恥ずかしながら乙女ゲームに拒否感があった私ですが、ここまでハマってしまいました。またこんな作品に出会いたいものです。