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no-attさんのCHAOS;CHILDの長文感想

ユーザー
no-att
ゲーム
CHAOS;CHILD
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
100
参照数
294

一言コメント

くそったれなゲームでした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作品への好感度   S(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 B(S・A〜E)※カオスヘッドをやっておいた方が、話にすんなり入れるがカオスヘッドが人を選びすぎるため。


前置き
科学ADVシリーズのネタバレを含みます。また、何かとシュタゲ・カオヘと比較していますのであしからず。

各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
プレイ順:共通→香月→うき→雛絵→来栖→TRUE
評価:共通・TRUE>>来栖>雛絵>>うき=香月


共通
事件を追っているつもりでいて、事件に追い立てられていたというOPの歌詞通りの展開に持って行ったのは本当に上手かったと思います。

特に8、9章に関しては胸を締め付けられました。科学ADVではあまり目立たない親友枠がめちゃくちゃ目立っていると思ったらこれでした。カオヘの三住は言わずもがな、シュタゲ本編のダルも鈴羽編以降はフェードアウトしたみたいなものでしたし。

作中イベントが主人公の周辺のみでほぼ完結しているのは、シュタゲ(ゼロ除く)においてはある意味欠点でもありましたが、これは“そういう物語”であるということも最終的には理解できました。
全ては主人公のためのゲームなので、彼が推理できないような外的要因はゲームマスターにとっては必要ありませんし。

また、主人公・宮代拓留についても前作主人公・西條拓巳ほどオーバーな味付けはされておらず(妄想は拓巳並にトんでるが)、
適度に「嫌なオタク(自分はリア充だと思っている)」感が出ているのが良かったです。多分本当に嫌いだと思った人もいるだろうし、私みたいに多少シンパシーを感じた人もいるのだろうという、良き賛否両論主人公でした。

ノーマルエンディングは、わたしにはちょっとよくわかりませんでした。TRUEにもきっちり繋がりませんし…


来栖√
彼女がずっとついていた嘘についてのお話でした。拓留や尾上が来栖乃々(南沢泉理)に対して派手に周りを巻き込んで感情をぶつけなければ、ここまで綺麗に家族としての関係を修復できなかったのかなと思えたお話でした。
また、作品内時間では再起不能だと思われた伊藤が、唯一完全復活したのが嬉しかったです。


雛絵√
かなりキツかった。推しキャラの精神崩壊エンドは某フロントウイング製のゲーム時点で懲り懲りでした。ただ、OPの歌詞にあった「恋をして・キスをして」を唯一完遂していたのは見事です。


うき√
ありきたりな話(カオヘLCC的ノリ)ですが、うきがかわいい話。
個別では1番泣いてしまいました。小さい子が頑張ってると最近はなんか辛くてダメです。
彼女の√は個別最多の6つもあった理由がいまいちわかりません。また、Another sky endだけ終わりがいつもの尾上世莉架の台詞じゃなかったのが気になります。しかし特に本編に答えがないのがなぁ…
なかなかに消化不良なルートです。LCCではヒロインから外されるそうですし…


香月√
超!強い!力士シール!
これだけ完璧に毛色が違う、青少年が大好きなギガロマニアックス怪獣頂上決戦みたいな話。何気に周りの人間の死人が1番少ない話なところや香月が可愛いところ、西條拓巳がかなり出張ってきていたことは高く評価しています。


TRUE
共通から派生し、来栖が尾上に刺されるというイベントは同じだけど死なないというところから派生した本編のアフターストーリー的話。(来栖√はここまで派手にざっくりやられないというところからの派生)

ここからは今まで私たちが見ていた物語を、何も知らない情弱高校生・尾上世莉架の視点から見るという想像していなかった展開でした。拓留の昔嫌った情弱(≒何も知らない大衆、≒情強だと自負していた自分)と同じような思考回路を持ち合わせるようになっていた尾上を見た拓留は、これで良かったのだと思っていることでしょう。


しかし事件のゲームマスターであった尾上は、生みの親である拓留も含めほとんど全員から、そして社会からも実質的に赦されました。ここは主人公の性格以上に皆色々な意見があるかなと思います。

“CHAOS;CHILD”は尾上のエゴで始まった物語だと思っているので、私はまだ尾上を許せないでいます。拓巳も拓留もそうですが、妄想するのは自由なのです。重要なのは、それらの妄想に忠実に行動しないことなのです。それらの妄想が本人の預かり知らぬところで勝手に具現化されてしまったら、果たしてそれによる結果は妄想した本人の責任と言えるのでしょうか。

それは違うと私は思います。始まりはそうであったとしても、拓留自身に十割責任を負う必要性はないと思いますし、反対に尾上が一切の責任を負わない理由もありません。
ただ、拓留はこの選択・結末で納得したのがこの作品においては重要なポイントです。

拓留本人は一連の事件を全て自分の責任とし、尾上との共存の道、即ち彼女と一生交わらない道を選択しました。その選択と自分は情弱であるという考え方をできるようになったこと、そして自分のミスをなかなか認めたがらなかった彼が素直にミスを認めたことは、彼は成長したということのあらわれです。

最後には、拓留は疎ましく思いつつも愛していた仲間からも、あんなに執着していた情報からも隔離され、馬鹿にしていた大衆からも少なくない批判や誹謗中傷を受けたことでしょう。それでも、彼はこの結末に納得しているというのが彼の成長を物語っています。

カオスチャイルド症候群の真相については、8章の顛末以上にびっくりしました。私たちが見ていた彼ら彼女らは、そこの世界に住う人から見た彼ら彼女らとは全く異なるものでした(そしてこれエロゲだったら100%炎上してたと思った)。
カオヘでは、キャラたちが通う学園である翠明学園はギガロマニアックスをかき集めるための学園でした。今回の碧朋学園もそんな感じ(震災被害者とそこから発生したギガロマニアックスを集める学園)だと思っていました。そのせいもあって思いっきり騙されました。
学園にスロープや手すりがやけに多く、作中キャラのほとんどが体力的に常人のヤンキーや佐久間より劣っており、カオヘの将軍のことを少しでも考えれば思い至れたのかもしれませんが…。


その他
・マッピングトリガー
1周目以外は正直不必要なトリガーです。シュタゲ無印のフォーントリガー分岐より悪質なものでなければなんでもいいのですが…

・絵
カオヘから狂気性を抜いて、萌え要素が大幅に足されており、より一般的な萌え絵になりました。個人的には大変好みです。

・ホモ要素
やけに多かったです。拓留が本質的にホモじゃなきゃ、一応女性ファン向けにやってたんですかね?


総評
長々と書きましたが、とてつもなく「くそったれ」という感想が似合うゲームでした。
私の好きな橘結衣は、惨殺され死亡したままです。私の好きな伊藤真二は、心身そして社会的にまともに復帰できるまでに何年要するのでしょうか。私の好きなヒロインたちは、普通の人間のように幸せに長生きできるのでしょうか。

決してTRUEが幸せなエンディングではないゲームです。ハッピーエンド至上主義者の私はゲームをクリアした後しばらく経っても、未だに打ちのめされています。
ただ、少しでもこのゲームが気になったら、自分の主義など捨てて是非やってほしいと思います。



追記 カオスチャイルド症候群について
そもそも尾上が現れなければ、カオスチャイルド症候群患者のほとんどはあのままでしょうね。
西條拓巳はこの老化現象について理解はしてるようですが(香月√)、「委員会」との戦いに目が向いてるようですし。そもそも西條拓巳自身がこれをノアIIのせいだと思ってない可能性もありますが…うーん。
カオヘLCCエピローグでは、普通に翠明学園はプレハブ校舎とはいえ再開されたようですし、あそこにはカオスチャイルド症候群患者はいなかったってことなんですかね。
カオヘギガロマ面子が拓巳とあやせ以外行方知れずですし、そのうち誰かは症候群について調べてたりして。