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no-attさんのSTEINS;GATE 線形拘束のフェノグラムの長文感想

ユーザー
no-att
ゲーム
STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
70
参照数
162

一言コメント

シュタインズゲート公式アンソロジー作品と割り切って楽しみましょう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作品への好感度   D(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 E(S・A〜E)※シュタゲFDのなかで1番やらなくても良い


総評
各10話+隠し1話の構成でそれぞれライターが違う(一部同じ)作品なため、公式シュタインズゲート二次創作作品みたいなものだと思うことにして楽しみました。ただやっぱり、作品ごとの空気感やCGの絵柄に統一性がなかったのが結構辛かった部分です。

シュタインズゲートの世界観は、キャラの見た目くらいしか大きく共通しているのものがないという良い方にも、あるいは悪い方にも持っていける性質を有しているため本当に評価に困る作品です。

以下各作品の感想です。(◎>〇>△>×)

〇走査線上のジキル
多分他の人にとってはこれが一番評価が高い作品なのではないかと。狂ってしまった岡部を個々人がいつか岡部が立ち直ることを願って見守っている様が脳内にありありと思い浮かぶような、そんな作品でした。
ただ「ラウンダーにはシノギ制度がある」設定に関してはここだけしか出ていないので、この情報は覚えておくべきなのか否か…

△絇爛仮想のファムファタール
橋田(阿万音)夫妻の馴れ初め話。マンホール、東京のはそうなってるのか…と必要なのか必要ないのかわからない知識もゲット。しかし本編外の2人の出会いの話をされても…という感じです。

◎黄昏色のソーテール
マイフォークの裏話。一本目のジキルと併せて、唯一本編内に組み込めそうな展開のお話。本編でも印象的だった「紅莉栖のマイフォーク」や謎だった「フェイリスパパとドクター中鉢、橋田鈴の関係」に触れられており、まさにこれが私がフェノグラムに求めていた話でした。

〇幽霊障害のランデヴー
鈴羽がいっぱい!な話。鈴羽の周りに鈴羽にしか見えない鈴羽が2人も存在してしまった(側から見ると透明人間が2人いる状態)という状況は、唯一のタイムトラベラーである鈴羽に起こった異変としてはあり得るものなのではないかと思えました。
そもそもタイムトラベルした人の体に、何が起こるかなんて私たちにはわかるはずもないので…

×雨鈴鈴曲のスクレイパー
天王寺親子とビルのお話。父子家庭の母親の問題ってこう…ギャグにして軽々しく扱う話じゃないと…思うんですが!ギャグにしたわりには別に母親に触れた話題が出るわけでもなく…という
岡部にビルの一室を貸し渡した時の回想はよかったです。“失敗した”世界線ではこの話はなかった可能性がありますが(鈴からの手紙があるためもう少しすんなりと入居したことも考えられます)、そうじゃない時は大体こんな感じだったんだろうなと思わせてくれる話でした。

△桃色幻都のシャ・ノワール
百合オタクなので百合エンド作品については高評価ノーコメントとしたいところですが、このライター、フェイリスに対する解像度だけガタ落ちしてる気がするので評価に困ります。本心を曝け出す=幼児退行みたいな図式はちょっと…

〇迷宮錯綜のヘルマフロディトス
本編のルカ子エンド補完かと思いきや…な作品。普通にルカ子エンドに行くと思ったら、突っ切って岡部を立ち直らせてしまって驚きました。ルカ子とともに何度も廃人手前の岡部を見るのが辛かった一方、冷静に一緒に手伝ってくれる紅莉栖の存在をさらに頼もしく思うことができました。

◎悠遠不変のポラリス
本編トゥルーエンド、もしくは紅莉栖エンドの補完…かと思っていた時期が私にもありました。
まゆりが岡部への恋愛感情に完全に自覚した後の心象風景や人質卒業宣言、まゆりのDメール送信シーンは涙無しにプレイできませんでした。本編フェイリスエンドと同じくラボメン同士が邂逅しない、誰も知らないマイナス世界線へ行ってしまいましたが、もしかしたら各ヒロイン全員の本当の意味での個別エンドがあったとしたら、マイナス世界線なのでしょうかね…

◎昏睡励起のクアンタム
萌郁の掘り下げ。本編世界線だと萌郁内の好感度はFB>ラボメンのまま終了してしまいましたが、これが逆転したら?という想定のお話でした。岡部の萌郁への対応も基本的に自然体なため、α世界線ではあるものの本編の外の話なのでしょう。ラボメンとメル友になるレベルまで仲が深まっていれば、萌郁なら間違いなく心が揺れていたでしょうしね。

×三世因果のアブダクション
初の4%台世界線。「タイムリープ×過去を変えられるメール」がある世界観なので、それを生かしたミステリ系をやりたかったであろう作品。序盤中盤はガチシリアスなのに終わり方はギャグっぽく、なんだか締まらない話だなと。新キャラ、謎、行っては戻っているような世界線変動など色々とありましたが、個人的にはフェノグラム中最も面白くない話でした。
借金返さないと岡部が沈まされるところも重要な話だったはずなのに結局300万円どうするねんというところで問題放置、ギャグで締めるという…思わず「は?」となってしまう作品でした。

◎月暈のビヴロスト
隠しシナリオ。これが一番面白かったです。一連の事件のその後の当事者とそうでなかった者の話としてよく纏まっていました。
電話レンジを作り直していたダルと岡部の思惑がわからない以上、ダルが送りたかったDメールの内容がわかりません。そのうえ、フェノグラム共通の演出である最後のダイバージェンスメーターの表示演出もなかったので、話の真相は謎に包まれています。しかし投げっぱなしエンドというわけではなく良い「その後や真実はみなさんのご想像にお任せします」エンドだと思います。