アニメ版未視聴(プレイ開始時)、初key作品。いわゆる泣きゲーに該当するものの、本質は友情ゲー。本気で泣いてしまっただけに、色々惜しいところが目につく作品だった。
作品への好感度 S(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 A(S・A〜E)※恋愛要素いらない人はアニメ版をおすすめします。
前置き
感想文中、『グリムガーデンの少女(COSMIC CUTE)』について多少触れています。ネタバレの範疇外だとは思いますが注意をお願いいたします。
各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
プレイ順:共通→鈴→小毬→三枝→来ヶ谷→クドリャフカ→美魚→鈴→Refrain→Refrain(鈴と恋人)→クド2→来ヶ谷2→二木→佐々美→沙耶
評価:共通>Refrain>>>二木>>クドリャフカ>来ヶ谷>>美魚>>佐々美>>>沙耶>小毬=三枝
評価不能:鈴
共通√
ランダム要素があるミニゲームが多数存在し、シナリオ自体のボリュームと比較するとかなり時間を吸われた印象です。ミニゲームの評価は後述しています。
条件達成(ルートクリアなど)や選択肢によるイベント内容の変化が昨今のゲームより多く、そちらでもかなり時間を取られました。
内容については突飛だなと感じる部分がありながらもリトルバスターズの面々でワイワイするのが楽しく、ずっとこの温い空間に浸っていたいと思わせてくれるような話でした。
だからこそヒロインと一対一という状況になりやすく、友情話も少なければ恋愛描写もあまり満足できなかったヒロイン個別√が微妙に感じてしまった部分もあります。
小毬√
(過去に触れない限りは)良い方向にポジティブな性格であり、共通時点でお気に入りヒロインだったので最初にプレイ。
しかし実際にプレイしてみると彼女の過去にまつわる描写や問題提起も唐突で恋愛描写もあまりなく、尺も短かったため気がついたら問題解決してそのまま話が終わってしまった印象です。長く丁寧に描いてくれたら良い感想が出そうな題材だっただけに、残念だと感じました。
三枝√
お気楽系でも極楽でもなく、ただただ鬱々と騒ぐ乙女達の話。尺のほとんどが三枝と二木の喧嘩だと錯覚するくらいに2人(+α)が口論していた覚えしかないです。必要な描写なのかもしれませんが、快不快でいうと大体のシーンに不快感しか覚えず、結末含めてスカッとしないスカッとジャパンを見ている気分でした。
現代になっても1人の女に2人の男をあてがって子を産ませ、理由が理由とはいえ子どもを大人総出で虐待するなど、一介の学生である主人公とヒロインにはどうすることもできない家庭環境をヒロインの問題の中核に据えてしまったせいで、エンディングを迎えても消化不良。それじゃどうしようもないから、とヒロインのメンタルカウンセリングに終始してしまうお決まりのパターンで残念でした。個人的には、爽やか青春ものの香りが急に血生臭くなったように感じてしまい、その点でも受け入れ辛い話でした。
二木√で評価は変わりましたが、この時の気持ちは変わっていないため評価は据え置きです。
来ヶ谷√
この世界の謎が前2ルート以上に強調された作りで、プレイする順番を間違えたと少し後悔しました。ただ、共通時点ではあまり良くなかった√ヒロインへの好感度がひっくり返ったくらいには良かったです。
ヒロインとの恋愛に友人(男女問わず)が関わるような話を期待してリトバスに触れたので、前半はそれに則ったような話で他ルートで感じたような寂しさは感じませんでした。いじめネタがあるルートが多いことは気にはなっていましたが。
後半についても世界観の謎に触れられて、謎の雪や6月20日の永遠のループなど色々考察の余地があり、個人的には面白かったです。
クドリャフカ√
前半、というよりヒロインが混乱状態のテヴアに行くまでは普通のギャルゲーとしては1番良かったと思います。夢の話も、自分の居場所のなさを感じる話も、親との比較の話も割と現実味がある悩みだったので。そしてヒロインとまさかここまでイチャイチャさせてくれるとは思わず、その点でもびっくりしました。
後半は味付けがファンタジックすぎて、今までの地に足ついた話の良さを潰している気がします。美魚みたいに最初からファンタジー感を匂わせる話なら躓かなかったかもしれません。
Refrain後のエンドは理想とするクドリャフカ√の流れだったので、だいぶ評価が上がりました。
美魚√
さらにファンタジーに突っ込んだ話。プレイし終わった後も結局首を捻ったままでした。
ただ自分はその不思議ファンタジー要素を美魚が利用している、という前提で話の内容を考えているので、面白い話だったと思います。現実の美魚にも影がなかったのなら、本当によくわからないですが。
鈴√
バッドエンド連発ヒロイン。とにかく彼女は複数回ルートに入らされるのに、酷い目ばかりに合うのが可哀想で仕方なかったです。ある意味前シナリオと後シナリオの繋ぎのルートなので、評価はしませんでした。
個人的には「みんなの可愛い妹」みたいな立場の鈴に恋愛感情を抱くのが難しく、その点で困りました。恋愛話ではあるものの恋愛面をそこまで押し出さず、逃避行話にしたのは理樹を掘り下げることにも繋がったため、こういう話の構成で良かったかもしれません。
Refrain
泣けましたし悪くはない、決して悪くはなかったんですが…この作品の良い点と悪い点がここにきてさらに明確になってしまった気がします。
良かった点としてはきちんと真人・謙吾について語られたこと。特に真人についてだけは全キャラ中唯一記述量に不足も感じなかったため満足しています。絵面は酷かったですが。謙吾については古式についてのぼかしがあるため、十分だったとは感じていません。
もう一つは、恭介の葛藤がきちんと表に出てきたこと。塞ぎ込む理樹の手を掴んだ恭介が、最後は理樹に手を引かれるという一連の流れはとても美しかったと思います。
悪かった点は、やはり鈴を除くヒロイン達。
彼女達も世界の構築に携わり、各々のルートを経た後に退去しているということは作中特に重要な設定だと思います。
しかし、その辺りはサラリと流されてしまいました。忘れたくないと踏ん張っていた来ヶ谷、鈴のためにギリギリまで退去を選ばなかった小毬、Refrain後に追加で退去時の状況が述べられたクドリャフカだけは若干別ですが。それ以外のヒロインは退去時なぜ留まることをよしとせず、退去を選んだのかの納得いく描写がなかったように感じました。
世界というものの設定上、世界にしがみつくことができないにしても、理樹に執着した来ヶ谷は時間経過によって消されたのに、鈴に執着した小毬は何故か退去したくないという意志だけで世界に残れている謎。ここら辺はかなりチグハグな印象を受けました。
それに加え、理樹と鈴以外が真相を全て知っていたというオチならば彼ら彼女らがこの世界をどうしていくか、今後の顛末についてどうするかということを話すパートだけでも描写が必要だったのではないかと思います。来ヶ谷√のように理樹がみんなの輪に入れない、という夢を見ていた展開のようなぼんやりした描写ではなく。
また、トゥルーエンディングもある意味安易なハッピーエンドだともバッドエンドとも感じ、素直に最後まで感動できませんでした。
結局、そう思った理由は問題の恭介含めみんなが元気に帰ってきてしまったことに尽きるかもしれません。もちろんバス事故の悪化を食い止め、全てを救うことができた理樹と鈴は、あの世界で成長できなければ存在しなかったので虚構世界ループに意味がなかったとは思わないのですが。結局恭介中心に戻りつつあるリトルバスターズにモヤっとしてしまいました。
そうではなく、実は現実でのエンディングは理樹と鈴だけ生存しており、トゥルーは再び理樹と鈴が作り出した虚構の世界というバッドエンドなのか?とも思ってしまいました。
とにかくこのエンディング後からロックが外れる追加ヒロインの存在や、エンディングが追加されるヒロインの存在によりとてもモヤモヤしてしまう終わり方でした。
むしろ追加シナリオなぞ存在せず、この作品がここで終わっていればモヤモヤしなかっただろうとに、と思いました。
二木√
三枝√を踏まえた話。そう考えると三枝√後すぐに三枝は虚構世界から退去していなかったということになり、小毬における鈴は三枝における二木、みたいなことになるのでしょうか。
ここにきて二木の虚構世界での立ち位置がわからなくなりました。てっきり彼女は、寮長や小毬の祖父、三枝父のように虚構世界におけるNPC程度でしかないと考えていました。話的には本人が虚構世界に紛れ込んでいる(世界の成立には関わっていない?)とも、やはりNPCでしかないとも取れるものでかなり理解が難しい。
シナリオの内容については佳奈多がとても可愛く、姉妹の仲も比較的良好になっていたため満足です。オチもなんか壮大で思わず笑ってしまいました。あと、ルート途中のハンバーガーのくだりは特にツボ。
佐々美√
話自体は悪くはなかったものの、こんなに簡単に虚構世界を創られると、Refrainまでの世界の価値が軽くなっていくという点で受け入れ難い展開でした。猫一匹だとまともに世界を構築できない、というところを落とし所にしたのは理解できたのですが…
やはりファンタジーと現実感のすり合わせが微妙な作品だと再実感する羽目になりました。
シナリオの内容については、基本謙吾派の佐々美がどうなるのかわからずにハラハラする面もありましたが落とし所としては悪くなかったかと。
沙耶√
唯一の追加キャラクター。プレイ時間のほとんどがミニゲームで構築されているという特殊なシナリオ。このルートやヒロインの世間的な人気は知りませんが、個人的にはこの沙耶というキャラクターにあまり感情移入できずに終わってしまいました。可愛いし面白い子だとは思ったのですが。
状況的には「グリムガーデンの少女」という作品で「で、このラストエピソード、グリムガーデンの少女達はいつ活躍するの?」と思ったのと同じで「で、このラストエピソード、リトルバスターズメンバーはいつ絡んでくるの?」という心境でプレイしていたからです。確かに恭介は一応メインだし他もちょくちょく出てきてはいたのですが、満足できず。
ポッと出のヒロインより、マンネリ化してでもいいからいつものあの子たちの活躍する姿を見せてくれよ、というのが私個人の意見です。作品の肝であるRefrainでも影が薄かった女子メンバーは特に。
エンディングムービーにいるキャラも理樹、恭介、謙吾、真人、そして沙耶というメンツである理由は理解できるけど、こうするのだったら沙耶も含めてみんなで野球するifのムービーとかでも良かったのではないかと思ってしまいました。ハブられた鈴ェ…
ヒロインの性格や扱いに関しても、この世界観でキャラクター、しかも明確な意思を持ったヒロインを追加するという難題はクリアしており、かなり努力の跡が見られたのですが、それにしても彼女がポッと出であることに変わりなく、理樹と沙耶の関わり一辺倒なシナリオになってしまっていたので評価は低いです。こういう感じのシナリオが欲しかったわけではなかったです。
頑張って到達したスクレボエンドも、道中は楽しかったものの恭介の立ち位置を乗っ取る沙耶という展開は不快でした。読後感が最悪。
その他
・OP
MADでよく見るやつ。美少女ゲームのOPとしては長めのムービーで個人的には好きな部類。
・ミニゲーム
以下、簡単な評価と感想です。
バッティング◎→ドッド絵が精巧。掛け合いも面白く、何度やっても飽きない。猫が邪魔、打ちたい方向に恭介や三枝がいると他のキャラにボールが抜けていかないなどで育成がしにくい等のちょっとしたデメリットはあるものの、基本的には楽しい
野球試合△→周回中にまぐれで一度でも勝てば、シナリオ上特に問題ないのは良い点。クドや小毬などの育成が難しく弱い選手がほとんどこちらの弱点になってしまう、敵チームに思い入れがないため画面を見ててもつまらないなどの欠点がある
配膳-→何度やってもクリアできていない
バトル○→ほとんど運ゲー。ただし掛け合いや称号システムがクスッとできて面白いため、周回していてもそこまで辛くならなかった
射撃×→理樹、沙耶で2種類あるが周回前提のルートのため飽きがくる。特に沙耶の方は特定シナリオを見るためにはミニゲームのプレイが必須であり、Vitaだとタッチ可能という大きなメリットはあるが画面が小さいため見辛く、タッチし辛い
地下迷宮×→何も考えなくとも総当たりしていけば自ずと道が開けるため、攻略難易度はかなり低い。1周目は楽しめるものの、このミニゲームそのものが沙耶√の尺の8割を占めるため、殆ど何のギミックもない同じマップを何周もぐるぐるするのは飽きが来る上、大変
・棗恭介
人気投票一位のグランド√ヒロイン。理樹とくっつくのもまんざらではなさそうなのが好き。
総評
笑いあり、涙ありの野球(?)青春物語。
基本的に一連の流れは良かったものの、良かったからこそ気になる点が多く出てきてしまいました。
例えば
・個別√があまり楽しくない(恋愛より友情優先の描写にする方が、全体のシナリオの流れでは適切なのではないかと思うことがあった)
・現実での話が過去の旧リトルバスターズ関係と修学旅行での事故の瞬間の出来事以外、描写がなくてわからない(物語の空白部分が多すぎる)
・ファンタジーと現実の境目がどこに設定されているのかわからない(プレイヤーと作り手の感覚の差)
・リトルバスターズヒロイン達は最終的には物事から蚊帳の外感がある(特にRefrain 、沙耶√)
等、最高の作品だ!と褒め称える一歩手前でどうしても立ち止まってしまうことがありました。
しかし鈴が可哀想な目にあっていた時、恭介・真人・謙吾・小毬の退去時やRefrainのエンディングが流れた時は、久しぶりに創作物で泣いてしまいました。それはもう、鈴風に言えばくちゃくちゃに。
だから感情をそこまで揺さぶる程度の何かはこの作品から得られたのだろうな、というふわふわした感想になってしまいました。
グダグダと書きましたが、このゲームをプレイして後悔したことは一切なく、とても良い体験だったと思います。今後こういうテイストの作品が企業のブランドが制作した美少女ゲームとして世に出てくる気がしないので、個人的には唯一無二の作品となりました。リトルバスターズは、不滅です。
追記
Refrainクリア後に、抑えきれなくなりアニメ版を無印〜Refrainまで視聴。主人公含め一部声優変更があったものの、概ね受け入れられました。
シナリオについては一見さんにもわかりやすく再構築されており、恋愛をほぼ捨てて友情に特化した点は良かったと思います。ノベルゲーのアニメでは、作画・音楽・シナリオ等の出来がかなり良い方です。