欠点を強いてあげるなら主人公。意欲作ながら完成したクオリティを持つ秀作。
「純愛」に対して新たなるアプローチをした本作。
恋愛授業に関してはまぁ、何も言わない。
というか、思いのほか成功している試みだといえる。
授業のなかで与えられる、クラシックで甘い課題は
それに戸惑う生徒と同様のはずかしさを演出している。
主人公の恋愛が苦手、という設定もここで光る。
この授業の中で主人公がなんのはずかしげもなく、
課題をクリアしていったら、面白くもなんとも無い。
ヒロインと恥ずかしがりながらクリアするのが面白い。
ここでのポイントは、主人公がこの授業は恥ずかしがったら
負けだ、ということに気付かないこと。
この点で、恋愛授業にうろたえる主人公はいい働きをしている。
ただ、男女で組むことを強制にしないと、ペアを組むこと≒告白
みたいにならないか。。。。
先生がペアは決めないと成り立たない気がする。
主人公の恋愛苦手という設定に関して
初対面の人の部活をいきなり訪ねられるような、ましてや
通いつめるような人は決して恋愛嫌いでは無いと思う。
ヒロインとうまく行ったあとは、馬鹿になるから
恋愛が嫌いだと勘違いしていただけだと思われる。
シナリオに関しては一切文句が無い。
ある意味最高のシナリオだった。
山のないシナリオを作ることはとても勇気のいる試みだったと思う。
しかし、それは間違いなく成功していた。
早めにエンドロールを入れて、ぬるいエピローグを長めにいれる。
ほんとにすばらしいシナリオだった。純愛系作品に重過ぎるシナリオは要らない。
この作品はキャラクタそのものに魅力があるのではなく、
シナリオによってキャラクタが魅力的になっていく作品。
最初は別に気にならなかったキャラクタもエンドロールが流れる頃には好きになっている。
ヒロインは
みお>あさひ>ゆま>クレア>まりの
ただプレィ順がみお→まりの→ゆま→クレア→あさひ
だったのでその影響は大きいと思われる。
プレィしているうちに主人公が気に入らなくなったので。
たがやの洗濯バサミはちょっとひく。
なんかプレゼントする前にリボンかってやれよ、、、、
もっと言うと、洗濯バサミの方がリボンより高いんじゃないの?
いくらなんでも貧乏をおしすぎてる感じがしていやだった。
クレアは気に入らなかった。
周りから完璧な人物と慕われる人にまず魅力を感じない。
人間なんて十人十色。全ての人に好かれるわけがない。
ある人に好かれる部分は、必ずある人には嫌われる。
そして致命的なのは主人公。クレアルートの主人公が最高に気に入らない。
クレアの言うことは全て正しい、それ以外は悪だ。みたいな感じ。
温室事件のときも、苺先生との散歩がなかったらギブアップものだった。
正しいことを正しいと言うのは時に脅迫だと思う。
ゆまは山を越えたあとは最強。
ただ、なぜそこまで食べるんだ?
そんな設定いるのか、、、?
あさひでも主人公が駄目だった。
干渉しすぎ。はっきりいって余計なお世話。
ただあの感じで何とかなってしまうのがこの作品のいいところ。
親の離婚を阻止しようとする子供って実際いるのか。
どっちかのなついた親に簡単についていくような気がするけど。
でもあさひはかわいい。
いい奥さんになりそう。
みおはかわいかった。
おとなしくて素直な妹もわるくない。
通して思ったこと
エピローグを長く取ったことで甘く穏やかな日々が長く続く。
これはまったく悪くないけど、創作読み物に慣れてるから
いまひとつ、幸せにひたれない。
なんか、あまりにぬるい展開だとすごく関係が危うい印象を持ってしまう。
展開そのものは悪くないから、甘さはもう少し控えめでもいいかな。
ヒロインは悪くないんだけど、主人公がやや邪魔。
人のことに口を出しすぎだと思う。
この主人公の行いを許せる間は80点オーバーの作品だった。
でも残念ながら耐えられなくなってしまったので減点。
おまけシナリオは良い。
特に先生2人のシナリオは良かった。主人公もかっこよく文句なし。
苺先生と司先生がくっつけばいいのに、そうはいかないのかな。。。
以下完全に蛇足。オンリーワンモードについての愚痴
ただ、オンリーワンモードはいかがなものか。
選んだヒロインのルートが最初から確定し、イベントすべて
みられるわけだが、これは本当に純愛か。
マルチエンディングのなかで、最初から一途にそのルートを
進むわけだから、確かにそれは純愛にみえる。
でもこのシステム、そのヒロインを選ぶときになにを基準にするべきか。
(個人的な印象だが)ほとんどの人は一度プレィしてみて
ヒロインを一人攻略するなどの様子をみるのではないだろうか。
そのなかで一番よさそうなヒロインを本モードのヒロインとして選択するだろう。
これは純愛だろうか。
ヒロインをあて馬に使っておきながら、純愛だと言えるだろうか。
これは「私は遊びだったのね!?」的なことではないだろうか。
そんなことを言い出したら、、、
みたいな事はわかっている。
同モードについて、HOOKは以下のように言っている。
『オンリーワンモードの存在意義はなんなのか?
答えは簡単です。
ぼくらが真に感じてもらいたいのは、隠しシナリオや特典等ではなく、
一人を選んだというその“事実”と、それを確認出来る“術”だけだからです。』
(オフィシャルページから引用)
一人を選ぶ、というところに重きを置いているようだが、
先の理由でなんとも納得できない。結局のところ一人を選んでないのだ。
選ぶ、ということは、単独の唯一性が必ず必要だと思う。
そこで、そのなかで純愛を表現するシステムとして
単独のエピローグをつけてはどうだろう。
選んだヒロイン一人だけ後日談がある(プレィできる)。
これならば、主人公が選ぶただ一人とのあいだにある未来を表現できるのではないか。
もちろん、いろいろ不満は生まれるだろうが、、、、、
そもそも、ゲーム内はパラレルな世界で完結する中で
そこにプレイヤを介入させようとするからこういうことが起こる。
作中と現実は次元(2次元3次元とかの話しではなく)が違うから
根本的に無理のあるシステムだと思う。
ゲーム内ではマルチエンドではなく、個々のルートが全てなのだから。
ただ、HOOKには期待している。
純愛を描く、というなかでシステムとして挑戦する、
という姿勢は表現として興味深く純愛に近づいていると思う。
マルチエンドを知るプレイヤが、それでもなお一人を選ぶことが大事、
というHOOKの言葉も的を射ているように思う。
それはおそらく、作中と現実をむすぶキィになるだろう。