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nnmaaiさんのロンド・リーフレットの長文感想

ユーザー
nnmaai
ゲーム
ロンド・リーフレット
ブランド
Littlewitch
得点
82
参照数
640

一言コメント

作品全体に統一されたデザイン性がある。なんてエレガントなんだろう、、、

長文感想

各エピソードが区切られ、話と構成されていて遊びやすい。
こういう形式はゲームをセーブするポイントに困らなくて助かる。

主人公に声がついてる。
なかなか悪くないと思う。違和感なくプレィできた。

キャラクタは、リタとナーがいい。
本編では中盤から登場するが、幕間ではずっとでてるので、馴染む馴染む。
このコンビはとにかくかわいい。リタの素直さに自分の汚れを認識する。。。
リタとナーのかけあいは可愛らしくてとても和む。

ストーリィは、わがままな公女と無気力なメイドたちの家に
主人公の執事がやってくるところから始まる。
最初はやる気のない主人公だったが、屋敷に馴染むにつれて働き者に。
この作中の一体感。屋敷をみんなで盛り上げていこう!
みたいな一体感は大きな魅力。
ドタバタだけでなくシリアスもピリッときいてる。
シリアスに疲れないバランスのとり方はすばらしい。

シリアス部はニナの話が良い。決して暗すぎることはなく
淡々と語られる話で読後がさわやか

個別について
ロビィはエンド前の盛り上がりから実にエレガント。
最後に起きるトラブルをユーザの期待通りに解決する。
エピローグもこの話らしくてとても後味が良い。

他のルートも重過ぎることはなく読み手の望むとおりに終わる。
それでも細かなセリフやレトリックで新しい感動を与えてくれる。
コレットエンドなんかはその代表といえる。
実に微笑ましくて、久しぶりに目頭が熱くなった。
この幸せな感動こそ物語の本質なんだと思う。
もちろんニナ、リタエンドも同様彼らの幸せに感動できる。

こういうゲームに出会うとまたこの業界からの卒業が遅くなるんだよな。。。
この話しはメディアが変われば取るに足らない話かもしれないけど
この形式だからこそ映えるゲームたるゲームだと思う。

もうひとつ特筆すべきは、ロンドリーフレット講座
各話の幕間に本編から独立した形で、作品の解説をしてくれる。
当時のロンドンの背景や、つかわれる単語の説明などとても親切。
爵位が高い順に公・侯・伯・子・男、ということで男爵の位が以外に低いことに驚いた。
あと男爵がただの爵位の名前ということで、女男爵が存在しうることも衝撃的。
とにかく幕間としてこのアイディアはすばらしい。


「ろんどりーふれっと講座」をリスペクトしつつ、おまけ。
気になったのはラトニ族の扱い。
現在も人種差別は続くが作中ではほぼその描写はない。
ロビィやマシューも戸惑うものの、ラトニを受け入れている。
このあたりに作品としての美しさがにじみ出ている。
差別は日本でもまだある。
同和地区の問題はいまなお社会の大きな課題になっていて、
「破戒」のような社会がいまなおあることを私たちは認めなければいけない。
そのような、伝統としての差別と戦うのはとても大変。
まずそれを差別と認識することが難しい。
ソクラテスでさえ奴隷社会を当然だと思っていたのだ。
そのなかで、差別を認識し、差別の心を嫌悪する思想を持てる
ことは、とても素直で純粋なことだと思う。
また、ロビィのように思想の通りに社会に反発する行動を起こせるのは
女性特有の強さ(御幣のある言い方だけど)であり、時代が変わるのは
おそらくこういう人がいる時代なんだろう、と思う。
時代をかえる強さがある、というのはかえることを恐れないことと同義。
男は基本的に保守的だと思う。
(何が言いたいかって、アメリカ大統領はヒラリーが良かったってこと)

おまけ2 ネタばれします。

近親愛に関しては前にこんなの最悪だ、みたいなことをレビューで書いたが
なるほど。この話のそれはそんなにいやじゃない。
それを中心に描くかそうじゃないかの差だと思った。
こっちでは、そんなの別にたいしたことじゃないよ。みたいに
描くから全然いやな感じがしない。近親的なリアリティがなかったのが良かった。
彼らの間に「いやらしさ」がなかったのも良かったかな。