AXLが切り拓く、「愛しい対象(キャラクタ)の作り方」
最初に断っておくがAXL作品が好きだ。
盲目的に支持しているといっても過言ではない。
まぁ、今回はなぜAXL作品がこんなに素晴らしいのか考えてみた。
このブランドの魅力は間違いなく「キャラクター」にある。
もちろん、ビジュアルも大切だし、魅力の一つだけど、ここでは無視する。
このブランドのキャラクタはなぜ輝くのか。
キャラクタを描く作品として「丸戸作品」の完成度は高い。
なぜかと言えば、彼の作品はキャラクタありきでシナリオを作っているからだ。
キャラクタを「個人」にまで昇華させていくことで、あとはそのキャラクタが
勝手に動き出し、物語を紡いでいく。
「パルフェ」はまさにその典型だ。
設定と個人があれば、キャラクタがシナリオをつくっていくのだから、
当然違和感はない。違和感がなければキャラクタに感情も乗せていける。
キャラクタにシナリオが依存している形だ。
そしてその対極にあるのが「AUGUST作品」
最新作のみ異なるが、ブランドのシナリオの基本スタンスは
ヒロインの初めてをみんなで支えていく形。
ヒロインが見知らぬ場所で苦労し、それを助けることがシナリオの中心だ。
これは設定がキャラクタを作る好例だ。
だからこのブランドの作品はキャラクタのタイプ分けが容易になる。
シナリオの軸が毎回同じなため、そのシナリオに必要なキャラクタも同じになる。
シナリオに依存した形だといえる。
基本は上記した2種類に分類できるが、もちろん亜種がある。
主人公に依存した形だ。
これは「青空の見える丘」「HOOK作品」に代表される。
主人公の価値観が全てのものさしとなり、主人公の思うとおりに
シナリオが進行する形だ。
だから、主人公が好意をもつヒロインは自分のことを好きになる。
これは主人公のキャラクタに依存したシナリオになる。
次にイベントに依存した形。
これはわりと古い作品によく見られる。
「とらは3」なんかはその典型である。
イベントを積み重ねることで徐々にキャラクタを作っていく形。
最近の作品では「CLOVER POINT」なんかが当てはまりそう。
イベントをコラージュ的に見せる作品なので、キャラクタがぶれることがある。
ここまで挙げたのは、もちろん「キャラクタ」の作り方であって
キャラクタを作ろうとしている作品のみを挙げている。
シナリオに中心に据える作品ももちろん多い。
「るーす作品」なんかはまさにその形だ。
彼の作品作りにも興味深い創作論がある。
しかし、キャラクタは彼にとっては駒にすぎない。
さて、ここまでいくつかのキャラクタ造形における型を挙げた。
これは現在の作品のほとんどがカバーできる型だと考えるが、
AXL作品はこの型の新境地を切りひらいていると言える。
簡単に言うと、「主人公に依存した形」の亜種だ。
もちろん主人公に依存してなんかいない。
じゃあ、誰に依存しているのか。
ここがこのブランドのキャラクタ造形のポイントなのだが、
多角的な視点から1人を描き出す。
登場人物、というある意味では「その他」の視点でキャラクタを作り出す。
これがこのブランドのキャラクタ造形だ。
主人公を評価するのはユーザでもヒロインでも親友キャラでもない。
そのすべてが、主人公を評価する。
これはどのキャラクタにもあてはまる。
日常はこのような様々な人物の視点を借りるために描かれている。
主人公を介さない描写も厭わない。
とにかくお互いがお互いの話をするのだ。
こういう他人を介する視点はキャラクタを魅力的にする。
これはこのブランドの共通パートの魅力の中心だと考えられる。
間違ってもシナリオが薄い、ということを指摘してはいけないのだ。
シナリオなんかこのブランドの作品をプレイするうえでは、
決して重要ではないのだから。