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nezumoさんの経験ゼロなクラスメイトπの長文感想

ユーザー
nezumo
ゲーム
経験ゼロなクラスメイトπ
ブランド
プレカノ
得点
75
参照数
464

一言コメント

2人の観測者として

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

御崎一真と星名理沙の恋愛模様を、宮園海雲が相談に乗りサポートし、なおかつ友人として間に入ることで観測していく作品。
一見すると三角関係に見えるような状況を作りながらも、血縁関係を使うことで恋愛感情を持たせない珍しい作風だと思う。

この作品は宮園海雲が終始2人のサポートに徹しているからこそ成り立っている部分が大きい。
一真は血の繋がった姉として恋愛相談ができるし、理沙は仲の良い友達として恋愛相談ができる。
そして、どう考えても海雲とくっつきそうな状況を作りながらも、血縁関係を投下することで風向きをもとに戻す。

こんなに仲が良いのだから個別のひとつくらいあってもおかしくはないのかもしれないが、
経験ゼロなクラスメイトと付き合うのが趣旨の作品であり、そもそも一真にも海雲にもその気がないことから、
少なくとも完走した感じでは2人が付き合うような未来はなさそうである。
おまけに海雲が2人の恋愛模様を見るのを楽しんでいるようなのが伝わってきて、
3人の関係でありながらも一歩引いた視点から2人を応援しているような印象を強く受けた。
パッケージイラストで海雲の存在がぼかされていることに最初は違和感を覚えたが、プレイしてみるとこれがしっくりくる。

エピローグでは結婚のシーンが描かれるが、どれもこれも2人の様子を一番近くで見てきたからこそ言える言葉である。
言い方を変えると、宮園海雲が見てきた2人の恋愛の終着点を結婚式のスピーチに設定しているようにも思える。


物語の締めとしては完璧なように見えるが、自分はこの後の海雲の立ち位置を想像して少しもやもやしてしまった。
経験豊富なように見えて結局経験ゼロじまいだし、2人との時間を優先していたから自分磨きに投資できてなさそうだし。
仕事については2人の影響で自分のやりたいことを見つけられているので、ここに関してはプラスなのかもしれない。
ただ、これから身を固めるであろう2人を差し置いてこのタイミングで1人残されてしまって大丈夫なのかという心配がある。
正直あれだけ綺麗に終わっているのにサブキャラクターの今後を考えるのは完全に余計なお世話なのだが……。

2人だけの恋愛を描くならば2人の恋愛の邪魔になりそうな距離の近い友人はいらないが、
海雲に関しては友人や家族として2人をサポートして引き立てつつ、それを精一杯楽しんでいたようにも見える。
今後の自分のことはともかく、「経験ゼロなクラスメイトπ」としての恋愛模様の横で、
宮園海雲の観測者としての物語が動いていたという事実は間違いがなく、自分はなんとなくこちら側に共感してしまった。