まさにタイトル通りの物語。結末は評価の割れそうな形だけれども、これも1つの正解であると自分は思います。長文は前半は特にネタバレは無し。色々追記しました
引き込まれるOPムービーと曲
名作を生み出してくれそうな設定
しかし当時の自分は体験版で切りました
正直日常描写が寒いとしか感じなかったからです
それでもここでの点数を見て購入に踏み切りました 後悔はしてません
以下少しだけネタバレしない程度に製品版での特徴についてあげておきます
・日常描写は相変わらず
体験版のノリが気に入る方には合うと思いますが、正直自分には寒いとしか思えないものが多かったです
漣さんとか未喜はこんなやつだなって受け入れてしまえば全然いけたんですが、藍里なんかは正直寒すぎてみてられませんでした
・時計については全ての√で使われる
使い方の違いはあれど、時計を使うことはすべての√で生かせていたと思います
変に構えながらプレイしてしまったということもあるので、考え過ぎと言われたらそれまでですが
・詩乃√と他のヒロイン√は完全に分離している
他のヒロイン√では詩乃ちゃんは完全に見捨てられます
人間関係という意味での関わりは少しはあるものの、詩乃の死とはほとんど関わりはなく、個々の問題を解決する√として独立しています
・時計の設定が曖昧
ここについてはネタバレの方で自分の考えは話します
評価の分かれるポイントでもあると思います ここに突っ込んだら何とでも言えるからです
このゲームについては、高評価も低評価も納得できます
メインの詩乃√について、どう受け取るかで評価も変わってくると思います
ネタバレ抜きに感想を言うなら、こういう題材は好きなので、自分には面白かったです
絵は悪いところも特になく、普通に良かったし、音楽に関してもOPED共に気に入りました
BGMはそこそこの水準ですが、悪いと感じたことはありませんでした
ただし、日常会話は基本的に受け入れ不能でした 自分にはあんまり面白くなかったです
テキストの合う合わないは人によってあると思います
体験版でテキストに合わなくて、なおかつハッピーエンド、もしくは刺激的なシナリオが見たい方には本当にオススメしません
あと、Re:callの歌詞はクリアしてから聞くと本当にゲーム内容そのままなんじゃないかというくらい、ネタバレが混ざってます
プレイしようと思っている方はクリア後に聞くことをお勧めします そこそこ感動できますよ!
ここからはネタバレ全開の長文 クリアしていない方は基本はスルーしてください
まずは、このゲームにおける時計の設定について考えながら、詩乃以外の3人の√について話します
3つのヒロイン√に共通して言えるのは、やっぱり詩乃が適当に扱われすぎてるってことです
共通であれだけ見せておいてヒロイン√入ったら案外簡単に受け入れて別の人に恋してるんですからここに至っては本当に適当だなあと思いました
いっそのこと詩乃√だけ分離してくれた方が良かったと思います 見捨ててしまうことの申し訳なさが込み上げてきてどうしようもありませんでした
ゆめ√
途中からヒロイン変わってないですか?
ゆめは好感度が特に変化することなく進んでいくので、そのまま簡単に落ちます
普通のエロゲならここからイチャラブしてハッピーエンドです
しかし何故でしょう 途中から攻略対象が美羽ちゃんに変わってる気がしてなりませんでした
確かにゆめを助けるために動くんですが、数々の動機にすべて美羽ちゃんが絡んでくるんですよね
しまいには美羽ちゃんとのエッチ完備ですよ この√はどこに向かっているんでしょうか
この√における時計の使い方は、「変わらない出来事の程度を軽くする」
おそらく、時計の設定上は、一度起こった出来事については絶対に変わらないはずなので、
時計を使うタイミングまでにゆめが傷つくという結果は何があっても変わりません
もう1つ美羽に刺される直前に時計を使って巻き戻す場面もありますが、これについては猶予を作っただけっていう解釈でもいいと思います
深く考えると非常にややこしいです
しかし、もうちょい巻き戻すのが遅ければ何があろうと主人公が死んでしまうという恐ろしい現実になります
美羽ちゃんはマジでちょっと抑えて ほんとに
藍里√
お話はありがちなもの
バドミントンを出来なくなるものの、やっぱり後悔を捨てきれないので、左手で頑張って最後に決着をつけておくというお話
特に不満を感じることはなかったし、普通に良い話でした
ただし、この√の日常会話はダメです 全然面白くないです
それ以外は特に言うこともなし
この√における時計の使い方は、「実際に起こったことを見た上で、未来に向けて考える」
分かりにくい表現になりましたが、ここでも時計の根本的な仕様について考えられます
藍里が右手を使えなくなってバドミントンが右手では出来なくなる、ここまでは一度見てしまった未来なので、確定していて変えることはできません
しかし、これを踏まえて過去に戻り、左手バドミントンをするという未来を作り出すことは可能です
右手が使えなくなるということは確定していても、バドミントンを辞めるという未来は確定していないからです
未喜√
過保護な兄貴と不遇な境遇
お兄ちゃんも結ばれて、未喜ちゃん本人も結ばれる、普通のお話です
お兄ちゃんの恋愛を応援しつつも、自分が恋をすることを知らなかった未喜ちゃんの描写も魅力でしょうか
恋というものがどういうものか分からず右往左往する姿は良かったです
あと未喜ちゃんが可愛かったです 今作のヒロインズの中じゃ一番推してます
この√で時計の仕様について確信が持てたと共に、詩乃√の終わり方が予想できてしまいました
香澄の告白のシーンに絞って話をします
まず、告白して振られるということはすでに見てしまった、「確定した」未来なので、絶対に変えることはできません
これは何度繰り返しても同じだという描写が本編でもあったと思います
しかし、告白した後に篤史と香澄が結ばれるかどうかについては、まだ見ていない、「確定していない」未来なので、変えるも何も、これから作り出していけばいい話です
後ほど書きますが、今作の時計の仕様について確信を持たせてくれた√でした
ここまでのことを踏まえて、時計の仕様について自分の考えをまとめると
・中心に見る点、意識した点までの、過程は変えられる
・既に見てしまった、「確定した」未来は変えられないが、規模や形は少しは変えられる
・まだ見ていない、「確定していない」未来はこれから作っていけばよい
過程が変えられるというのは、主人公が違う言葉を他人に投げていますから当然です
そして、ここが未来は変えられないはずのこのゲームにおける最大の矛盾点であるともいえます
例えば香澄さんが告白して振られるという点を思い描いたとして時間を繰り返すと、そこに至るまでの主人公の行動はどうとでも変えられてしまうんです
このシーンにおいて指摘するなら、未喜が学校に行くか行かないかの未来が変わってしまったことになります
当然、主人公が意識して見ていない部分ですから変わります じゃあ意識していなければ告白が失敗する未来も変えられるのかと問われれば、それは無理らしいです
ここについては本当に設定に無理があると思いますが、とりあえずは意識していないことはすべて変えられるという認識で自分は納得しました
つまり、変えたい点は変えられなくて、そこまでの過程は変えられるのだと思います
あとは「確定していない」未来について、これについては、主人公が見ていない未来は、何が起こるか分からないから、どうとでも創造出来るというのが自分の解釈です
ただし、一度でも見てしまえばそれはもう変えられません 何があってもそうなります
ここまでが自分の時計についての考えです
詩乃√
詩乃が死ぬという地点から始まるので、初っ端から時計使って遡るところから始まります
ここから先の時計の使い方は、詩乃が死ぬまでの過程を変えることがメインになります
詩乃の願い事を叶えるために、時間を少し遡って努力をします
この√での恋愛は建前だけです 心の底から愛し合っているとは言い辛い
主人公がどうしても詩乃に漣さんを重ねてしまうからです それだけに、最後に指摘され、もやもやしたまま詩乃の死を迎えることになります
結末は読めていました 奇跡なんて起こりません
今までの時計の仕様についての考察に基づいて考えれば、詩乃が死ぬという未来は変わらないことは予測できました
単純に他の√よりも、考えるべきものが大きくなったと考えても良いです
それだけに主人公の想いはより一層強くなり、限界まで時間を遡ることになります
おそらく今作のメインである、Re:callの√と比較するなら、こっちは主人公の行動に後悔が残るものが多くなります
本当ならば、後悔をするのは人間にとって当たり前であるし、時計がなければこれを受け入れて一生後悔しながら生きていくしかありません
しかしこのゲームにおいては切り札がありました 後悔しないために、時計を使って時間を遡るわけです
ここで大事なのは、「後悔しないために」遡るということです 詩乃が死ぬという未来は変えられません
そして、詩乃自身も恋愛面で後悔の残った死に方になるということも重要です お互いが満足して詩乃が死ぬという地点を超えることが、この先の話のメインになります
Re:Call
詩乃を救うために、限界まで時間を遡って、漣さんに会う場面から始まります
本人たちにすれば久しぶりの再会なんでしょうが、見てるこっちからすれば初めてです
この人との日常会話は特につまらなくは感じませんでした
この√を読んで切実に感じたのが、漣さん視点の話があれば本当に満足できたなということです
似たようなことを既にしている重要人物であり、主人公と対立する考え方の持ち主であるからです
どんなに繰り返してもあの子供が死んでしまう未来は変わらないし、変えられない
でもあの子は一生懸命に生きているのだから、それで正解なのかもしれない
そして自分がどんなに繰り返しても変えられなかったのだから、たぶん陸さんも変えられないはずだ
こういった漣さんの心中も今作の魅力に十分なりえるので、そっちの方も掘り下げてほしいなとは思いました
「未来は頑張れば変えられる」ではなく、「確定した未来をどう受け入れるか」を書くならば、こういった掘り下げは必要条件だと思います
この人は間違いなくRe:Callにおける2人目のヒロインです
メインの詩乃編について
ガンの特効薬を開発するとか豪語しておきながら、5年もの月日を案外適当に過ごしちゃう点については触れないでおきます
基本は、1度目の遡行で後悔したことについて、それを払拭するのがメインになります
評価の割れる原因となったポイントでもあるかもしれません
ここに何も感じなければ、「結局詩乃は死ぬ運命だった」という、それだけの主題しか受け取れないでしょう
それに、心の面が1回目の遡行から成長しているかと言われたら、そうでもありません
未来を見た上で詩乃に対してやりたいことをやるのがメインですから、特別新しい感情を描いているわけでもありません
しかし、死ぬまでの過程は変えられる、これに基づいて、詩乃の行動は変わります
7つ目の願い事が1回目と変化するのも、詩乃が死ぬという点に意識を置いているために、変化する過程でしかないからです
このゲームを評価できるのは、詩乃が死ぬ運命を受け入れて、それについて後悔しないように頑張っている主人公の姿を見ることができるからです
そして、詩乃自身も、主人公に最後まで寄り添うことによって、後悔のない死に方をすることになります
最後には、主人公はもう後悔して過去を振り返らないために、時計と決別する
これは、もう詩乃のことについては満足していて、これ以上は振り返らないという決意の表れであり、未来を後悔しないように一生懸命生きるという決意の表れでもあります
この場面では、このゲームで言いたかったことが読み取れたと思います
ここから読み取れたのは、「後悔しないように、一生懸命に生きろ」です
良いメッセージだと思うし、詩乃√が評価されるのも納得できます
主人公は決して運命に対して諦めたわけではないと、自分は思っています
詩乃の死は運命を諦めたのではない 受け入れて、後悔をなくし、満足するためにはどうすればいいか
これを書いたのが、Re:Callの√です
ここで、「諦めた」と捉えるか、「運命を受け入れた」と捉えるかによっても、評価は大きく変わることになると思います
どちらが正解とかそういうことはありません あくまでも、描写不足の部分における、捉え方の問題です
ライターの実力が高いとは言えません
何度も言いますが、日常会話については本当に面白くないです
しかし、題材は本当に良かった 使い方や掘り下げ方次第ではもうちょっといいものになったのではないか
そういう思いもあるのですが、こういう題材は本当に好きなので、そういう補正もかかっています
結末は、評価の割れる部分ではあるのですが、きれいな終わり方です
未来を受け入れるというシナリオにおいての1つの正解の形であると思っています
シナリオにしっかり向き合おうとする意欲は十分に感じられました ただし、万人受けはしません
また、このゲームの本当の主題は、時間を繰り返すことではなく、後悔を繰り返さないことにあると思います
それ故に主人公は時計を闇雲に使わないで、それなりに数を制限したのだと考えました
OPテーマ「Re:call」について
この曲は、あらゆる歌詞が本編の内容と繋がっています
1番は、おそらく(1週目に)漣さんと別れてから、詩乃と出会うまでの話
ここでの歌詞では、漣さんに告白できなかった後悔と、悲しみの無い時を探す、つまり詩乃が生きる未来を探そうとする、主人公の意志が表れています
2番は、詩乃√での話 ここでのさざなみは、漣さんの暗示になります
「さざなみ」を忘れられないために、心に感じる詩乃に対する罪と悔いの意識が表れています
それ以降の歌詞は、Re:Callの√の話 満足して死を迎える詩乃の気持ちと、時計を捨てて過去と決別する、主人公の決意が込められています
終わった後に聞くと非常に感慨深い気持ちになりました
本編と連動させるテーマソングは良いのですが、事前に歌詞がネタバレという情報を聞かなければ、プレイ前に聞いてしまって結末が読めることもあり得るので、微妙なところです
それでも、余韻としては本当に良かったです
EDテーマ「VOICE LETT;∃Я」について
この曲の歌詞にも、OPテーマと同じように、本編と関連している部分があります
まず自分が注目したのが、曲タイトルのLETTERの後半部分に区切りがついていて、その後反転していること
ここから自分が考えたのは、「言葉を真っ直ぐに投げられないこと」つまり、主人公の心のわだかまりであり、漣さんに対する後悔です
この曲の歌詞についても、似たような境遇を共有する、漣さんと詩乃の2人で考えてみます
1番冒頭の部分は、大切な君といた記憶の話なので、この場合の「君」は、過去の人物である漣さんのことです
Bメロの歌詞について、海に行ったのは漣さんと詩乃の両方なので、ここでの「君」は、両方が重なっていると思います
1番のサビの歌詞について、ここも、2人分の捉え方ができます
一番注目したのは、「さよならを抱きしめたら、僕の時間はもう戻らないから」の部分
漣さんに関連して言うならば、告白と共に別れを告げ、もう決して時計を使って時間は戻さないということ
詩乃に関連して言うならば、詩乃の死を受け入れ、前を向いて歩き出すということ
やはりこういう場所からも、後悔をなくすという意味での、歌詞の効果が感じられました
最後のサビの直前の部分の「君」は、眠るという歌詞が死ぬということを表していると考えれば、詩乃もしくは漣さんの思う主人公だと考えられます
しかし、漣さんは告白を断っている立場なので、主人公に恋をしたということも踏まえれば、詩乃→主人公の構図が一番合っていると思います
最後のサビの部分の歌詞は、「この街も虹も海も全部君との宝物だから」 この部分が一番注目したいところです
3つとも詩乃もしくは漣さんとの生前の思い出だと思われるので、この場合の「君」は、単純に漣さんと詩乃の2人ともです
また、ここでは「君」を詩乃のことと読み取れば、歌詞の流れが、本編の展開に一致するような捉え方をすることもできます
面白いのは、「君」という曖昧な表現を使うことによって、歌の中のところどころで違う人物を表していることが読み取れることです
結局は、Re:callと同じようなことを言っているのですが、ここまで歌詞に本編の内容をかけてくると、本当に感慨深いものがあります
意味ありげなタイトルについての考察
タイトルは、「できない私が、くり返す」です
主語ができない私で、動詞がくり返すになるんですが、
この場合のタイトルの捉え方については、2通り考えられました
勿論、時計の使用者なのですが、2つの捉え方では意味が大きく違ってきます
まず1つ目に、漣さんのことです
あの子を救うために何度でも時間を「くり返す」、しかし運命を変えることは絶対に「できない」ので、「できない私が、くり返す」です
2つ目は、そのまんま主人公のことです
詩乃をガンから救うことは「できない」けれども、もう1度だけ「くり返して」、後悔なく詩乃の死を迎えるために時計を使うので、「できない私が、くり返す」です
この2人において違うのは、最後に後悔が残るか残らないかの違いです
漣さんの場合はどうしても変えられない結果についての後悔が残ってしまう
しかし、主人公については、満足のいく終わり方を実現するために、最後の遡行を行うので、微塵も後悔は残りません
タイトル画面やパッケージイラストの、漣さんが後ろを向いている絵も注目です
この捉え方については、本当に色々あっていいと思います
まず、単純に捉えるなら、今いない人物であり、メインヒロインでないということ
時計を絡めて捉えるなら、漣さんだけが後悔を残した生き方をしていて、最後までそれを成し遂げられなかったということ
そして、主人公視点で捉えるなら、漣さんへの気持ちに決着をつけて、現実に戻るという、Re:Callの話の暗示とも読み取れます
色々なことについて考察するのは面白いです
自分も考察しながらやっていたので、この作品は一層楽しめたと思っています
自分の見方で読み、自分の考えを持つ、それも、この作品の1つの楽しみ方になると思います