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netkinakoさんのヘイズマン -THE LOCAL HERO-の長文感想

ユーザー
netkinako
ゲーム
ヘイズマン -THE LOCAL HERO-
ブランド
バグシステム
得点
83
参照数
2565

一言コメント

正直こんなに面白いとは思ってなかった。単なるB級バカゲーとしても、重厚なバトルファンタジーとしても非常に満足してる

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一言の方でも書きましたが、この作品はB級バカゲーにして重厚なるバトルファンタジーです。
という訳で感想の方もこの二つの点に着目しながら整理して書いてみようと思います。


まずはB級バカゲーとして。
そもそも会話の作りがボケに特化されています。基本的にはボケ2、ツッコミ1という役回りを順次回しながら進めていくスタイル。
特に感心したのはそのボケの性質が全員ちょっとずつ違うということなのです。ボケに回った時は

ファラ:偏った知識(なぜそんなこと知ってる/知らない)、(意図的な)聞き間違い
蓮夏:テンパり、(性的に)壊れた倫理観
透子:(割と強引に)話を横にそらす、とぼける
主人公:天丼(重ねボケ)

と全員少しずつ違う技を使っています。前半のパートはほとんど話が進まず、商店街の中で大したことのない敵と戦うだけの
緊張感のない時間がしばらく続く訳ですが、この優れた設定のおかげでそれでも十分読めるようになっています。
商店街を脅かす敵(!)と戦ったり、みんなでプールにお出かけしたり、間に適宜Hシーンを挟んだり。
とぼけた会話自体が楽しみになれば、こんな起伏のない展開でも結構楽しめるものです。この辺りB級バカゲーとして上手い所。


ところが後半のパートでこのくだらない時間を続けること自体が一つの目的となっていたと気付かされると、印象は一変。
物語の構成の壮大さに驚かされると共に、各ヒロインの過去や世界観設定が一点に終結してくる終盤の展開に
一挙にモチベがぶち上がります。そしてこれこそまさに「重厚なバトルファンタジー」と評した理由でもあります。二面性がすごい。

一つ一つのバトルで、主人公が基本的に相手より弱いという所が面白い。地力では相手に劣っているんです。普通なら勝てない。
ではそういう相手にどう向き合うのか。どの勝負も必殺技放てば勝てるような、勝利が約束された安いバトルにはなっていません。
どの勝負も見どころ満載です。機転を利かせるにしても、相手もバカじゃないから一筋縄ではいかない。一瞬の判断が実に面白い。

あまり具体的に書いてしまうと面白くなくなるので手短にしますが、例えば蓮夏√だと彼女がなぜ主人公と戦うことを望んだのか
主人公に投げかけられる最後の質問、そして怒りと殺意を見せたラスボスに、命懸けで衝突する劇的なラストバトル──ともう激アツ。
これは是非ともプレイしてその熱量を感じ取って欲しいと思います。ここは本当に傑作特有の盛り上がりがありましたね。


個人的には蓮夏→透子、ハーレム→ファラをオススメ。コレは何気に良作です。
体験版最序盤の主人公と蓮夏の会話が気に入った人ならきっと最後まで楽しめるはず。もっと多くの人に伝わりますように。