筋の通った本格派のシナリオ
シナリオゲーを本気で作ればここまでの仕上がりに持ってこれるというのは驚きと感銘があるばかりです。
物語構造に用いられた道具は一つ一つ切り出せばどこかしらで見たことのある物が多いんですが
それらを全て破綻なく取り込んで壮大な世界観を完結させているとは並一通りのことではありません。
物語の主軸となる部分はほとんど海富一さんが一人で完成させたようですが、ここを全て引き受けたことがこの作品の
完成度とクオリティの高さに直結したように思います。細かな心情機微まで筋が通っていて大変にレベルが高い。
ところでかなり地味ですが個人的に高く評価したいのは
後藤(4階)が入莉に手をかけようとして少し抵抗された時に言い放った「だぁめ」の声です。
あの上擦って震えた声は本当に狂気に突き動かされて何か犯した実体験でもないと出せないおぞましいリアリティ。何者?
以下ネタバレ含みつつ織塚について
織塚は生まれた運命からして必然的に冬谷のことが好きなのに、物語構造上彼女は絶対に報われないんですよね...
無駄に明るい性格までも作られたもので、全てを知りながらも入莉のために尽くし続ける気持ちを思うとそれだけで涙が。
だからこそI Am LegendやAfterの追加シナリオには届かない彼女の愛おしさと不憫さを重ねて号泣してしまいました。
ところで入莉√の生死選択肢ではこういう二択における常道に反して織塚を選ぶ方が正解になるわけですが
ここに本編の中で唯一トウヤに入莉よりも織塚を選ばせるというささやかな親心を感じました。勝手な推測ですが。