作風のベクトルが一般的な需要と違ってしまっただけ。作品のレベル自体はとても高い傑作。
要所でヒロインを引き付けて、また恋心を抱く/抱かせるまでの過程や雰囲気がよく伝わる世界観を見れば秀作。
だが主人公が優柔不断の甲斐性無しのどうしようもないシスコンだったせいでヒロインが振り回されたと読めば駄作。
この複雑な心情は、妙な例えだが正しい方向に飛べば飛距離が稼げたのに、斜めに飛んでしまった紙飛行機のよう。
完成度は十分高いのに、作風が明後日の方向だったせいで多くの誤解を受けたのが低評価に甘んじた原因ではないか。
でも裏を返せばそういう背景を理解してあげればこんなに面白い作品も他にない。
三角関係、実妹の壁、妊娠を真剣に描いた良作なんてそうそう見られないのだから。毛嫌いしていては勿体ない。
ではそれを踏まえて個別評。ネタバレ多し。未プレイ注意!
[絢音] 85
なにこの子めっちゃ可愛い。
寡黙でおとなしいだけかと思えば、内心では相当のヤキモチ焼きでむっつりえっち。
立ち絵からして可愛いが、一枚絵のぬいぐるみと寝てる絵はヤバ過ぎて悶えて変な声が出た。
作中三角関係は3組出てくるがこの絢音~なずな間が一番いい(?)三角関係していたと思う。
ただまあ原因を辿れば個別ルート入ったのに兄のこと諦めきれずベッドですすり泣くなずなが全部悪いし
なんなら初めて一線を越えた日の雨でそのまま流されてしまえば良かったのに。(絢音第一主義)
最後の解決策は個人的に問題がそのまま残っているようでイマイチピンとこないのだが
それはそれとしてその後の夜が非常にえっちでよろしかったのでいいと思います。絢音ちゃん可愛い。
[水希] 60
面白かったのはルート入る手前までの話の方だったので主にそっちについて。
要するに一言で言えば香奈恵との三角関係なのだが、幼馴染の自分はその気がないのにずっと主人公の
そばにいるから、そのせいで自分は本当に告白したい子(=香奈恵)の邪魔なのではという気づきから始まる。
この視点は幼馴染ネタなんて、もはや完全にネタ切れで過去の意匠の切り貼りでしかないという私の偏見を
完全にぶち壊す面白い発想だった。そして香奈恵を応援しようとしたら逆に自分の恋心に気付くのも面白い。
そして最後は香奈恵と水希の2択(むろん選ばれなかった方はフラれる)というエロゲ史上最も強烈な2択を
突きつけてきて、SAN値をガリガリ削ってきた。でもこの方が「選択肢」という感じがしてむしろ好感である。
だが肝心の個別はここで力を使い果たしたのか残念な出来。まあバカップルの描写は面白かったけど...
[なずな] 100
個人的には実妹最高傑作。この√の存在だけでもう80点以上確定と言ってもいい。
そもそも論で申し訳ないが実妹と付き合う事はあり得ない。流石にゲームと言えども倫理観が口を出す部分だ。
だからこそ義妹ではなく実妹で描くならこの問題に真摯に向き合って、一つの回答を出すべきだと思う。
とはいえ選択肢として選び得るものはそう多くない。
1.そもそも誰にも見つかることなく二人の関係を見事に隠し通す
2.見つかったが周囲の人物が優しかったため前途を祝福してくれる
3.見つかったため周囲に反対されてしまうが、愛を諦められずに2人だけの世界に進む
この作品は3であって、そして3を選ぶように力強く背中を押すシナリオだった。
交通事故をきっかけに弱者になった結果兄を独占できる喜びを知ってしまったなずな。どうしても甘やかしてしまう兄。
呪いによって病弱になると、また兄がそばに来てくれるから。いけないのに嬉しく思ってしまう気持ちに悩む描写が秀逸。
でもこれでは背徳の中で生きるにはあまりにも甘えすぎていて。物凄い選択をした割には全然覚悟が足りていなかった。
最後水希が喝破したのはそういうなずなの「弱さ」だった。だからこそキャンプファイヤーで車いすから立ち上がったなずなは
強くなったのであり、前を向いて二人の世界を生きる覚悟を決めていたのだ。ここまで描写されてはもはや涙も止まらない。
「祐也のことを幸せに出来るのはなずなだけなのよ」 この言葉の真意が分かった時、初めて100点をつけていいと思えた。
結局の所問題が解決していないようにも見えるが、今のこの二人なら大丈夫。二人で生きていく覚悟があれば前途も明るい。
[香奈恵] 80
最初BADEND直行するとちょっと焦るけどまあ...香奈恵を思えば残念でもないし当然。
香奈恵にしてみれば片想いを許してもらった、としか感じていないのだから一人前の恋人のように手つないだり
弁当交換したり独占欲見せたりは全部躊躇われて、逆にセックスは主人公への奉仕だからセーフだったのだろう。
こんなにいい子なのに価値観歪ませたバカ(主人公)を思うとイライラする。というか付き合う前からもうクソだけど。
一番印象に残ったのは3回目のH。いやあのガチ妊娠子作りセックスはこっちも動揺でちんこが縮み上がってしまいます。
抜きゲーならよくある展開かもしれないけど100%孕むと分かってて、快楽のためではなく子供のためにやるセックスなんて
他にまずないでしょ。こんな真剣な展開とあっては流石に背筋を正したんだが他のプレイヤー諸兄はいかがだろう。
最後の神社は分かっててもボロボロ泣いたので当然の名シーンだった。詳しく語るのは何か違うと思うので是非プレイどうぞ。
この作品はどうにも受けが悪い題材をメインに取り扱い、その必然の結果として不快なものも生み出されてしまった。
それは不格好な主人公だったり、三角関係の気まずさだったり、妊娠だったりするのだがそれはこの作品の一面にすぎない。
全体を踏まえて改めて作品を捉え直した時、本当に描きたかった主題はなるほど上手に演出されているではないか!
この作品に出会えてよかった。プレイすることが出来て本当に良かった。偽りではなく心からそう思っている。