過去の朱門作品と比べて、良くいえば理解やすくなった。悪くいえば、物足りない。だが、おもしろい。寝る間も惜しんでプレイした。
朱門作品の特徴といえば、独特で難解な設定にあると思う。
私は朱門さんの過去作品では「黒と黒と黒の祭壇」「いつか、届く、あの空に。」「きっと、澄みわたる朝色よりも、」はプレイした。
三作品全てにいえることだが、ただプレイしただけではスッキリしない。自分なりに考察や、作品中に出てきたワードを調べたりして、ストーリーを把握しなければ謎は解けない作りになっていたと思う。
そこが朱門作品の魅力的なところであり、面倒なところでもある。
今作の「天使の羽根を踏まないでっ」をプレイするにあたり、プレイに充てられる十分な時間、傍らにメモ帳とボールペン、そして全てを把握してやろうというやる気を用意した。個人的に、朱門作品は惰性でプレイするには勿体無いと思っているからだ。
結果、メモ帳とボールペン、やる気は必要なかった。
驚いたことに、今作はプレイヤーに対して丁寧すぎるほどに説明してくれていた。これでは肩透かしだ。
主人公や他キャラクターの心情や行動の理由。主人公が行動している裏では何が起きていたのか。など、今までの作品では容易には分からなかった部分が、今作では作品中で説明されている。これではプレイヤーが考えるところは一つもない。
ただ、理解やすいというのも悪いものでもない。全て説明され、全ルートコンプリート後のスッキリ感は「天使の羽根を踏まないでっ」という作品に流れる雰囲気と、とても合っていたと思う。この作品では、考察の余地がないほうが、作品として纏まっていると感じた。
主人公の人間性、ラスボスの真直ぐな主張、作品に流れるテーマ。
いつもの朱門作品とは違っていたが、これはこれでとてもおもしろくプレイできた。
特に、主人公である「二見あやめ」は、私が思う最高にイカすエロゲ主人公「ミルディン・グリフィズ」「如月双七」「高町恭也」に続く不快感の全くない主人公だった。
このような主人公に出会えただけで、プレイした意味があった。
不快感のない主人公はほしまる作品に多いのだが、二見あやめのキャラ造形にほしまるさんが関係しているのだろうか……
過去作品では朱門作品が合わなかったというレビューもたくさんみたが、今回はあまり朱門作品らしさがなく、一般的な作品になっていると思うので、朱門作品というだけで避けるのは勿体無いと思います。
個人的には名作でした。