ErogameScape -エロゲー批評空間-

nasuergsさんの姫宮さんはかまいたいの長文感想

ユーザー
nasuergs
ゲーム
姫宮さんはかまいたい
ブランド
プレカノ
得点
51
参照数
83

一言コメント

○○さん系漫画を意識した作品だと思われるが、会話が終始つまらなく、クスッと出来るシーンすら皆無。会話がつまらない=読み物としてつまらないのと同義で、漫画原作ならば持ち込み時点で落とされると思える内容。また、コンシューマー展開を想定した作りがエロゲとしての価値を下げており本末転倒になっている。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

テニス部の熱血さについていけなくなったという主人公がふらっと茶道部に立ち寄り
パンツ丸見えで寝ているヒロインである先輩と出会うところから始まる。

先輩は始めから主人公に対して好感を持っているようで主人公も同様。
茶道部の状況などを話しながら交流していくが
中身の伴った会話はまるで存在せず、毎日とりとめない会話が続く。

主人公も先輩も、どういった性格で、どういった趣向を持ち、どういった考えを持っているのか
人物像が分からないまま、ただ日々が進んでいくのみ。
始めから好感度が高いため関係性を積み上げていく要素も薄く、
一体なにを目的に作られているのだろう?という疑問が出て来るほどに平坦で
ライターの主張らしきものも一切見当たらない。

確かに、エロゲはエッチな絵と文章があれば形式上は成立するのだが、
エロゲもあくまで読み物であるのでこういう何の引っ掛かりもない
例えるならツルツルのタマゴのような作品を出されても困ってしまう。

戯画とプレカノが解散を発表して残念に思っていたのだが、
少なくともプレカノに関してはこの作品をプレイすると解散もやむなしと思ってしまう。
それは内容の良い悪い以前に、この作品でユーザーに何かを伝えたいという意思がどこにも無いからだ。

エロに関してはシーン尺は短めで特に差分絵が少ない。
カメラのアップなどを使ってごまかしているが
目を開ける、目を瞑る、口を少し開ける、口をもう少し開ける。程度のわずかな変化のみ。
射精後の差分絵も全体的におとなしく、パイズリシーンで射精後に変化が僅かだったのはガッカリした。

絵に関して崩れているシーンはないが、キスや愛撫で胸や口元が濡れるといった表現も無く、
トロ顔などの興奮を煽るような表情の変化や仕掛けも無い。
「こういった変化があるとエッチだよね」というこだわりをほとんど感じないので、
プレイヤーとしても「用意されたエロ絵」以上の感想を持てない。
立ち絵に目パチがないことも含めて全体的に省エネを感じさせる作りだと言える。

会話がつまらないのは勿論エロシーンも同様で、劣情を刺激するようなセリフは無く、
主人公は能動的に言葉を発しないので、ヒロインの可愛らしい声だけでは二進も三進も行かなかった。

他のレビューでも言及されていたが主人公に苗字も名前もないのは問題。
「俺」と表示されるだけでヒロインからはなぜか「たっくん」呼び。

RPGやSLGで、主人公を無個性化してプレイヤーを投影させるスタイルのゲームならば賛成だが、
こういった普通の読み物で名前を与えないのは疑問。
最初に言及した人物像の浅さの象徴になっているようで良くない点なのだが、
そうかと思えば、なぜか外見は茶髪で(エロシーンの1シーンで確認できる)そこだけ無駄に個性がある。
それまでにヒロインからちょっとチャラい雰囲気があったなんて言及も勿論ない。

細かい点だが、
「中二病」だから女性との会話に自信がないという趣旨の文章が二度ほど出て来るが、
「中二病」にはそういった意味合いはないのでライターの誤用である。

良かった点はUIくらいで、
セーブデータの欄が120個も用意されている(到底使いきれないが)のと
バックログから文章をクリックするとその地点からすぐにやり直せるのは便利だった。

プレカノは発売から数か月後にコンシューマー機に移植されるのが恒例となっていたが、
それを見越した作りがエロゲとしての価値を大きく下げていると感じた。
基本17枚のCGのうち18禁に該当するのは6枚で健全絵が2枚、他は微エロ。
明らかに[CERO D]に収まるように用意されたサービスシーンが多く、
これではエロを求めるユーザーから評価を得られないのは当然だろう。

『ボクと彼女の研修日誌』の家庭用版が深夜バラエティで取り上げられていたが
この手法が最終的に却って自らの首を絞めてしまったのは皮肉と言える。


■総評

コンシューマー展開を意識した微エロの多いエロゲ。
微エロと言っても転んだ拍子に胸に触れたり水着がはだけたりする陳腐なアクシデントばかり。
それでも会話が面白ければ需要はあるが、
内容も○○さん系に習って先輩ヒロインにリードされる形にしたいだけで、本質を理解していないのか
実際はつまらない会話に終始しており、いじらしいドキッとさせられるシーンも皆無に近い。
主人公とヒロイン以外に登場人物は存在せず、恋愛物としても何の張り合いもない物語。
この作品で何を伝えたかったのですか?と国語の教師のようにもう一人の自分に問いかけられる稀有な体験ができる。

とても辛辣な表現になってしまうがその辺の中学生の妄想恋愛小説の方が
もう少し刺激的で笑える部分もあるのではないか?それくらい虚無感に苛まれる作品だった。

ただ、ネット環境がなく家庭用ゲームしか買えない
中学生のモヤモヤを解消させるくらいの価値はあるかもしれないし(そちらも17歳以上対象だが)
「たっくん」が業界を去る最後のご褒美作品としてならば譲歩して受け入れよう。



おかず度:まったく使えなかった