対等な人間関係を意識したキャラクターの行動や発言が気に入った。
ちょくちょく再プレイしているのでプレイ時間は50時間超え。コンプまでは24時間程度。
※紛らわしいので、縁(えん)を縁。鹿乃 縁を鹿乃と表記します。
■キャラクター雑感
◇東雲 暁
自称ラッキーボーイの占い野郎。みさき・大誠あたりと比べて「天縁」の効果は分かりにくく、やや応援しがたいのが難点か。渡月橋双六の「中吉」にしっくりこない部分があるのは分かりにくさが原因と思う。
主人公だが、基本的に受け身。双六では助けられる方が多く、告白も京楓以外はヒロインが先。
立ち回りがやや下手。暗黒期がある分、他の双六メンバーよりまっとうな人間関係や学が欠けているためか。鹿乃にも同じことが言える。
暗黒期を経験した人間の強みは一つ。痛みを本質的に理解していること。京楓の救済により、精神に余裕ができてからは救済する側にもなる。
・瀕死の幼馴染み
・ネット上の変人
・縁のなかった下級生
・教師
・猫等々
誰が相手でも分け隔てなく、相手の立場に寄り添えるのが東雲暁の強み。これは大誠の「動物に優しい」発言であったり、クレアの告白などに表れている。現実で鹿乃を救えなかったのは暗黒期の逆行再現を起こしたためか。
作中で特に突っ込まれていなかったがハンドルネーム「のの」は、「し“のの”め」「“のの”みや」の苗字から取ったのか。「も“のの”べ」は関係ないハズ。
◇野々宮 京楓
暁の救世主。西院双六以外の共通ルートでの行動はプレイヤーから見て好きになれる要素がほぼ皆無だが、後述するように元々暁との親近感が最も強いため、これくらいで丁度良かったかな。
暁相手に強気ではあるものの、一線は守れているため高圧的ではない。
誕生日10月22日(てんびん座)は秋を連想させつつ、自身の生き様である罪業天秤の「てんびん」と掛けている。
◇鬼無水 みさき
基本的には穏やかだが、逃げることを良しとしない不撓不屈の如き修羅。平和主義者でありながら譲れない一線は守り抜く精神の強さを持つ。
>衣食住の足りていない人間に理性的な思考をしろというのも無茶なのである。
この3つが足りなかった暁・鹿乃は希望を失い無気力となる。対してこの3つと友に恵まれていたみさきは、自身が瀕死でも他者を気遣えていた。それでも狂人だと思うが。
>……現実のことを思い出したくなかったみさきにとって、その象徴たる制服は嫌だったのかな
暁の独白で和服の理由が明らかになる。みさきが目を背けたい存在の影みさきは制服を着ているため、日常の象徴である制服⇔一度しか着ていない和服の対と言える。
こういったところからもみさきの弱い部分も見て取れる。
>どこまでいったの? A? B? お尻?
助平なところは所々で見て取れるが、影みさきの「どうせ処女を散らすなら、自分でやったほうが痛くないでしょ」は謎。影と向き合い続けるだけで精神を摩耗しており、とどめの発言がたまたまこれだったと強引に解釈している。
◇クレア・コートニー・クレア
「のの」達とはペラペラサイトで運命的な出会いをする。
みさき・京楓と異なり、親友と呼べるレベルの相手が、ネット上にのみ存在する。
>鹿乃縁を――“追放”するよ
暁たちを救うためにリスク不明瞭な「追放」を選択していたため、他者が死の危機だと自分を顧みず救出を選択する性格。みさき救出のための服毒はリスクが明確だが、こちらも突発的な選択か。
・エピローグの補足
メロンブックス京都店…彩頃発売日に現実の寺町京極にあったメロンブックスは2019年に移転。しかし移転先も寺町のため、聖地代わりにはなる。
びしょげー…「美少女ゲーム」の略称。基本的にエロゲー雑誌BugBugくらいしか使われない略称。
プチモン…ポケモンシリーズのパロディ。まとめて逃がすコマンドを実装したゲームは彩頃発売日時点では存在しないので、やり込みプレイヤーというか冬茜トムの願望が入っているのかと。やり込むうえでは、大量にポケモンを産ませて性能が悪いものを逃がすプレイとなる。クレアが好きなプチモンを大量に産んで大量に逃がしたのはこのため。詳細は「ポケモン 厳選」で検索。
◇琥珀
双六で得た人の姿を失ってでも暁を助けたいという健気な姿勢が胸に響いた。前後を含めて共通屈指の切ないルートだった。
>クレア「あ、このリボン可愛い~。これ京楓の?」
>暁「いや、それは俺の」
西院双六ラストで暁の部屋に可愛いリボンがあると判明しているので、尻尾のリボンは暁が付けたものだろうか。他に翻訳機を買っていたあたり、猫の琥珀は暁に好かれていたのだと感じる。
……見返したら最初から付けてたかので訂正。ただ、双六世界の制服暁みたいにCG間違えた可能性もなくはないが。
双六参加理由は謎だが、鹿乃とひそかに縁が強かったため、引っ張ってこられたと強引に解釈している。人間になれたのも謎。
◇首藤 大誠
望遠鏡を買ってもらえるには金持ちで勤勉。ゲーム外の一般論として、低所得世帯の方がかえって肥満体型になりやすいという話はあるが、京楓より昼食が少ない描写があるので、本人も言うように運動不足が主な原因であって、肥満は家が裕福な象徴なのかなと。暁・琥珀を受け入れた野々宮家が金持ちなのは明白だが、その友人である鬼無水・首藤もまた金持ちと考えるのが自然。
だからこそ、対極に位置する困窮ロリの鹿乃を救ったのが栄えた。彼の名誉のために言うと、初老の男性だろうが同じように助けただろうが。
肥満体型は人物の見分けが付きやすいほか、愛嬌にも繋がっていた。黎と立ち絵が逆だったら嫌味な奴に感じていたと思う。
◇鹿乃 縁
10点の環境から100点の環境に変わったのが暁なら、10点から0点に落ちたのが鹿乃。愛されないから愛せない悪循環に陥り、限界に達して自殺。唯一の心の拠り所は猫だが、自殺を止めるにまでは至っていない。
>お父さんもお母さんも学校の皆もいてくれて
>帰ったらお母さんのご飯も食べたいし、休みの日はお父さんとも過ごしたい
>みんなとも、お父さんともお母さんとも……別れなくていいんだよね……!
みさきが大切な人として両親を何度か挙げていたのは、家庭に恵まれなかった鹿乃を強調するためか。なお、野々宮パパは経済的に強い人物、クレアパパは物理的に強い人物である。
みさきとは対照的な要素が多い。「逃げない⇔逃げる」の他にも
・体の病⇔精神の病
・恵まれた人間関係⇔恵まれない人間関係
・立ち回りが上手い⇔立ち回りが下手
などが挙げられる。これらの違いが「死にそうだけど生きたい」⇔「生きられないから死にたい」の思想に繋がっている。
>自分を見てくれる人間が欲しい。
>真に望むものが手に入らないからこそ、それ自体から目を背ける――
>おまえ達だけじゃない、私もすぐに命を絶つ! 誰も助けになんか来やしないんだ!
とどのつまり自殺の要因は「誰も私を見てくれない」。死にたいのではなく、助けが欲しいという悲痛な叫び。現実では最後の最後で救世主となりうる大誠が現れたが、これまでの人生経験から信じきれていない。期待しなければショックも小さいため、逃避はある意味で延命でもある。
「助けを求めれば良かった」と言うのは簡単だが、誰も助けてくれない鹿乃にそれを言うのは酷な話。
双六を通じて魂の密度を高め「もう──あんな薄っぺらい連中は怖くない」と言えるほどに精神を成熟させた。双六で最も成長した人物。
口先だけでなく体を張って手を差し伸べてくれた大誠に人生観すら変えられ、誰も私のことを受け入れてくれないから死ぬ→助けてくれた人がいるから生きる。というシンプルなエピソードが、なかなか胸に響いた。
◇カラス
反則で双六に乗り込む。暗黒期をなるべく思い出したくない暁・鹿乃とは逆で、自身のルーツを追い求め己だけを信じる。
最後の最後まで他人は利用するものでしかなかった点が黎と異なり、それ故に縁を結ぶことなく追放された。
東京の族の総長<榊黎<カラス<クレア・バークリーという力関係が成立している。
クレア・バークリーがいる限り京都は安泰。
◇榊 黎
高スペックで才色兼備。
暁や鹿乃は底辺から引っ張り上げられて縁を結んだのに対し、黎は見下されて対等な立場となった。
>俺たちが出会ったのがたまたまあそこだったって言うだけだ。現実も双六もネットも何も関係がない
>たとえどこでむすばれようが、人と人との縁には違いないと暁は言う。
>それを聞いている京楓やクレアら4人もまた、暁の論に同調している。
この物語全般に通ずる理屈であり、最終決戦に説得力を持たせていた。
◇クナド
暁が占いにハマる切っ掛けを作った妹。……不明瞭な点が多く、内面が見えてきたのは西院双六くらいでサブの男性より印象が薄い。みさきのパンツの色を知ってた理由は謎。
■雑感
京楓…救世主かつ同居人かつ幼馴染
みさき…京楓に紹介された幼馴染
クレア…あまり話さない同級生
琥珀…たまに会う猫
>己の意志ではっきりと、道を選ぶ時が来たのだ。
OPムービーやシーン回想の並び順はゲーム開始時の暁との距離感。(シーン回想と最後の選択肢はクレア/琥珀が逆)
立ち位置が敵のため、京楓が味方になるのは西院双六だけ。圧倒的な親近感から順当に行けば京楓と結ばれるのが自然。だがみさき・クレア・琥珀は双六で終始味方だったために一気に距離が縮まる。
別の出会いでも良くしてくれたみさき、人間の感情を覚えて好意を向けてくれた琥珀、ネット・クラスでも繋がりのあったクレアの三人の双六での告白を現実でも受けるのか、それとも現実の救世主の京楓なのか。四択時には誰を選んでもそれなりに自然になっていたかなと。双六を経て京楓一人勝ちのアドバンテージがほどほどに埋まっていた。
ついでにみさき・クレア・琥珀は一度は双六で相思相愛になったので、暁が誰と結ばれようが他三人は少なからず悲しい想いをするわけで、ずっと好きだったのにと京楓一人だけが悲しく枕を濡らすことにはならない。選ばれなかったヒロインのその後はあんまり描かれないけど。
■良かったところ
各自に信念があり、双六を通した掛け合いや衝突が見所。
「人はひとりでは生きられない」
>ボクはともかく、アキラにとっては絶対にあっちのほうが幸せだから。ボクもアキラに幸せになってほしい
>私たちは恋人で、対等な縁で結ばれてるんだから──どっちが勝ってもおんなじなの!
暁は京楓に報いるために料理を覚え、京楓は暁との立場の違いを理解しつつも暁に気を遣わせたくないと、互いに思い合っていた。時には自分を犠牲として相手を持ち上げる姿勢などは、相手への尊重が感じられる。
暁もみさきも鹿乃の心情そのものは否定していない。あくまで、自分や仲間の生命を守るために信念をぶつけ、鹿乃をも救おうとしていた。
生まれ持ったものも環境も自分の意思が介入する余地がない。
京楓はあらゆる不平等を平等にできるわけではなく、みさきは芽がない親戚を見捨てるし、暁も自らの暗黒期を連想する存在の鹿乃を救えない。何もかも望みどおりにはならないし、抱える物は皆バラバラだが、手を取り合えば明日に立ち向かえる。ありきたりなテーマだが、説得力を感じられた。
記憶を失った双六でのやり取りがプレイヤーにも明記されている反面、幼少期や学校での日常描写にはそこまで尺が割かれていないが、これは好意的にとらえた。
プレイヤーに見えない部分でも、恋愛に至るまでの過程に色々あったのだろうと感じられた。同居して二段ベッドで一緒に寝るほどに距離が近い京楓はこれが顕著。
■エロ
初体験こそ普通だが、2回目以降はややアブノーマルな方向へ。初読の感想は正確に覚えていないが、斜め上に行ったのでどうしてこうなったと感じた覚えがある。
デレッデレの京楓だったり、中出し以外許さないメス猫になったりと、共通とは違った一面を見せてくれる。切ない別れでプレイヤーもお預けを食らっていた琥珀などは、ギャップが特に強い。
このキャラならありえそうと思えるギリギリのラインは、笑いとエロさの両方を提供してくれた。
対等な関係を意識していた共通とは色合いが異なるが、恋人になるほど強い信頼関係を得たなら、エッチの時くらいは上下関係作っちゃってもいいよね。射精管理なんかは親しいから許される悪ふざけの延長線上。
■難点
誤字が結構多い。簡単に確かめられるのはクレア回想2枠目の「初めて舐めたけど……以外とつるつるしてるね……」
凝った言い回しや常用外漢字も多いだけに、より一層気を使ってほしかったところ。
・「にも拘わらず」を全て「にも関わらず」と表記。
・相変わらず琥珀は表情から伺いづらいが(「窺う」と「伺う」の誤変換。)
・サイコロで6以上の目を出すことはできない。(7以上の間違い。「出せない」の方がすっきりした表現)
・「心(ちから)比べをしようか」のボイスが「こころくらべをしようか」
など。
時代を考えるとちょっと古いコンフィグ。最低限は揃っているが、OP見返し機能は欲しいし、CGモードはキャラごとに分けて欲しかった。
物部総司が色々と不明瞭
一応語られはするものの、戒を得たい動機や経緯が説明不足に感じた。
琥珀は好きだが、存在自体にご都合感がある。細かい気になる点はちらほら。
■ゲーム外の情報
・公式サイトの登場人物の「登場しない。」は嘘。無理矢理補足できなくもないが……。
琥珀は(人間の姿ではエンディングまで)登場しない。
クナドは(ゲーム開始時点で死んでいるので)登場しない。
物部は(駒としては終盤まで)登場しない。
・げっちゅ屋で東雲暁174cmとなっているが、作中のCGでは低く見える。