深沢豊三部作の最終作(応用の応用編)。最高のハッピーエンドを噛み締めて前へ進むための物語。セルフオマージュ元である2nd LOVEでの予習を必要とする点が最大の難点だろうか。できるなら応用編の書淫、或いは失われた夢の物語。も。あの深沢豊の作品!?といってこの作品をまず手に取るのはオススメしない。ゲーム同様、順を追ってほしい。
この作品の感想の感想だが、主人公のラスト付近の言動がよくわからない、というのはよく見た。
あのラストは何なんだと。
あれは深沢世界観における「おきまり」。
2nd LOVE、書淫、或いは失われた夢の物語。がそうであったように、
主人公が思索の果てに現実を受け入れた上で、
最高の…しかしもはやありえない内容のハッピーエンドを妄想して噛み締めて、過去と決別し前へ進むための儀式の描写である。
…なのだが、それをわかってそうな感想はそれほど見かけなかった気がする。
2nd LOVEと書淫を踏まえた上でのセカンドノベルなのである。
セカンドノベルでは深沢世界観の応用の応用編をいきなりやられてるわけで、
深沢豊作品なのだという前振り無しに理解するのは難しかろうとは思う。
作中にはTrue colorという作中作が登場し、これが基本的な深沢世界観の提示…になっていればよかったのだが
実のところ、True colorですら「応用編」という塩梅なのが悩ましいところである。
そういうわけなので、この作品を楽しもうというのなら基本の2nd LOVEは必須レベルの予習。
応用編の書淫、或いは失われた夢の物語。もやっておくべき、というかなりハードルの高い作品なのである。
あの深沢豊の作品!?といってこの作品をまず手に取るのはオススメしない。
以下、2nd LOVEと書淫のネタバレ込みの感想。
深沢三部作の最初、2nd LOVEは深沢世界観の基本がわかり良い形で描写されている。
構造も簡単。
真の主人公が一人頭の中で色々物語を紡いで思索している。
プレイヤーはそれを見せられる。
しかし自我が邪魔をして、どうやってもハッピーエンドにならない。
物語を紡ぐという思索の果てに、愛する弟の自殺という事実と向き合い、受け入れ
もう絶対にありえないと理解した上で、弟との「最高に幸せなセックス」を妄想して踏ん切りをつける。
そして前に進むところでエンド。
思索・決別・前進。
これが深沢三部作の基本フォーマットなのである。
これが書淫、或いは失われた夢の物語になると、
思索・妄想しているのは真の主人公ただ一人ではなく、介入してくる他人が出てくる応用編になる。
最後は恋人の死を受け入れ、一生贖罪する必要はないと悟った上で
贖罪ではない「最高に幸せなセックス」を妄想し、現実世界に帰ってくる。
で、応用の応用編たる本作。
True Color、True Color,、セカンドノベルという3段階の構造になっており、
なおかつ、過去を清算する対象が一人ではなく複数人いる。
2nd LOVEは一人だけの物語。
書淫、或いは失われた夢の物語。も一人だけだが、他人の介入がある。
そしてセカンドノベルは複数人が複数の物語を、内包する・付け足すという形で紡ぎあうのである
まさに応用の応用編。
が、エロゲじゃないので「最高に幸せなセックス」は描写しかねる。
というわけでキスシーンなのだが…
スパッとセックスシーン一発で幸せの描写と決別を決めるエロゲ前2作の発想の良さと比較すると
キスして回って学園祭をやるシーンというのはどうにも冗長な感じがしてならない気はする。
やはり深沢世界観はエロゲでなければならないということだろうか。
過去と決別するための最高に幸せな描写。
それはやはり「セックス」。キスだけじゃもの足りない。
体も心も深く一緒になるのが、シンプルに最高の幸せ。
仮令それが妄想なのだとしても。
以下、5chに投下した乱文。
5chも危うそうなのでとりあえずコピペ。
・セカンドノベルは2nd LOVEの大幅改変リメイクである。
セカンドノベルの本編中には深沢氏の過去作タイトルネタが入っている。
入っていないのはイザヨイと2nd LOVE。
イザヨイは企画を担当したわけじゃないそうだから入っていなくても納得ではあるが、2nd LOVEが無いのは不自然な感あり。
が、セカンドノベルというタイトルからして、すでに2nd LOVEのセルフオマージュになっているのだとすれば、
その内容もセルフオマージュと解するのが自然。
実際、「屋上から落ちようとするヒロインの手をつかむ男主人公」「インパクトのある噂話(怪談)を望むヒロイン」「ヒロインが物語を作る物語」「仲の悪い両親(再婚を示唆しているのも)」など、
2nd LOVEを構成する要素が、セカンドノベルにも多々現れてきている。
とくに「ヒロインが物語を作る物語」という根幹が共通しているのは、セルフオマージュとして決定的であろうと思った。
・セカンドノベルの構造は2nd LOVEの拡張
2nd LOVEという作品の構造は、
「悲劇で終わった1st LOVEとでもいうべき過去」「過去を乗り越えるため作った2nd LOVE」「2nd LOVEを通じて1st LOVEを終わらせる3th(rd) LOVE」
という三段構えである。
セカンドノベルはどうか。
「悲劇で終わったTrue Colorという過去」「過去を乗り越えるため直哉が書き足したTrue Color,」「True Color,を通じて前に進むためのセカンドノベル」
となる。
ヒロイン個人内で完結していた2nd LOVEに比べると、セカンドノベルのそれは複数人の物語となっている点で、複数主人公に拡張された2nd LOVEともいえる。
・セカンドノベルではあやふやとなってしまっている過去を2nd LOVEから引き出してみる
「悲劇で終わった1st LOVEとでもいうべき過去」では、「異母姉弟の姉と弟が愛し合っていた」「その弟を愛そうとした教師」「弟の自死」が事実として存在した。
「悲劇で終わったTrue Colorという過去」にその要素を当て込むと、以下の点が浮かび上がる。
・・彩野と現実のユウイチは異母姉弟(兄妹)…作中でもアヤノとユウイチの幼馴染以上の強い同質性を示唆するくだりがいくつか存在する。
・・彩野は現実のユウイチを愛していたし、現実のユウイチもまた然り。
・・現実のユウイチは、結局は好意を寄せる友加里を受け入れず、彩野とも背を向けてこの「自死」という形でこの世を去った。
・セカンドノベルは2nd LOVEを置換可能
2nd LOVEは作者の方から書淫、或いは失われた夢の物語。との繋がりを示唆されている。
構造が似通っていれば、要素も多数共通するため、置換した上でセカンドノベルから書淫につなげることは難しくはない。
むしろ、まんま「ユカリ」さんが登場するのであるから、分かりやすいとも言える。描写される「学生の頃からの癖」も同じである。
・過去の恋愛を「清算」し、前に進むための物語
2nd LOVEや、書淫、或いは失われた夢の物語。がそうであったように、
セカンドノベルもまた過去の恋愛「物語」を「清算(3th LOVE、4rd LOVEのように)」し、前に進むための物語である。
・・現実のユウイチを愛した彩野と友加里を、現実のユウイチから振り切らせるための物語
・・・振り切る手引をしたのは、かつて彩野に事実上拒絶された直哉である。ユウイチになりきることで、直哉は彩野と友加里をも「振り切らせた」のである。
・・彩野を愛した直哉を、彩野から振り切らせるための物語
・・・振り切る手引をしたのは、千秋である。それが「セカンドノベル」。
「True Color,」のラストのままでは、直哉は彩野にとらわれたままなのである。
「True Color,」の結果、己の恋愛が「成立してしまった」直哉は、記憶が継続しない彩野を一生支え続けたであろう。
しかし、千秋は「事実」を調査し、「セカンドノベル」を紡ぎみせたことで、直哉を彩野から「振り切らせ」る道筋をつけた。
彩野は15分しか記憶が続かない。
せっかく成立した恋愛も、15分で終わりなのである。
15分を超えて恋愛を持ち越そうというのなら、手帳にメモを残す方法があるかもしれないが、
事実が引き継がれるだけで、気持ちの高鳴りのような感情的なものまでは引き継げまい。
それを承知の上で、彩野を一生支え続ける選択を直哉がしたのだとすれば、それはあまりに悲しい、悲しすぎるお話である。
そんな選択がハッピーエンドなわけない。前向きな訳がない。救いがなさすぎる。
でも、「セカンドノベル」を未読の直哉なら、その選択肢を選び得た。
だから千秋は、「直哉のために」「セカンドノベル」を紡いだ。
本来、彩野の1st LOVEを清算させた時点で、直哉の役割は終わっているはずなのである。
しかし、直哉は彩野を愛していた。彩野は「True Color,」の結果、直哉の思いを受け止めた。
彩野は、直哉との恋愛を手帳にしるし、事実だけでも記録しておく事はできたはずである。
しかし、それをしている気配はない。
むしろ、「世界遺産の好きな彼女」のような存在が現れたなら、今度こそは手放さないよう「忠告」している。
「True Color,」を紡ぐ前と、後でもこの同じ忠告をしている。
彩野は直哉の思いを受け止めてなお、この結論を変えなかったのである。
もし、「世界遺産の好きな彼女」のような存在が直哉のもとに再び現れたならば、
彩野は笑顔で直哉を送り出すに違いない。そして直哉が自分にむけた愛を一生忘れ、思い出すこともないであろう。
「知らないほうがよいこともある」のである。知っていれば、悲しすぎるから。ある意味、死んでいたほうがマシかと思えるほどには。
そして直哉は、今度こそは前に進み、幸せを逃がさないに違いない。ちゃんと過去を清算したから。
・なにをすれば過去の恋愛を清算できるのか
条件は2nd LOVEや、書淫、或いは失われた夢の物語。と同じく以下の通り
・清算対象の人が「重要な事実、および現状を全て正しく認識」すること
・・ただし、頭ごなしに事実を伝えるだけではNG。伝わらないし、認識させることは出来ない。反発を生んだり、腑に落ちなかったりして失敗する。
・・「順を追って」「一つ一つ丁寧に」ある意味追い込むかのように認識させることが重要。
・上記条件を満たした上で、清算対象の人自身が、「ありえたハッピーエンド、あるいは最も幸せと感じるであろうシーンを想像する」事によって清算は達成される。
ハッピー「エンド」を迎えた以上、過去にとらわれる理由を失い、前に進むしかなくなるのである。
・・直哉の場合、セカンドノベルにおけるあのラストCGのシーンとなる。「セカンドノベル」を読んだ後の、直哉の「ありえたハッピーエンド、あるいは最も幸せと感じるであろうシーン」である。「絶対にありえない構図」でもある。
・・友加里の場合は現実のユウイチがどういう行動を取り、どういう心境であったかを把握した上で、現実のユウイチとのハッピーエンドを想像し、そして振り切った。
・・彩野の場合は、「True Color,」によって彩野自身が現実のユウイチを愛していたという事実に気づき、直哉が自分に愛情を向けていた事実も把握、佐倉の勘違いの状況等を利用して、
現実のユウイチと直哉を意図的に混同した上での一挙両得的なハッピーエンドを想像、敷衍した。
彩野が「清算」完了していることは、「True Color,」以後も変わらず、今度こそは彼女を手放さないよう直哉に「忠告」していることから明らかである。