意欲作。むしろ最近の方が、こういう手の込んだ作品は見ない気がする。
アニメop、戦闘演出、膨大なcg数と、この作品に割かれたコストは結構なものであったのじゃないか、と。ローコストでの制作が強いられているであろうエロゲー業界のなかじゃ、めずらしい部類だろう。事実、近年のアプリコットさんは、こういう方向の作品は出していない。昔だからこそ・・・ということか。
以下、ネタバレ含め、各シナリオ(ヒロイン)の感想と、評価点、不満点。
≪感想≫
エイム
予想通り、王道。読んでいて一番楽しかったのは、彼女と和泉を重ね合わせることで葛藤とすれ違いが生じていたあたりのところ。あと、どうでもいいことなのだろうが、明確な処女描写がなかったのがひっかかった(俺、処女中)。たぶん、処女だろうけどさあ。
陽愛
ヤタガラス出現! よし、これからどうなる!? と期待したはいいが、結局、いつもどおり“彼”とバトル。その新たなアヤカシも最後に出てきて「導く」だけ。わくわくしただけに拍子抜けだった。陽愛については、髪下ろし、全裸で正常位に騎乗位――尺が短いながら、おかずに使ってしまった。
パム
彼女の成長も描かれたところがよかった。チビの死を通して、命の尊さ(?)を実感し、悲しみを覚えるといった展開は整合性もあり、感情移入しやすかった。ただ、彼女自身のルートよりも、エイムルートでの貢献っぷりの方が印象に残っていたりする。すげえいいこじゃん、て。
織江
竜の再生の能力を描いた点、“彼”が深くシナリオに関与しない点で、他のルートとの差別化ができていたと思う。ただ、少なくとも最後に読むべきシナリオじゃないわな(自分は一番最初にプレイ)。彼女が何故、和泉の姿をしていたのか、明かされたときは素直に感心した。
≪評価点≫
・演出が良い。2015年の時点でプレイしても、古臭さ、チープさがない。絵の数も渋らず、表現したいものを遺憾なく表現しているようだ。最近の、ヒロインのスチルだけ描きゃいいだろ的な紙芝居ゲーじゃあ、こんなに主人公やサブキャラを立ち絵以外で描かないだろう。
・ヒロイン、サブキャラ、主人公含め、キャラが立っていて魅力的で世界観も良い(何かの何番煎じだろとか、粗を探せば出てきそうだが)
・熱いバトル展開により、わりかし退屈なく読み進められた。ただし、わりかし・・・。
≪不満点≫
・個別ルートに入り、終盤へ進むと、そのまま駆け足で戦って戦って、エンディングへ。拍子抜け感が否めない。
・基本、戦闘は力と力のぶつかり合いで、根性で何とかなる。それだけに単調で飽きる。熱い中二バトルでいいじゃないかともいえるかもしれないが、9割が同じ展開(言い過ぎか)の戦闘じゃ流石に飽きる。もう少し、駆け引きとかあるとよかったんじゃないか。
・基本、ラスボスが一緒で、結局、戦いもその決し方も同じだから、織江ルートを抜かしては、シナリオの差別化が不十分に感じた。つまり、似たり寄ったり、と。
≪総括≫
とまあ、評価できる点もあるもの、不満も多い。上記の不満点を解消できれば、俺のなかで85点、90点にまでのぼる作品になったと思う。
ただし、基本、美少女恋愛(紙芝居)ゲームが大半を占めるエロゲー界のなかで、異彩を放つ意欲作であったことは本当に評価したい。