エロもシナリオも濃く――ブランドには今後もその方向性で頑張ってほしい。
エロゲーに手を出すとき、その目的ってなんだろうか、と。なかには、18禁要素はあくまで表現の手段として、エログロのある作品を求める。あるいは、シナリオなんていらねえ、女の裸見て抜けりゃいいのよ、なんて人もいると思う。
俺に関して言えば、身体の関係含め、ヒロインとの恋愛をゲームを通じて体験したいからだ。読み応えのあるシナリオも欲しいし、濃いエロもあるとなおよいと思ってる。そういう点で、今作は俺の需要に初めて(ほぼ)応えた作品として、90点台に評価する。以下、エロゲーについて思うことを長記。作品そのものの感想は更に後で。
≪エロゲー、ジャンルを踏まえての所感≫
ジャンルとして、「抜きゲー」や「萌えゲー」「いちゃラブゲー」ってあるけど、個人的にこれらには否定的な立場だ。
前者は、シナリオよりもエロを優先し、ユーザーのシモに応えるといったもんだ。ただ思うに、感情移入させるシナリオや魅力的なキャラ付けがあってこそ、抜けるってもんじゃない? 会ってすぐの人間に股を開くヒロイン。正直、主人公のどこを好きになって恋人になり、エッチするの? と、俺は必ずツッコミを入れる(要は整合性に足らないってことだ)。もちろん、抜きゲー自体持ってるし、常駐しているのもあるけど、シナリオとキャラ付けがあるに越したことないでしょ、て話。
後者二つは、ヒロインと恋人になって(ひたすら)イチャイチャするのを楽しむ――ってやつだったと思う(適当だが)。言い換えれば、「キャラゲー」なんて言われるとも思うが、これに否定的な理由にまず一つ。そういう作品の大半は、キャラクターの属性もテンプレで、その属性を掘り下げるような設定も用意されておらず、平坦なシナリオしか続かない場合が多い、ということだ。もうひとつが、恋人になった後、ただ山もなく、イチャイチャエロエロするだけという場合が多いから。その場合はもう、だれる。個人的に、恋人になった後よりも、恋人になる前の駆け引きみたいな関係を読む方が好みというのもあるが。
まとめに入ると、俺はエロゲーに、「キャラクターや世界観など含めた、感情移入できるシナリオ」と「エロ」の二つを求めていている。その点で、抜きゲーはそもそものシナリオがダメ。萌えゲー、いちゃラブゲーは、キャラだけで感情移入できるシナリオに足らない。もちろん、これはあくまで俺がプレイしてきたゲームのなかでの話だし、なかには例外もあると俺自身も認めている――ことも留意いただきたい。
そこで現れたのが、今作だ。俺の求めた二つを(ほぼ)満たした点で、評価したい。
前々から、このブランドは作ったゲームがアニメ化されていることもあり(efは未プレイ)、『夏空のペルセウス』から始めたブランドの方向性については、共感し期待したもんだ。ただし、『夏空のペルセウス』、『12の月のイヴ』については、各々の理由により、俺の期待を十分には満たしていなかった。
今作は、体験版プレイ時より期待は高く、製品版もその期待値を(ほぼ)保ったままプレイできた。満足のいく作品だった。ブランドの今後に期待したい。
以下、作品に関して、ネタバレ含め感想。各ヒロイン(シナリオ)について、評価点、不満点、と続く。
≪感想≫
はるか
最初に選択。
胡散臭い言動の後輩。普段から何を考えているかわからない感情の荒波。そのなかにかろうじて見られるときがある、本当の思い、恐怖。なるほど、心が読める主人公に対し、こんなヒロインをあてがうか――と素直に感心させられた。ミステリアスな少女の本質に迫っていくシナリオは、非常に引きこまれ、俺にとって斬新だった。
あと、ヒロインのなかで一番、おっぱい大きい。もちろん、おかずに。
真響
必然的に二番目のシナリオ。
シナリオ自体は、上記のはるかルートに比べて特筆するものもない。幼なじみとの恋愛、それを通じての主人公の成長、メインヒロインの永遠交えての三角関係、と。真新しいものは、正直、ない。
が、そんなマイナスを補って余りあるほどに俺の心を惹きつけたのは、ヒロイン真響そのものである。もう、ひたむきに主人公に好意を表し、付き合う前、子供の頃から主人公を想い、思いやり続け、これでもかってくらいの献身ぶりに心が撃たれた。シナリオに真新しいものはない。けども、ヒロインはこの上なく好きになれた(俺のエロゲー歴のなかでもベスト3には入るんじゃないか?)。思ったのが、これこそ俺にとっての「キャラゲー」じゃないか、と。
ヒロインのなかでは、一番おっぱいは小さい。けど、十分、巨乳。最後の騎乗位、ラブ握り中出しエッチは、これからもお世話になり続けることだろう。
最後に一点、彼女の容姿でチャームポイントを挙げるなら、なんといってもあの瞳だろう。エメラルドを基調にした不思議な色合いが、ドキリとさせられる。あれがすべてではないが、あの瞳があるかないかで印象は変わっていたのではないか。
永遠
最後に固定。もう皆言っていることだが、本作をプレイする上で、彼女をどう思うかで評価も変わることだろう。それだけ、シナリオの根幹にかかわっている。彼女が嫌いな人は、それだけでこのゲームの評価を貶めかねない。
で、俺はというと、嫌いというほどではないが、前二人のヒロインの方が好きである。そして、最後の彼女のルートは、正直、微妙だった。ぶっちゃけ、不満点は彼女のルートにほぼ集約される。
第一に、永遠と主人公が再び付き合う、そして夫婦になるまで、あっさりしていやしないか? もっともっと葛藤とかあるんじゃないの、と。もちろん、前ヒロイン二人のシナリオで、永遠が主人公のことを別れても想い続けていたことは、ユーザー視点からはわかっていたことであり、ここで引き伸ばしても中だるみするかもしれない。ただ、それでも俺はもっと、葛藤、心と心の摩擦を描いてほしかったと思う。
第二に、最終的に永遠の心が壊れる、といったことを理由に主人公と別れようとする⇒そこを主人公が能力でもって救い、ハッピーエンドという展開であるが。これ、「心が壊れる」て具体的にイメージがつかないんですわ。いや、無感情になることだってのはわかるんだけど、いきつくところ、「だ・か・ら・な・に」なのである。面倒だな、この女、と思ってしまったのだ(まあ、主人公もウジウジ考え込むキャラだからお似合いだとは思う)。もちろん、その面倒さが人によっては彼女の魅力に見えることはわかってはいる。が、最終的に、俺にとっては、「面倒な女」で決着してしまったのだ。体験版時点では、「クセがあるけど、今後の展開で好きになれたらなあ」と期待はしてたんだけどな・・・。
そもそも――これは作品の題材を否定するような発言だが――「心の壁」というテーマは、抽象的でイメージしづらく、それを理由にヒロインに感情移入できないのではないだろうか。俺自身、SFは好きなジャンルだし、抽象的なテーマが悪いというわけじゃない。だが、このゲームの主題は「恋愛」だろう。ヒロインをキャラクタライズするのに、ユーザーに真に感情移入させるのに、適した題材ではなかったのではないだろうか? もちろん、これはあくまで俺の主観だし、「心の壁」を持ったヒロインなんて、最初きくときはウケもよいに違いない。
最後に、「あっさりしたご都合主義」で物語が終結した(俺は感じた)ことを挙げる。先にも述べたとおり、最後、主人公の能力により、閉ざされようとする永遠の心を解放して、めでたし、めでたし、とハッピーエンドで終わる。語弊はあるかもしれないが、その問題の解決に到るまでがあっさりしているために、俺にとってはご都合主義然と感じてしまうのだ。いっそ、一回、永遠の心が崩壊してしまう――それからの物語を描くのもアリだったんじゃないか。
思えば、前ニ作も同じような終わり方だった気がする。いずれも、主人公が何らかのSF能力を用い、メインヒロインを救うものだ。ただ、その過程が「あっさり」しているように感じられてならないんだ。物語の根幹に携わるSF要素を無視して物語を終えることはできず、物語の最後にそのSF要素との決着をつける、との考えはあるかもしれない。だが、過程が「簡単に」描かれていては、カタルシスを得るには及ばない。
別にハッピーエンドは否定しない。だけど、カタルシスに欠ける、あっさりしたやつは、ダメなんだ。
前二人のヒロインが良かっただけに、期待が膨らんだのも、落差に拍車をかけたのかもしれない。
余談だが、まさかメインヒロインが母乳属性持ちなどと、誰が予想できようか。
≪評価点≫
・シナリオ全般を四部構成にたとえると、起(体験版終わりまで)と承(はるか、真響シナリオ)は引き込まれるくらい面白かった。
・エロへの追及。個人的には、前に作品にはないh効果音がついたのが、地味に評価が高い。ただ、これまた個人的意見だが、セックス中のクチュクチュ音については、ただ液の混ざる音だけでなく、肉と肉がぶつかるピストン音がほしい。一方で、射精したときの効果音が、ピューピューピューと絶頂が続いているような感じで好きだった。効果音の出来については、手放しにいいとはいえないが、その試み――エロへの追及については、評価したいところ。
・各ヒロインが個性的かつ魅力的であった。
・全体的に無駄がない文章で、各ルートごとの起承転結がしっかりとれていて、中だるみせずに読めた。
≪不満点≫
基本的に、上記に述べたとおり。それ以外に挙げるなら、
・・シナリオ全般を四部構成にたとえると、転結(永遠ルートからエンディング)までが、起承までの勢いから失速した。
・サブキャラが薄い。マキはムッツリ、静先輩は変人と、作品を彩るためにキャラクタライズされてるみたいだが、「それだけ」で終わってしまう。そう、掘り下げられてないのだ。単なる属性でしかない。ぶっちゃけ、主人公の友達ポジションの彼なんか、「いなくてもいいじゃん」というくらい、だ。
・主人公のキャラが、もはや食傷気味。前ニ作に比べ、能力と向き合い、成長していく過程が描かれているため、多少は良くなったが、基本、みんな「大人しく内向的な」少年だ。ほか、前ニ作は「クール」「理系」といった感じのキャラ付けがされている。ただ、そろそろ次はこういった主人公のテンプレ性格を変えてみてはいかがだろうか。
≪総括≫
攻略順:はるか⇒真響⇒永遠
シナリオの出来:はるか>真響>永遠
ヒロインへの愛着:真響>はるか>永遠
結局、俺のなかでこのゲームの評価を落としたのは、主に転結にあたる永遠ルート(他は上記のとおり)で、俺のなかで永遠が「面倒な女」で終わってしまったのが惜しい。「面倒・・・だけど~」と、+αを得られるほど感情移入できなかった。
そして、前ニ作からやってきて、俺のなかで出た結論が一つ。
SF要素を入れるものの、それが「恋愛」というテーマとの兼ね合いで足枷になっているのではないか――ということだ。先程、評価点に「無駄のない文章」を挙げたが、無駄がないだけにSF要素に関する主人公の物語の決着についても、簡潔に終わり、結果、ご都合主義と感じるような終わり方になってしまっているのではないか、と。自分でもうまくまとめられていないと思うが、言わんとすることが伝われば、と(汗)。
これだけ、作品を批判するようなことを書いても、俺はこの作品を高く評価しているつもりだ。ヒロインとの恋愛を、身体の関係含め、引き込まれるシナリオの元、体感することができたと思う。minoriさんには、今後とも、そのコンセプトで頑張ってもらいたいものだ。
ただ、そのうえで、ライターの関係上か、シナリオの方向性は“食傷”を覚える。次回作は、コンセプトは変えずとも、今までと違う主人公、恋愛の描き方で表現してもらいたいものだ。
※主観による発言のくせして、断定的な表現が多かったと思います。すいません。