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nanisamaさんのひとつ飛ばし恋愛の長文感想

ユーザー
nanisama
ゲーム
ひとつ飛ばし恋愛
ブランド
ASa Project
得点
79
参照数
1097

一言コメント

バカゲー路線三作目にして、流石の安定感。しかしマンネリ感も・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今回は、家族や親族や幼なじみを介して、ヒロインと仲良くなっていき、結ばれるという「一つ飛ばし」恋愛とのこと。毎回、作品に他にはないコンセプトを与え、笑える作品を作ることがこのブランドの良いところだろう。
一言感想のとおり、安心できる安定さだ。だが、既視感さえも覚えるのが、一抹の不安を誘う。

以下、各シナリオ(という名の漫才)、ヒロインへの感想、評価点、不満点など。

≪感想≫

園原 碧里
体育会系の後輩。付き合う前からも、ノリよく応じてくれるところが「俺もこんな異性の後輩が欲しかった」と思わせるのに十分だった。電車通学のやり取りとか、プレイヤー男子の心を高揚させるのにいい切り口だったんじゃないかな。
皆言っていることだが、妹との一つ飛ばさない恋愛も見たかった。ただ、それはあくまで、ifということか・・・。

蒼木 夏芽
ぶっちゃけると、他のヒロインと比べ、印象は薄い。なんだかんだで記憶に残っているのは、姉に振り回されていたところ。遠野そよぎさんも、こういった優等生タイプよりも、以前の作品で演じたような“ハジけた”キャラの方が合っているんじゃないだろうか。

玉森 桜
主人公の幼なじみに首ったけの、百合女子。彼女のルートに入っても、「こいつ、攻略できんのか」と冷や汗をかいたもんだ。いっそ、幼なじみのおっぱいに顔を埋めて、バッドエンド直行でええよ、もう! なんて考えもしたが、だが意外。結構、普通に主人公と恋愛できているじゃないか。地雷かもしれんと思ってこのルートは最後に回したが、想像したよりも楽しめたのを覚えている。

寿 りさ
今作のギャグ担当。前二作に比べても、ただひたすらギャグにギャグを重ね、ギャグのまま駆け抜けたといった感じだ。むしろ、ギャグしか残らねえというくらい(いやまあ、ヒロインにも多少は萌えたけどさあ。ぶっちゃけ、いとこの方が気になった人、他にいない?)。
メタネタが多めだったのが気がかりではあったが、総じて面白かった。

≪評価点≫
・バカゲーのなかにも、ヒロインとの甘酸っぱい恋愛描写は描けられているところは好印象。美少女恋愛ゲームとして、ただの漫才で終わっていないところは履き違えていない。←いや、りさルートは(ry
・一つ飛ばし恋愛というコンセプトも、物語のなかで一応は落とし込めていたと思う。

≪不満点≫
・諸氏が述べていることだが、一つ飛ばさない恋愛も見たかった。特に妹。碧里と付き合う前に、紅が告白した場合のシナリオとか見たかったなーって。個人的に、藤咲ウサさんの演じる気だるげ系ボイスキャラはツボなんで、それもあったとは思う。ただ、ブランドはファンディスクもおそらく出さない方針だろうし、あくまでメインはメイン、サブはサブで、その線引きはしっかりすると決めているのだろう。妹が人気出るのは容易に想像できただろうに、ifを描かなかったのは、つまりはそういうことなんだろう。
・マンネリ、既視感。メタネタが多いのが、(たとえば、アッチむいて恋とか前タイトルをヒロインに口にださせてたり)ある種の行き詰まりを感じる。いやまあ、これが杞憂であればいいのだが・・・。で、既視感を加速させているもう一つの理由が、“役割分担”だ。
これまでの三作で、ヒロインの役割が少なくとも二分されているように思える。萌え担当と、ギャグ担当だ。
                萌え担当    ギャグ担当   
あっちむいて恋        朱        優由
恋愛0km         実咲 華      及来亜
一つ飛ばし恋愛       碧里        りさ
※これはあくまで、俺の主観によるものであることを留意いただきたい。

いや、別にいいじゃん! という人もいると思う。確かに、三作目にしても、全然面白く、言うほどマンネリがあったわけじゃない。だが、次も、次の次も、次の次の次も――ずっとこの“役割分担”が続くのならば、飽きるんじゃないか、と。ああ、ここでこいつがボケるな、ああ、今度の萌え担当はこの娘か、とかね。それが不安なんですよ。

≪総括≫
十八番というくらい、板についたバカゲー路線だが、一抹の不安を覚える。今作の点数を80台に乗せなかったのは、そうした“ケチ”からだ。lただそれでも、その路線は貴重故、次回作にも期待したい。こういうくだらない(←決して悪い意味じゃない)方向のギャグで笑いがとれるゲームはなかなかないぜ。
あと最後に、あまり意味のない所感を一つ。
製品版が出るまで、ユーザーにも「メインヒロインとサブヒロインとの三角関係に期待」した人は少なからずいたんじゃないか。ただ、箱を開ければ、そうした三角関係の描写はほとんどない。後輩と妹の話が若干あるが、結局、妹は主人公に想いを告げずに終わっている。場合によっては、ドロドロとまでいかなくとも、主人公を取り合う、葛藤するといったシナリオの作り方もできただろう。が、Asa projectはそれを選ばない。当然、バカゲーの気質に合わないから、そうした三角関係の描写は省いたともいえる。あと、個人的に思うのが、これは“過去の教訓”も絡んでいるんじゃないだろうか。
二作前の『アッチ向いて恋』では、通常版のパッケージヒロインに選ばれている娘が、発売後の人気投票でメインのなかでも下位に沈んでいたようだ。これについて、ヒロインそのものが魅力がないという見方もできるかもしれないが、俺は違うと思う。このヒロインのみ、シナリオがシリアスでともかく重かったのだ(具体的な内容は、『アッチ向いて恋』のネタバレになるので控える)
つまり、余計にシリアスを加えると、ユーザーの心がそのヒロインから離れていってしまうと、そのときの人気投票でブランドが悟ったのではないだろうか。そして、一つ飛ばし恋愛のシナリオにも影響が出たと、そう思えてならない。あくまで想像だがね。
俺個人としては、三角関係が見たかった。もちろん、バカゲーの気質上、それは合わないかもしれないけど、それでも見てみたかった。紅ちゃんとのイチャイチャを。・・・それだけ。