ErogameScape -エロゲー批評空間-

nanachanさんの彼女は天使で妹での長文感想

ユーザー
nanachan
ゲーム
彼女は天使で妹で
ブランド
ALcotハニカム
得点
73
参照数
913

一言コメント

相変わらずアホな日常“は”楽しい。人生にはそういう割り切り方も必要なんですよ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

最初からばっさりいっちゃうと、本作「いもてん」について抱いた感想ってのは、同ブランド同ライターの過去作「サツコイ」に対するそれと大して変わらないんですよね。要は、「シリアスっぽい雰囲気を醸し出しているけど、『春ポコ』とか『あえ無視』とかと同じようなスタンスで楽しむのが多分正解」ってことです(不肖私の「サツコイ」の感想より引用)(サボったわけじゃないよ!)。

どういうことかって、これまた同ブランド同ライターの過去作である「春ポコ」や「あえ無視」をプレイしたことがないぞーって方向けに言うと、この二作、残念なキャラクターたちによる馬鹿丸出しな日常パート、コメディが秀逸な作品なんですよね。魅力の9割くらいはこの部分にあると言っても過言ではないです。

本作「いもてん」は上の二作とは違って、神ガーとか、天使ガーとか、死神ガーとか、いいの?シリアスっちゃうよ?って要素が序盤から見え隠れします。いう意味で、「サツコイ」とよく似ています(こちらはOHPからして「自分、シリアスりますから!」って隠す気さらさらない)。でもまあ面白い部分ってのが、やっぱり日常なんですよね。パロネタとかメタネタが結構多いので人によっては気になるとは思いますが、少なくとも自分は好きですね。瀬尾氏のテキストはやっぱり読みやすいし、読んでいて楽しいです。



で、シリアスなんですけど、上で言ったことって要するに「シリアスには期待するなよ?絶対するなよ??」ってのを10枚くらいの大量のオブラートに包んだもんなんですよね。包みきれてないかもしれないけど。


まず、シリアスの内容が、人の生き死にだとか、浮気孕まセックスバッチコイ(※両親がですが、ほぼモブな主人公たちの母親にまで純潔性を要求する限界なオタクはご注意願います。)なドロドロな家族模様だとか、それこそその筋のメーカーが扱ったら中々ヘビーになりそうな、ずっしりとしたやつなんですよ。これと日常との落差ってのが激しい。読み手からすれば、その変化に準備も心構えもしづらいので、ぽかーんってなっちゃうことも。それだけで済めばまだよくて、ぼくなんかは、特に人の生き死にについてコメディ織り交ぜながら進められると、それってそんなに軽々しく扱っていいもんかよっていう、ある種の拒否感までも抱いてしまいました。

特にそれが顕著だったのが未亜√。未亜√は、「謎パワーで未亜のお兄ちゃんとして生きることになる」っていう「宮○おまえ妹舐めてんのか?」ってメーカーのボスに向かって唾を吐きかけたくなるような内容も非常にアレだったわけですが(赤の他人にいきなり「お兄ちゃん」と呼ばれても嬉しくもなんともない。むしろ不快まである。)、この生き死にの扱いが軽く感じるってのも間違いなくダメダメな点でしたね。合わせ技一本で、個人的には本作で最も首を傾げた√でした。


それに加えて、神ガーとか天使ガーとか死神ガーとか、そういうシリアスの中核をなす神様関連の過去やバックボーンが十分に説明されていたとは言えないので、置いてけぼりを食らうというか、イマイチ話にのめり込めないというか。この点については、ネタバレとかまったく気にしないで言ってしまうと(今更)、本作はいわゆるループもので、ループを繰り返して主人公が「神」たる資格を満たしていくってな感じなのですが、その資格ってのがどういうものかあやふやで、主人公がループの中で一体何を得て、どんな成長をしたのかっていうのかが見えてき難いってことも、原因の一端を担っています。

要するに、神だとか、ループだとか、やたらと重厚な物語をやろうとしているのに、中身が伴っていない、ぺらっぺらい。大事なところに踏み込まない、あるいは掘り下げないで、上っ面をなぞって話として纏めているというか、そんな印象を受けてしまう。


まあでも、これブランドの色だとか、あくまでコメディメインだとか、そういうことを考えれば決して間違ってないんですよね。少なくとも、この題材を扱うのであれば、甲料理するのが正解だとは思う。ただぼくは、これ「サツコイ」のときも思ったんですが、そもそもこの題材扱わなくても良くね???っては感じますけども。「春ポコ」とか「あえ無視」とかの青春モノの方がどう考えても食い合わせがいいよなあって。



はい、じゃあ最後纏めます。なんかイマイチぼく自身の本作に対する心証ってのが見え難い文章になっちゃいましたけど、ぼくは嫌いじゃないですよこれ。元々「サツコイ」と同じようなスタンスで楽しもうと思っていましたし、やっぱり自分にテキストが合う作品ってのは読むのが楽しい。なので、ぼくと同じような楽しみ方をしたいって方にはおススメしますし、特に“あの頃”のハニカム文庫の雰囲気を感じたいって方にはいいんじゃないでしょうか。

あ、あと、羽鳥いちさんの演技がとても活き活きしているので、そういうの求めてる方もどうぞどうぞ。


PS. ALcotハニカムくんへ
君はいったい何度CV:藤咲ウサを攻略させなければ気が済むのですか?「キッキン」に続いて二回目ですよ?テトメトを入れたら三回目ですよ(おい)。仏の顔も三度までですからね?そこんとこよろしく(圧力)