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nanachanさんの花咲ワークスプリング!の長文感想

ユーザー
nanachan
ゲーム
花咲ワークスプリング!
ブランド
SAGA PLANETS
得点
59
参照数
7086

一言コメント

目的だったののかルートと祈ルートがあまりにも壊滅的過ぎたのでどうしようもない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

いきなりだが,俺が一番好きな原画家がほんたにかなえさんだ。他の原画家と比べても別格に好きで,この前の冬コミでもメロンブックスブースでほんたにちゃんのセットとブランケットが発売されるということで,他の何が買えなくても構わないからこれだけは欲しいと初手でメロンに突撃した程度には好きだ。そして一番好きな声優が安玖深音さんで,二番目に好きな声優が遥そらさんだ。前者については特に,安玖深音さんを知ったのが「夜明け前より瑠璃色な」の「朝霧麻衣」だし,その後も「MagusTale」の「天ヶ瀬小雪」や「天神乱漫」の「千歳佐奈」等良妹に恵まれてきたというのもあって,「妹(CV:安玖深音)」という字面が既に甘美なものに感じられる域まで達している。まあつまり本作というのは,「ほんたにちゃん×妹(CV:安玖深音)×遥そら」という俺にとってはまさに夢のコラボだったわけだ。

とは言ったものの,これまた俺の一番好きなライターである新島夕さんが抜け,しかもカルマルカで多くのユーザーに憤怒の摩訶を撒き散らした後となっては,サガプラ自体に大きな期待を寄せる気にもなれなかった。風の噂でこれまでよりも萌えを重視しているっぽいというのを耳にしていたので,ののかと祈と気持ち良くイチャイチャさせてくれればそれで良いかなくらいに思っていた。これが俺のプレイ前の正直な心情だ。

だがしかし,俺のそんな些細な願いさえ遂に叶えられることは無かった。確かにののかと祈はすげえ可愛かった。それは認める。だけど個別ルートの内容が個人的にあまりにも気に入らなさ過ぎて気持ちの良いイチャイチャなんて夢のまた夢だったよ!


①祈ルートの場合

まず主人公があかんね。俺も男だからさ女の子が悩んだりモヤモヤしたりしてんのはすげえ可愛いと思うし,実際祈のそういう姿は本気で可愛かった。けどさ,野郎が同じようにしてても別に見てて何も面白くないしさ,度を超えると女々しい,鬱陶しいなんてさえ思っちゃうのよ。「俺の気持ちは…?」とか「お前から連絡が来るか来ないかで、ずっと悶々としてたんだぞっ!」とか知ったことかよ。そんなんよりだったら俺は男らしくスパッと行く主人公の方がよっぽど好感持てるね。主人公がヒロインに惚れていくまでの気持ちの変化を丁寧に描くとかいうの好きな人がいるのも分かるし,そんな個人の趣味嗜好を否定する気なんてさらさら無い。だけど少なくとも俺には合わない。俺はヒロインを攻略したいのであって,野郎を攻略したいんじゃねえんだ。

それにこいつ女々しいくせに女の前だと人が変わったようにイケメン風な強気なことをいきなり言い出すんだよな。だからまあ人物像がブレブレに感じるし,ペラくも感じる。マジで紙っぺらみたい。であるから発言に中身が伴っているようにも思えないし,何を言っても俺の心に響いてこない。これおそらくライター自身はっきりとした主人公像というのを持たないままで,場面ごとに都合よく動かしてただけなんじゃない?ほんとなんだこいつ?

というわけで俺自身はこいつを言っちゃえば不快に感じていたわけだ。そんで主人公を不快に感じたら最後,安心して萌えることなんて出来ないよね。萌えなんてそれこそ頭ん中を花咲き誇るお花畑のようにして,なーんも余計な事考えずに楽しむもんよ。イライラで頭ん中が占められてそっちに気を取られちまったらお終いだよ。

とまあそんな感じで付き合う前,特に主人公が鬱陶しくなってからは祈に萌えることが出来なかったんだけど,付き合った後は後でシナリオ展開のせいでこれまたすっきりと萌えさせてくれない。例えばヒロインが何か問題抱えててそれを二人で解決していこうって話さ,まあ例は何でも良いんだけど両親が不仲で家庭が崩壊しそうとかにしておくか,そういうのだったら主人公がヒロインを支えたり,両親を仲直りさせる方法を一緒に考えようとかやっていく中で,イチャイチャ描写っていくらでも入れることが出来る。だけど別れる別れないっていう展開って普通に考えたらそこにイチャイチャを差し挟む余地がないんだからさ,萌えられるわけねえじゃん。あの種の展開と萌えとを両立させんのは相当難しいと思うよ。

そういうわけで,祈ルートは付き合う前も後も気持ち良く萌えることが出来なかった。「ドキッとさせたもん勝ちデート」とか良い感じのものもありはしたんだけどね。全体通してみると,そんな局所的なプラスでは打ち消せないほどにマイナスが大きすぎた。


②ののかルートの場合

そして祈ルート以上に問題なのがののかルートだ。繰り返すようであれだけど,俺はほんたにちゃんが大好きで,妹(CV:安玖深音)という字面だけでテンションが上がってくるほどだ。その上ヒロイン勢一のロリっぽさと貧乳というおまけ付きだ。だからもうののかというヒロインが生まれた時点で普通にやれば,いやちょっとくらいだめでも勝利はほぼ決まっているようなもんだった。そしてののかルート以外のプレイを進めていくうちにののかの性格的にも好印象を覚え,「ああもう超可愛いなあ」ってなって,萌え尽きる気まんまんだった。ただ一点,とあるシスコン筋からののかルートが「核地雷」であるとの情報が寄せられていたことだけが不安でありはしたのだが……。

そんでまあののかルートに突入したわけだけど,話の本筋に入らない最初のうちは安心してののかの可愛さを楽しむことが出来た。ののかと主人公が兄妹として10年という長い時間を過ごしてきたこと,ののかの日記から兄への想いが伝わってくること,そして現在の花咲兄妹が互いに遠慮の無い本当に仲の良い様子のやりとりを見せることなど,兄妹としての絆が確かにあると思ったから,花咲兄妹の関係も本当に良いなあと眺めていることも出来た。

だけど,ののかが主人公に告白したあたりからは一転して最悪だった。まず,ののかの告白に対する主人公の答えが有り得ない。こいつの答えを要約すると,「兄は妹を女として愛さない。だから卒業したら兄をやめて一人の男としてののかと結婚する。」ってなもんだけど,なんだこれ?プレイしてて思わず「はあっ!?」って叫んじまったわ。

義理の妹ってさ,二人を繋ぎとめる血縁関係ってのが無いんだから,その二人に何があろうとも切れることの無い兄妹としての実質的な絆があるか否かってとこが絶対的に重要だろ。それなのに兄をやめて男としてののかと結婚するってさ,女としてのののかを選んで妹としてのののかを切り捨てる,つまりは兄妹の絆を切り捨てるってことじゃん。兄としても男としても愛するっていうののかはともかくとして,主人公の方は兄妹の絆を切ることが出来る程度のものだって考えてたってことだろ。切り捨てることの出来る絆に重みも何もあったもんじゃねえよ。俺が感じてた兄妹の絆なんて実は無かったよ。そんなもん「妹」じゃなくて「妹っぽい年下の女の子」じゃねえか。ふざけんなよ。皆も分かりきっていることだろうがあえて言っとくと,「妹っぽい年下の女の子」は「妹」じゃねえぞ。

俺は確かにソフトロリコンで,妹を含む主人公より少し年下の女の子に抜群の適正を示すんだけどさ,年下であれば何でも良いわけじゃない。「妹」と明記されたからには「兄妹物」を見たいし,当然それが来るんだろうと期待もしちまう。しかもそれが俺の中で特別な「妹(CV:安玖深音)」であれば尚更だ。それなのにいざ蓋を開けてみたら「妹っぽい年下の女の子」ってさすがに酷いわ。

その上こいつ「お兄ちゃん」って呼ぶののかに対して,「お兄ちゃんじゃない、遊真さんだろ?」とか言い出すんだよ。それで結局ののかも「遊真さん」呼びをするようになるんだけどさ,この世の中には「お兄ちゃん」とか「兄さん」とかそういう呼ばれ方が好きな奴らが相当数いるんだよ。それにそこまでしてユーザーがののかを「妹」だと思うことを止めさせたいのかよってのも思うね。先月俺は「サノバウィッチ」をやってて,あまりにめぐるルートの主人公に死んでもらいたくて主人公を抹消するというプレイスタイルを確立したけど,「遊真さん」呼びになったらこれも通用しないじゃねえか。「妹」だとは思えないじゃねえか。

まあここまでは,一万歩くらい譲って二人が真剣に考えた結果の結論だし,そういう形もあるのかもなって納得したくないけど納得することも出来なくはない。だけどその後もほんと酷いんだわこれ。主人公がののかの告白に答えた夜に「今日だけは女として愛して欲しい」みたいなののかを抱くことになるんだけど,寝て起きたら次の日からもちゃっかり女として愛してるんだよな。言ってることとやってることがまるで違うから結論に欠片も真剣味が感じられねえよ。そんなんで兄妹の絆を切るなんて納得いくわけがねえよ。セックスしたら気持ち良すぎて前の日に自分が言ったことすら忘れたか?俺たちだって晩飯食ってシコって寝ても次の朝に前日の晩飯の内容くらい覚えてるぞ。

そういうわけで俺にとってはこの展開は不快極まりないものだったし,「妹」とのイチャイチャを期待していたのに「妹っぽい年下の女の子」とイチャイチャする気なんて全く起きなかった。それどころかそれまでのののかルートの全てが色褪せて見えさえしたね。

まあそうは言ってもこのルート,「兄妹」という関係に固執せずに「妹っぽい年下の女の子」と割り切ることが出来れば,ののかも可愛いから普通に楽しめるのかもしれない。多分だけどサガプラも深く考えずにそんな感じで作ったんだろうね。けどやっぱりののかに期待していた層って「妹」好きが多くてさ,そういう層には「兄妹」の恋愛を見たいっていう奴らが少なからずいるんだと思う。そいつらが二人が「兄妹」じゃなくなるって話を見てどういう反応を示すかっていうのはちょっと考えれば分かるはずだ。そんなもん誰も望んじゃいない。そして何よりこのご時世エロゲ界隈において「兄妹」の恋愛をわざわざ否定しなきゃいけない理由なんてのはこれっぽっちもない。需要もないし必要もないものをあえてやった,しかもその扱いが軽々しかったんだから批判されて然るべきだろ。


あとこの二つのルートについてはエロシーンでも俺の逆鱗に触れたことがあるからついでに言っとくわ。俺は常日頃フェラを各ヒロインに完備しろって思ってて,パイフェラやシックスナインしかないのにも残念がっているくらいだけど,咥えさえしないのはさすがに論外だ。ののかは枠が2つだしまあ仕方ないかもしれないけど,祈は4枠あるんだから,今どきの萌えゲーで4枠あって1回もフェラが無いってのはちょっと許しがたいね。


他のルートについては,彩乃・若葉・柑南は特に可愛いと思えなかったし,話も掛け合いも面白くはなかったので,プラスには働かないっす。TRUEも「おっ,fripのグランドOP来たな」って思ったらクレジットでグランドEDって出て来て本気で驚いたくらいに,内容的にもボリューム的にも取って付けた感満載だったので同様。ヒカリルートだけは,ヒカリが期待よりもずっと可愛くて,内容も安心して萌えられる,その上2回もおちんちん咥えてくれるので,良かったです。本当にこのルートだけが救いでした。その名の通りまるで暗闇に差し込む一筋の光のようだったよ。なんでこれが祈とののかで出来ないんだよ……。

総括すると,プレイ前のささやかな期待が何一つ叶えられず,そればかりか人の神経を逆撫でしていったという,残念極まりない作品。カルマルカのときは俺自身は憤怒というほどではなかったんだけど,さすがに本作には憤怒の摩訶を抱かざるを得なかった。かなり毒を吐いたけど,ほんたにちゃんいる限りサガプラは買い続けるつもりだし,それなら次はもっと良い作品を作って欲しいっていう1ユーザーの感想と意見ってことで終わります。


世界観・雰囲気 11/15
シナリオ 12/25
キャラクター 11/15
サウンド 9/10
グラフィック 8/10
システム 4/5
個人的補正 4/20
総合 59/100