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nanachanさんの南十字星恋歌 Southern Cross Love Songの長文感想

ユーザー
nanachan
ゲーム
南十字星恋歌 Southern Cross Love Song
ブランド
すたじお緑茶
得点
72
参照数
5750

一言コメント

どうしてこうなった\(^o^)/

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

るちえさんの絵とヒロイン達は可愛らしい,キャラ同士の掛け合いは楽しい,主人公も悪くない,これは良いドタバタラブコメディじゃね?というのが共通前半(8話)終了時点の印象。それなのにフルコンプ時の新鮮で率直な感想がこれ↓

nanachan@サノバウィッチ全裸待機 @07nanachan
【南恋】フルコンプ
開いた口が塞がらない(゜ロ゜)......どうしてこうなった\(^o^)/

そこで,以下「どうしてこうなった」という点を中心に感想を書いてみようと思います。


本作の共通後半(9話)以降の展開は恋色空模様(以下「恋空」)とまぁ似ている。理不尽で腹立たしいゴ○クズのような大人達に対して主人公とヒロイン達が立ち向かうという分かりやすいものとなっている。しかし,決定的に違うのが以下の二点。
①悪役がどうにも小物っぽい
②シリアス展開とラブコメ展開がどっちつかず

①について
恋空の悪役である有馬と芹沢は冷静沈着に悪事を推し進めるタイプであり,上手くは言えないけどこう悪役としての素養とか資格みたいなものを備えていて,悪役側にも一定の理はあるよねと思ってしまいそうになるような奴らだった。そんな奴らだったから,主人公サイドとの攻防・駆け引きが見ていて面白かった。

対して本作の悪役達は,人の話を聞かない分かりやすく自己中心的な救いようもない奴らばかり。具体性もなく似非男女平等を掲げキャンキャン喚き散らすだけの学校長(幼女を泣かせた罪は許されざるものである),何の能力もないくせに私益のためだけに為政者になろうとするどうしようもない公爵(幼女に対して「殺しても構わん」とかほざいた罪は万死に値する),子供を捨てておきながら金のためだけにれなりなを連れ去ろうとする砥部兄妹の母親(幼女を誘拐しようとした罪は地球よりも重い)。こいつらは見ている側が主人公達とのやり合いを楽しむ以前のもの。闘う価値すらない単にユーザーをムカつかせるだけの存在。砥部姉妹の母親について香乃梨が「殴る価値すらない」と言っていたけど,ホントそれ。「このキャラクターが不快(または単純に、ぶち壊し)」というPOVはこういう奴らのためにあるというもんですよ。

明確な悪役を立ててそれに立ち向かうという構図は話を盛り上げるために非常に便利かつ効果的な手法ではある。悪役の側に一定の正当性なり器・格の大きさなりを持たせなければ,ただ単にユーザーのイライラを募らせるだけに終わってしまい,話自体をぶち壊しかねない危険を常に孕んでいる。そして本作の悪役は,私というユーザー視点からするとそのレベルであってしまった。


②について
本作の共通後半以降は各ヒロイン個別も含めて,主人公達が悪役に立ち向かうシリアス展開と主人公とヒロインのドタバタな恋愛模様を描くラブコメ展開がごちゃ混ぜになっているというのが大まかな構成である。個人的にはこの点が恋空とは最大にして決定的な差であったと思っている。

恋空では,共通後半以降,神那島クルセイダーズ編とヒロイン個別を明確に区別し,前者では悪役との攻防一辺倒で,それが終わってからヒロイン達と存分にイチャコラしてくださいという,潔い構成であった。それによって我々ユーザーはシリアス・ラブコメのそれぞれの要素に集中して楽しむことができたのだといえる。この点の詳しい説明については,もし興味がお有りでしたら恋空の感想に記述しましたので,目を通して頂ければと思います。

nanachanさんの「恋色空模様」の感想
http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=12441&uid=nanachan

これに対して本作は,ヒロイン個別の最後まで両者がどっちつかずで進行する。その結果どうなったかというと,ラブコメ要素のせいで主人公サイドと悪役とのやり取りの緊迫感が削がれ,シリアス要素のせいで両者が相互に邪魔し合ってどちらも存分に楽しめない,シリアス要素のせいでヒロイン達とのイチャイチャに集中できない,両者が相互に邪魔し合ってどちらも存分に楽しめないという不完全燃焼に終わってしまったように思う。だってさ,せっかく魅月先輩とキャッキャウフフするぞ~って気持ちが高まってきたときに,あのキ○ガイ……すいません言葉が過ぎました,あの学校長が水差してきたりするんだから,そりゃ「おまえ邪魔だどっか消えろよ」ってなりますよ。そんなんばっかり。


そんなこんなで,まぁ他にもメインである香乃梨ルートでムカつく悪役達大集合だよやったねであったりとか,最後で意味不明に黒幕的な奴が現れて「これから世界の命運を賭けての闘いが始まるのか」と思いきやあっけなく終わったりとか色々あるけど,主に上の二点のおかげで本作をあまり楽しむことができなかったというのが正直な感想です。少なからず類似点のある恋空は好きな私でも本作はうーん…という感じなので,恋空ファンに特に勧められるというわけでもない。多分恋空が苦手な人には本作が合わないという逆のことは言えるだろうけど。

あ,でもFDは出れば買おうと思います。攻略ヒロイン達はみんな可愛いし,ゆいにゃんとれなりなを是非とも攻略したい。ほんとヒロイン達は可愛いんだよな……はぁどうしてこうなった……。そういうとこからすれば,純粋に可愛い女の子達とのドタバタを楽しめれば文句はないという方なら良いのかもしれない。よく「絵買い」ということが言われるが,これはその名の通り「絵さえ良ければ他の全てには目を瞑ろう」というスタンスであると私は認識している。言ってしまえば,そのキャラクター版。だから「キャラ買い」とでも言えばよいだろうか。残念ながら私は,ヒロイン達以外の全てを広く許容し楽しむという寛大で達観した心は持ち合わせてはいませんでしたが。


お気にヒロイン:エリーゼ,都,咲弥
お気にルート:特になし

世界観・雰囲気 13/15
シナリオ 17/25
キャラクター 12/15(ヒロインに限れば満点)
サウンド 9/10
グラフィック 10/10
システム 4/5
個人的補正 7/10
総合 72/100