シナリオゲーというよりも,まったり日常ゲーといった方が多分正しい。
テキスト量が非常に多いという前情報や,OPムービーの「そして,真実にたどり着く」というフレーズ,体験版時点での引きの強さetc。壮大な物語を読み進めていくうちに,ピースが一つ一つ合わさっていって,結末へと収束していく。プレイ前にそんな期待を抱いていたのはおそらく私だけではないはず。でも,そんなことは全然なかったなあ…。
まあ,それは言ってしまえばこっちの勝手な期待なんでいいとして,それをさて置いたとしてもシナリオは今一つ。理由は,もっと他に書くことがあっただろという点に尽きる。
膨大なテキスト量とは裏腹に,本作では本当に必要な部分の記述が圧倒的に足りてないように感じた。例えば,薫の過去(特に弓乃関係)を掘り下げていれば彼の行動や態度をより裏打ちできていただろうし,ノエルに憑りついた悪魔の正体や思惑を掘り下げていればより息の詰まる闘いが描けていただろう。他にも,薫の未来視設定,小菜が殺された状況,九条家の問題,小菜が幽霊になった理由,かぐやの正体,ルシアの力の謎,いかにも何かありそうだった薫とノエルの関係。挙げていけばキリがないが,これ掘り下げたら面白かっただろうにという素材がそこかしこに転がっていたにもかかわらず,結局明らかにされなかったり,申し訳程度の説明に留まっていたりした部分が多すぎた。そのためか,感覚的な表現になってしまうが,物語に「奥行き」というものが感じられなかったことが非常に残念だった。
しかし,それらを犠牲にして(と言ってしまうと言葉が悪いかもしれないが,)テキスト量の大半を割いて描かれていた日常の描写は楽しかった。ほとんど変わり映えもせず,しかも非常に長いのにもかかわらず,なぜか飽きることなく読ませてくれた。キャラが魅力的だったというのもあるし,テキストのテンポも良かったということもあると思う。もしかすると,本作をプレイするに当たっては,ストーリーを追うことよりも,キャラ同士の掛け合いをまったりのんびりと楽しむというスタンスが最適解なのかもしれない。
世界観・雰囲気 13/15
シナリオ 19/25
キャラクター 13/15
サウンド 9/10
グラフィック 8/10
システム 3/5
個人的補正 9/20
総合 74/100