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nanachanさんのアルテミスブルーの長文感想

ユーザー
nanachan
ゲーム
アルテミスブルー
ブランド
あっぷりけ -妹-
得点
87
参照数
531

一言コメント

一つの物語として非常に完成度の高いヒューマンドラマ。男ならば魅せられます。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 イカロスとダイダロス、形は違えど同じく宇宙を目指す人間の挑戦を描いた物語。

 高度153m以上の空が飛行不可能になった世界での飛行機野郎たちを描くっていう舞台設定で半分以上勝ちが決定だろって感じがプレイ前からしていましたが、期待にこたえる見事な作品でした。特に6章以降の展開は先が気になってしょうがなくて一気にプレイしてしまいました。

 シナリオとしては、主人公であるハルの成長物語と、宇宙への挑戦という二つが軸になっています。前半がハルの成長にスポットが当てられ、6章以降からが人類の挑戦という感じです。
 主人公たちが生活する江戸湾ズの雰囲気がとてもよく、また、キャラクターも強い個性を持ってはいますがどいつも魅力的なやつばかりで、この環境だったからハルは成長できたのかなと。女主人公の視点という珍しいパターンで描かれているのですが、ハル自身の人をすこぶる思いやる人間性もとても高感度が持て、感情移入ができたので、手法として正解だったと感じます。だんだんとカッコ良くなっていく桂馬についても、ハルの視点をメインとしていることで、ハルとともにだんだんとその魅力を自分も知っていくことができました。この男キャラクターがカッコ良くなっていく、というのは、プレイヤーの分身である男主人公の視点で、しかも主人公自身の成長として描かれる作品がほとんどなので新鮮な印象を受けました。いいですね、こういうの。テキストもテンポよくてよかったです。ライターのセンスを感じます。
 そして、過去を描いた6章で桂馬のカッコよさはMAXに。個人的にはこの人類の挑戦が前面に描かれている6章が一番好きだったりします。キャラクターの心情描写とかも一番魅せるものだったのもこの章かなと。桂馬の人間臭さも十分に見ることができたし。桂馬とサラは本当に深く愛し合ってたんだろうなあ…。幸せになる二人も見てみたかったです。
 そしてラストで、今までそれほど好感が持てなかった星野の株が自分の中で急上昇。お前実は熱いやつだったんだなと。ただ、ダイダロスがメインとなってしまったので、個人的にはイカロスの再挑戦にもう少しスポットを当てた感じの話を見たかったですが。それでも、十分話に引き込まれたので満足しています。

 若干対象年齢が高めかな。そして、一つの映画、もしくは文学作品のような印象を受けた作品。萌えとか恋愛描写を期待する人には向かないです。逆に熱く感動できるものを求める人にはおすすめです。

世界観 15/15
シナリオ 23/25
キャラクター 14/15
サウンド 8/10
グラフィック 8/10
システム 4/5
個人的補正 15/20
総合 87/100