ErogameScape -エロゲー批評空間-

nanachanさんのWHITE ALBUM2 ~closing chapter~の長文感想

ユーザー
nanachan
ゲーム
WHITE ALBUM2 ~closing chapter~
ブランド
Leaf
得点
93
参照数
4696

一言コメント

これは小木曽雪菜という一人の少女の長く辛くせつない恋物語。

長文感想

私がここで書くことはクリエイターさんの側の考え・意図とは全く異なっているかもしれません。また、多くの皆さんの感じ方とも違っているかもしれません。しかしながら、作品は作家の手を離れた瞬間から独立して生き始めるものであり、作品をどのように感じるか、解釈するかは自由であり、人により千差万別であると思います。なので、私は自らがプレイして感じたこと、本作の私なりの解釈を率直に書いていきます。そのことをあらかじめ断わっておきます。


 最初に私が感じたことを一言でまとめてしまうと、本作の主人公は雪菜であり、本作はどうしようもいほど雪菜のための物語でした。

 
 本作のメインは春希・雪菜・かずさの三人の関係であり、はっきりいってこれを描くだけならic→cc雪菜ルート→codaで足ります。それにもかかわらず、ccで三人ものヒロインを登場させ、雪菜の心をえぐっていきます。ccの雪菜以外のルートは雪菜にダメージを負わせ、また彼女の健気さを見せつけることで、我々に雪菜という少女に対し感情移入させるためだけに存在しているといっても過言ではありません。

 そして、雪菜にどっぷりと感情移入したところでcodaに突入、ccではほとんど見ることのなかったかずさの登場です。親友にして、春希がずっと思い続けていた相手ということもあり、また雪菜自身ずっと負い目を感じ続けてきた相手ということもあり、雪菜は再び悩み苦しむこととなります。その姿は見ているこっちも本当に辛かったです。春希がかずさを選んだときには心が壊れそうなほどになり、もう何が何でもこの子だけは幸せになってほしい、幸せになるべきだという気にさせられました。


 唐突ですが、私は雪菜以外の個別ルートの感想を書くことができません。というか、私にとってはそれを書く意味がありません、といった方が正確でしょうか。先にも述べたとおり、ccのヒロインルートは雪菜への感情移入のために存在するものでありますし、かずさルートでさえ最も印象に残っているのは雪菜の叫び、嘆き、涙です。言ってしまえば、雪菜ルート以外を私は雪菜BADENDだと認識しています。そう言えるほどに雪菜ルート以外ではこれでもかというくらい雪菜の描写がなされていますし、頭に常に雪菜のことがちらつきますし、雪菜の強さ、辛さ、悲しさ、そう言ったものが伝わるようなシナリオとなっています。

 別に雪菜以外のヒロイン達が嫌いなわけではではありませんし、彼女たちの幸せを願わないわけでもありません。しかし、比較した場合圧倒的に我々が雪菜に感情移入するような構成になっていますし、実際に雪菜に感情移入してしまう。メインとなる他の二人についても、春希は本当にどうしようもないのでコイツに感情移入は無理ですし(どうしようもないからこその物語ではあるが)、codaまで姿を見せないかずさに対しても難しいです。そういうわけで、結構な人が雪菜に対して思い入れが強くなってしまうのではないかと感じます。


 こうして、雪菜にどっぷりと感情移入して迎えた雪菜trueは、自分だけでなく皆が幸せになれるように頑張る雪菜の強さ、その過程でかずさと本音をぶつけ合う姿、裏切られ続けてきた春希に対して真っ直ぐにぶつかる姿、そして何より春希に対する強く一途な愛情、そのどれもが本当に感銘を受けるものでした。最後についに幸せを手にした雪菜を見たときの感動はひとしおでした。そして、やはり私にとって本作は完膚なきまでに雪菜のためのものでした。



 そういうわけで本作が雪菜のための物語だと思う私としては、雪菜ルートをラストにすることを勧めたいです。ただ、前述のように感じ方は千差万別であるので無理にとは言えませんが。



 最後に、このような素晴らしい作品を生み出してくださった全ての方々に深く感謝いたします。本当にありがとうございました。



世界観・雰囲気 14/15
シナリオ 25/25
キャラクター 13/15
サウンド 10/10
グラフィック 8/10
システム 4/5
個人的補正 19/20
総合 93/100