大満足。世界観、心理描写が秀逸でした。 ※9/21一部修正
「優しさ」
使うのは簡単な言葉ですが、私たちは本当にその重さ、尊さを知っているのでしょうか。薄っぺらい表面上のものではなく、本当の「優しさ」とは何かを主題とした作品でした。
本作の登場人物は皆、形は違えど強く誰かを思う優しさを持っていて、それが真正面から描かれています。その優しさが時に間違いであったり、優しさゆえに思い悩むこともあります。しかし、そのような経験を通し、自分のこと、相手のことを真剣に考え、理解し、絆が結ばれて行くのでしょう。うん、すごい抽象的ですね。とにかく、マルチ視点を駆使してなされる心理描写が秀逸で、ここが私が本作を高評価する一番のポイントかなと思います。
世界観もトンデモ設定があるとはいえ、なかなか凝った趣向になっていて、ありきたりな学園物とは一線を画します。秋の山中という、どことなく愁いを帯びた世界の中で、幼なじみたちと過ごす学園生活は本当に居心地が良かったですね。この世界を作り上げたライターさんはセンスありますね。
キャラクターは幼なじみ’Sはみんないい感じでしたね。主人公はまっすぐなイイ奴で、鈍感王であることを含めてもとても好感が持てました。女の子たちも皆仲間同士を強く思い合っていて、それだけですんごいいい子たちなのに、日常パートでは笑わせてくれるというかなりの高レベル。思いの強さゆえに思い悩むこともあるんですがね。こんな幼なじみいたらなあ……他のキャラでは青姉がよかったかな。妹の方は一時期殴りたくなりましたけどww
演出も魅せてくれます。どことなくさみしさを感じさせるBGMは作風にマッチしているし、WHITE-LIPSのヴォーカル曲も最高でした。CGも綺麗です。結構カットインが入ったり、動きが出たりするのもいい。章ごとにタイトルが変わるのも何気に良かったですね。
テキストに関して。日常パートのやり取りはツボでした。シリアスパートは若干青臭いかなという感じもしましたが、だがそれがいい。オールクリア後の真タイトル含め、センスを感じました。
シナリオもラストに近づくにつれ真相が謎だった部分がどんどん解明されていくので、夢中でクリックしてました。振り返ってみると伏線も結構張られてましたし良かったんじゃないかと。号泣ではないですが、ウルっとくる場面も結構ありましたし、読後感も爽やかで満足です。綺麗なお話を読み切ったなあ、という感じでした。ADVっていうよりは、小説を読み終えた感じに近かったです。一本道ですし。ただ、説明不足・急展開な部分があることは否めません。ただ、それが気にならないくらい話に夢中だったのでそれほどマイナスにはなりませんでした。
全体としては非常に満足のいく作品でした。今後、このライターさんの作品は続けてチェックしていきたいです。とりあえずは今月発売の「天使の羽根を踏まないでっ」ですね。