タカヒロらしいキャラクターの魅力やノリの良さがあり、ロミオらしいテンポ感のあるテキストやシナリオの奥深さがある、なかなか満足感のある作品でした。
◯音楽
事前にYouTube等で公開されていた楽曲タイトルと、ゲーム内のmusicで聴ける楽曲タイトルにいくつかの齟齬があるので、どちらが正しいのか明確にして欲しい。
また、OP曲は別途CDとして販売、サントラは初回版同梱特典としてプレスされているが、ED曲に関しては未だゲーム内でしか聴くことができないようなので、どうにかして欲しい。というかこういうバラバラで売られると購入者側としてもめんどくさいので、音楽面を軽視せずにちゃんと販売して欲しい。
◯全体
物語前半は、魅力的なキャラクター達によるわちゃわちゃとしたコメディ的なお話が多く、まさに"みなと"らしい作品。一方後半では、ロミオらしさが現れて、日本神話を絡めた小難しいお話や、伏線が張り巡らされた読み応えのあるお話になっていく。
この作品の中で特に印象的なのが、テキストのテンポの良さと魅力的なキャラクター、立ち絵の豊富さを活かした演出。これらが合わさることで読んでいてとても楽しく面白い作品になっていた。ここの部分は本当に上手く作られているなと感じた。
また、日本神話にまつわるお話も、既存の神話を独自解釈して物語に昇華させており、非常に上手いなと思った。個人的に日本神話や伝承に対する興味があったので、常にネットで調べながら読み進めていた。ここに関しては、こういう類に興味がない人はあまり面白いと思わず、評価を下げる要因の1つになっているかもしれない。勉強になったしそれなりに面白かったんだけどね…。
反対にもうちょっと頑張って欲しかったと感じた点は、終盤の展開に関して。張り巡らされた伏線の回収がなされ、怒涛の勢いで物語が進むのだが、正直に言って説明不足感や勇み足感が拭えなかった。この辺りをもう少し丁寧に描写し、バックグラウンドの説明もしっかり入れることで、納得感のある作品にできたのかなと思う。最後に和香様が帰ってくるシーンも、そこでED流しちゃう!?みたいな唐突だったしね。一応エピローグもあったけど…。
また物語全体を通して、カタルシスを感じる機会があまりなかった。これに関しては別に必須というわけではないが、鏡や家族、和香様関連でもう少し上手くできそうな気はした。和香様=水蛭子という設定もすごく良かったが、それを明かすまでの流れがイマイチグッと来なかった。
◯ふることぶみ
実際の日本神話を知ることができるTIPS的存在であり、とても良かったと思う。しかし、難しい漢字にふりがなが一切振ってないのが不親切であると感じた。本編中の初出の漢字にふりがながふってないのもそうだが、日本神話に出てくるような小難しい漢字は普通の人間はなかなか読めないですよ…。
◯総括
終盤の展開がイマイチという感想はあるが、全体的な完成度としては申し分なく、良作と言える作品。特に、この"プレイしていて楽しい"感はなかなか出すことが難しいと思うので、もっと評価されても良いのではと感じた。ミドルプライス的なお値段で、この質や量というお得感も良かったかな。