きれいにまとまっていて、丁寧に作られた作品だと思う。伝奇とキャラのバランスがよく、お互いをよく生かせている。
物語の中心となるのは天女や不死の薬にまつわる伝奇面なのですが、それに固執しすぎず、キャラを中心に持ってくる日常の面も上手く描写されていると思います。
伝奇面の設定としてはそれほど突出したものではなく、悪い言い方をすれば割と誰でも思いつくような感じではあるのですが、その書き方が上手い。
日常の描写が丁寧で、キャラも生き生きと魅力的に書けているので、いざ伝奇面に入ったとき、読み手がぐっとそのシーンの中に引き込まれる。
主人公やヒロインたちの日常が魅力的であるからこそ、その日常から一転して追い詰められたときの緊張感や、切り抜けて日常に戻れたときの爽快感や安堵感がたまらない。
逆に、そういうシーンがあるから平和な日常がさらに映え、メリハリが付いてだれることもなくなる。
戦闘(?)シーンのテキストも1から10までくどくどと状況や思考を描写するようなものではなく、効果音や演出を上手く併用することでテンポよく書かれており、とても読みやすいし、状況のスピード感も損ねていない。
ADVであることを良く生かしていると思います。
音楽もシーンに合わせて様々なものが用意されており、使い方もよい。
よいADVのお手本と言ってもいい作りで、完成度が高いと評価するにふさわしいゲームではないでしょうか。
また、安易にキャラをシナリオ上の道具として殺して世界観を作ったり、泣きを取りに来ないところには非常に好感が持てます。
特に自己犠牲で主人公やヒロインが死んだり、まして全滅したりするようなのは大嫌いです(BadEndとしてある分には別にいいんですが)。
やっぱりキャラには幸せになってほしいですよね。
孝介やさくやはすばらしい家族や友人たちに恵まれていますから、幸せな未来を歩んでほしいものです。
最後に、自分も孝介みたいな変態紳士になりたいです…。